[携帯モード] [URL送信]

ウィザード
テストに合格して魔法使いになってよ!


決戦のときである。

我々はこの七日間、血反吐を吐くような思いで努力を重ねてきた。
実際はそんなにがんばってないけど、ちょっと言ってみたかっただけである。

だがそれなりにはがんばった。
わけのわからないこの異世界に早く馴染もうとしたし、ファンタジーな要素たっぷりの教科書にも耐えた。
タイガの献身的な手助け、そしてアキトの的確な助言もあっておれはたった一週間で簡単な魔法なら使えるまでに成長したのだ。

初めて風を起こしたときには感動したものだ。

すごくよわ〜い風だったし、1mくらい先に立ててあったプリントをふわっと倒しただけではあったけど、本当に何もないところからエネルギーが生まれると、鳥肌ものだ。
幸仁も部屋をちょっと薄暗くする程度の力を手に入れた。
幸仁は魔法の上達も早く先生にもよくほめられていたけど、おれと天王寺はベルガ先生に怒られっぱなしだった。
おれはまったく別の場所に突然突風を起こしたりしちゃうし、天王寺もろうそく程度の炎を作り出すのに苦労していた。

そうしてきびし〜い鍛錬を積んだおれたちはついに、このテストを受けることになったのである。

ウィザードレベル試験。

おれたち留学生はまだウィザードではない。
だがしかし、このテストで合格すれば、晴れてレベル1のウィザードになれるのだ。
風属性のおれの場合は〈薫風〉のウィザードという称号をもらえる。
幸仁は〈夜〉、テンノウジは〈熱〉のウィザードと、それぞれ呼び名が与えられる。

本当に、いよいよおれたちもこの学校の生徒だ。

テストは筆記試験と実技試験の二種類があり、今から筆記試験が始まる。

魔法が発動する原理の説明文が穴埋め問題になっている。
さすがに中等部1年生用だけあって問題は簡単だ。

魔法とは空気中に漂う( 属性分子 )を( 魔力 )で操作することによりエネルギーを生じさせる技術である。

( 属性分子 )には( ○a同じ ×b違う )属性には引き寄せられる特性があり、多くの人が自分と同じ属性の( 属性分子 )を操作し魔法を使う。

魔力だけでは魔法の発動に十分な( 属性分子 )を集めることは難しいため、自分に自然と集まってくる( 属性分子 )と属性の強い無機物、( 宝珠 )を使う。

風属性の代表的な( 宝珠 )は( エメラルド )である。

魔法の発動内容を指示するには( 呪歌 )が用いられる。

( 呪歌 )とは文字の響きや形そのものに属性が宿った( 属性文字 )によって作られた文章である。

( 呪歌 )は声による詠唱や空中に文字を描くことによっても魔法に指示を与えられる。

とまあ、その先もいろいろ問題が控えている。
魔力の消費量を計算したり、いろいろ。
でも基本的には教科書に書いてあることそのままなので難しいことはない。

本当の問題は筆記試験ではないのだ。

解答用紙を回収されて、おれは机に座ったまま大きく深呼吸をした。
前に座っている幸仁も同じように緊張しているみたいで肩が強張っている。
緊張しているのがおれだけではないことがわかると一気に気が楽になった。

魔法の実技試験は普通教室ではできないので、魔法演習専用の教室に移動する。
移動しているときにベルガ先生は、レベル1の試験で落ちる人なんてそうそういないから安心してよ、と励ましてくれた。

通常授業が行われる東棟から西棟に入ると、あちこちの教室から異様な音が聞こえていた。

おれたち以外の生徒は今頃レベル4に昇格するための試験中だ。
おれたちが使える魔法とは桁違いのエネルギーで、何かが燃える音、稲妻の光、大量の水が流れる音なんかが廊下に漏れ出している。

「さて、皆はここの教室で実技試験を受けてもらうからね」

ベルガ先生は比較的綺麗で新しい教室におれたちを案内すると、教壇にたって宣言した。

「では今から、異世界留学生対象のウィザードレベル1の魔法実技試験を開始します。各自杖と宝珠の準備開始!」


[次へ#]

1/24ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!