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ウィザード

案内された応接間みたいな部屋には、いくつもダンボールが積み上げられていて、それらはすべておれたちの学習道具だという。
ちょっとのぞくと教科書やら体操着やらが詰まっていた。
魔法学校にも体育の授業があるらしい。
ちょっと意外。

体育はちょっと苦手な幸仁は珍しくうへ、という顔をしていた。
それを笑うと、困ったように眉を下げた。

「ぼく、ちょっと期待してたんだけどな」

「はは、魔法使いといえども体力なくちゃいけないんだろ、がんばろうぜ」

「そうだぜユキ!おれが助けてやるよ!」

そのとき急に会話に入ってきたものだからおれはちょっと飛び上がってしまった。
天王寺は親しげな様子で幸仁の肩に手を置いてにっこりしている。

「あ、ありがとう天王寺くん」

「やめろよユキ!おれたち親友だろ!礼王って呼べよ!」

でたよお決まりの台詞!
巻き込まれ平凡の役に任命されたらしい幸仁が哀れでならない。
だが、おれは全力で幸仁を守るぞ!
俺の癒したる小動物幸仁は、お前にはやらん!

決意を固めていると、ちょこちょこと動いていたベルガ先生がその小さい体に担ぐようにして制服を運んできた。

「みん、なの制服、とどいたよ、これに、きがえ」

「あわ、先生、すいません大丈夫ですか!?」

おれが急いで受け取ると、先生は朗らかに笑う。

「ありがとう、シイバ君。早速で悪いけど、着替えてもらっていいかな、サイズが大丈夫か教えてね」

シイバロク、と張り紙がしてあるものを引っ張り出して自分にあててみる。

あの、あれだね。

真っ白な制服ってさ、似合うに会わないが一番激しいと思うんだよね!
おしゃれだよ、そりゃね。
タイもなんか高貴な感じでお上品だし、袖や裾の装飾もなんかいかにもファンタジーな感じでいいと思う。
でも真っ白って!

タイガの制服は少し青っぽかったような気がするんだけどな。
そういえばカイロスの制服も色が違っていたような気がする。
留学生は真っ白って決まってるのか?
ベルガ先生に聞いてみると、先生はちょっと笑って答えてくれた。

「今はまだ真っ白だけど、それ着て魔法使ってるうちに自然となじむ色になってくるから心配しないでよ」

どういうことなんだろう。
汚れるってことかな?
だとしたらおれ、一年間カレーうどんとか絶対食えないんだけど。
本当に自分が魔法を使えるかなんてわからないけど、先生の顔が自信満々だったからそれ以上はいわないことにした。
とりあえず学ランを脱いでそれを着込むと、やっぱり痛いコスプレにしか見えなかったけどサイズはよかった。
この少し大きめな感じとかいかにも新入生って感じでいい。

「よさそうだね。特に問題なければそのままその制服着ててね、もと着てた制服はここの教材と一緒に後で寮に届けるから」

満足げに頷いたベルガ先生はそれからまたあわただしく部屋から出て行った。
今度は何があるんだろう。
幸仁に視線を送ると、同じように慣れない服にもじもじしていて二人で笑い合った。

「なんか、恥ずかしいな」

「そうだね、みんな着てるのに、自分が着るとなるとすごい違和感」

そうはいっても、幸仁はなんとなく真っ白な制服が似合っていた。
小柄で色白だからかわいらしい感じになる。
天王寺は似合う似合わないの次元ではないような気がするけど、堂々としていた。
まあ、そのモップみたいな頭はかつらなんだろうな。

「へへ、なんかいよいよこの学校の生徒って感じでドキドキするな!」

天王寺がはにかむように笑いながら言った。

「そうだな」

ちょっと自分本位なところがあるけれど、天王寺は悪いやつじゃない。
素直だし、明るいし。
幸仁に苦労させないなら、おれも仲良くなりたい。
が、なぜか天王寺はおれには絡んでこようとしなかった。

(後になってわかったのだが、髪型が少し似ていて、それで自分のキャラが薄れるのが嫌で近寄ってこなかったらしい。やっぱり何を考えてるのかわからない)


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あきゅろす。
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