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ウィザード

その後、カイロスの情報を元に対策と呼べるか怪しいけど、とりあえず今後どうするか話し合った。

「まず、幸仁が一人にならないようにしよう!」

おれは真剣に拳を握り締めた。
でも、幸仁はあっけにとられたような顔をして、それから笑う。

「ちょ、真剣な話なんだが!」

「ごめん、違うんだ、なんか、緑がいつもどおりだから緊張が切れたんだよ」

「なんか少年漫画の主人公みたいな顔してた、ロクちゃん」

カイロスもこらえきれないように笑う。
おれがすねた顔を作ると二人とも慌てて謝ってくる。

「ごめんって、あ、そうだ!」

カイロスが携帯を取り出し何かを確認し始める。
このファンタジーな世界には携帯もあるけど、実は充電が魔法でできたりする機能も搭載している。
便利すぎるけど、残念ながら留学生はそれを買う金がない。
暫く何かを目で追っていたカイロスが晴れやかな顔で口を再び開く。

「よかったじゃん、おれたちのクラスには会長の親衛隊はいないよ。ただし、過激派で有名な副会長の親衛隊が一人いるな、まあ、本人は優しいやつだし問題ないと思う。あとは書記と双子会計の親衛隊予備軍が何人か……」

おれも幸仁もぽかんとしてしまった。
人脈は広いと思ってたけど、そんな情報屋レベルに詳しいとは思ってなかった。
さすが王道学園だ、チャラ男情報屋とか!

「まあ、教室にいればまず安全じゃねえの?教室を出るときは緑とかタイガとかと一緒なら大丈夫。もちろん、おれが四六時中一緒にいてあげてもイイし☆」

きらんっとポーズを決めて見せたカイロスが普通にかっこよく見えて、そんな自分がおかしくなって思わず吹き出した。

「はは、さっすが、カイロス!」

「なんか、不安になってたのが馬鹿らしくなってきたよ」

幸仁も元気になってきてよかった。

「じゃ、そういう感じでほとぼりが冷めるのを待とうか。天王寺への反感もどうせ長続きはしないよ」

おれは楽観的にそう結論付けて、この場はとりあえず解散することになった。

「でさ、こんなときにホントにもーしわけないんだけど!」

帰り際にカイロスが幸仁に向かって手を合わせた。

「実は今日、友達んとこに泊まりに行く約束してんの。だから、さっそく一人にしちゃうんだ」

「うわぁ、まじか。やくたたねー」

「ひでーよロクちゃん!視線が冷たい!」

幸仁は穏やかに笑って一言、いいよ、と言った。

「部屋の中まではさすがに入ってこないだろうし、大丈夫だよ。楽しんできて」

「ほんとごめん!じゃっ、また明日!」

カイロスはあわただしく出て行った。
また情報を集めてくるつもりなのかもしれないし、おとなしく見送ることにする。

「いっちゃったね」

「うん、なんかおれ嫌な予感するから、今日はおれのところに泊まらないか?もうちょっとしたらタイガも帰ってくるだろうからご飯つくってー」

中学の時にはよく互いの家に泊まりに行ったりしたものだから、なんとなく懐かしい気分になる。
それは幸仁も感じていたみたいで、うれしそうな顔で頷いた。

「じゃ、お世話になろっと。晩御飯何がいい?」

「んー、なんか鶏肉系」

ゆるい時間をすごしていくうちに日は暮れていく。
明日もゆるいまま過ぎていくことを願う。切に!

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あきゅろす。
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