[携帯モード] [URL送信]

ウィザード
暑くて幸せな夏
ひょんなことから魔法学校に入学することになった平凡なおれ。
おれは魔法学校で一匹狼不良のアキトと出会い、一目ぼれしてしまう。
しかしクラスメイトの王道転校生の生徒会ホイホイに巻き込まれて、なかなか言い出せないまま時間は過ぎていく……
そして、おれはアキトが背負う使命のことを知ってしまう。
更に、おれの存在が使命を果たす妨げになるかもしれないということも……
おれとアキトは離れ離れになっちゃうの!?
だめだめ!そんなの嫌だからな!
おれはアキトを攫って駆け落ちすることに決めた。
そして、ついに思いを告げるときがやってきて……

おれとアキトは、星降る夜に結ばれたのだった。

って、こう書きだしてみるとなんだかすごく痒くて痛くて、少女漫画みたいだな。
でもこれは全部本当のことだから困ったものだ。
まぁ、今のおれはそんな些細な事気にならないくらい幸せだから、どうでもいいんだけどな!

そう、おれとアキトは両思いだ。
今でも信じられないでいるけど、アキトからの視線は前よりもっと甘くてとろけそう。
ああ、こんなに幸せなんだな、想いが通じるって。
前まではいちゃついてるカップルを見かけたら爆発しろって思ってたし、タイガと幸仁の雰囲気にも砂糖吐きそうな気分になってたけど、今ならあの幸せオーラの理由もわかる。

なんだか足元がふわふわして、アキト以外のものがぼんやりとぼやけちゃって、まるで世界に二人きりになったみたいだって、思うんだ。

けど、現実はそうじゃないけどね。

おれは内心でやれやれと首をすくめながらベッドから起き上がった。
隣を見ると、ベッドの下の客用布団ですやすや寝てるアキトの姿。
昨日の夜、想いが通じた喜びでなかなか眠れなかったから、いつもは早起きなアキトも今日は寝坊しちゃってるみたいだ。
アキトの寝顔って、ほんときれいだよなぁ。
とがった耳と、銀色の髪もあいまって、なんだか物語の中の王子様みたいにロマンチック。
……おれ、頭にお花咲いちゃってるかな。

本当なら、一緒の布団に、なんて考えてたけど、残念ながらここは寮の部屋じゃなくて実家のおれの部屋だ。
いつ母さんが入ってくるともわからないし、つい盛り上がっちゃったりしたら大変だしね。

いまだって、おれは下の階で母さんが家事をする物音に目を覚ました。
時計を見ると、朝の10時。
そろそろ起きないと、母さんに怒られるかも。
おれは伸びをして立ち上がると、アキトの枕元に座って、アキトの肩をゆすった。

「アキトー、そろそろ起きよう?」

アキトはむーとうめいて、薄く目を開いておれを見る。
まだぼんやりとした表情が色っぽくて、なんかドキドキする。
それなのにアキトは、ロクがキスしてくれたら起きる、なんて追い打ちをかけてきた。

ええっ!
そんなこと、できるけど!
むしろしたいけど!

アキトは慌てるおれの顔を見て、くくくと笑っている。

くそー、からかいやがって!

おれはやけくそになって、アキトの頬にちゅっとキスをした。
すぐに顔を離して、これでいいだろ!って啖呵を切るつもりだったのに、アキトは素早くおれの頭をがっしりと掴んできた。
そして、おれを一気に引き寄せて、唇が重なる。
ちゅ、と小さな音を立てて唇が離れて、おれは顔が熱くなるのをはっきりと感じた。

「おはよう、ロク」

アキトは余裕な表情でおれをじっと見つめていた。
ううううう!
ずるい!アキトはなんでそんなに余裕なんだよ!
おれは恥ずかしいやら悔しいやらで、アキトのニコニコした唇を指でむにっとつまんで仕返ししてやった。
アヒル口になったアキトが間抜けで、けらけら笑いながら手を離して立ち上がる。

「おはよう、アキト。今日はどうする?」

アキトもゆったりした動作で起き上り、そうだな、と考えるそぶりをする。
そして、甘い甘い声で囁いた。

「ロクといれるならどこでも」

おれは我慢しきれなくて、アキトの寝癖だらけの頭をぱしっとはたいた。

「寝癖と寝ぼけた顔で気障な台詞台無しだから!早く顔洗って着替えて来いよ!」

おれも火照った顔を隠す様に、アキトに背を向けて着替えを始めた。
なんだかしばらく背中に視線を感じたけど、アキトが部屋を出て洗面台に行く音がした。

[次へ#]

1/4ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!