短編 
バレンタイン企画(青灰)

教室に入れば、甘い匂いが教室内を埋め尽くしていた。
内心、首を傾げつつ、席に着く。
自分の机の中にラッピングされた包みを見つけ、今度は実際に首を傾げた。

「(なんだ…これ…?)」

誰かの机と間違えたのかな?


青と灰
Part×
―ifバレンタイン―


どうするべきか悩んで、机の中に物を戻す。
「(面倒くさい…)」
『プレゼントか?お前に?』
「(んなわけ無いだろー。知り合いなんて、ほぼいないんだぜ?)」
この学園に来て、もうすぐ一年…それでも知り合いなんて、ほんの一握りだ。

「(誰かの間違いだよ。触らなければ間違いに気づいて持って帰る。明日まであったらごみ箱行きだな)」

俺いらないし。

『まぁ、一般人なら悪魔に殺られるな』
「(だから俺のじゃないって)」


***


帰宅途中の道端でも、甘い匂いが漂っていてまた首を捻る。

…なんかイベントあったっけ?

「あ、カイン君!」
「…?」

背後から呼び掛けられ、振り返れば、数少ない知り合いの一人、杜山さんが佇んでいた。

「お、おはよう!!」
「…おはよう?」
彼女は未だに必死に挨拶してくる。
俺はいつも通り、社交辞令に挨拶を済ました。

まぁ…、今の時間は、おはようじゃないんだが。

「これ!」
「?」
「今日、バレンタインだから!」

…あ?

「(…バレンタイン…?)」

それは多分、男子も女子も興奮する行事だろう。
でも…

「(忘れてた…)」

俺には関係ないと思ってたし…。

「カイン君…?」
「あ、ごめん。…ありがとう」
「うん!」
そう言うと杜山さんはせかせかと走っていった。
多分、他の人にも渡しに行ったのだろう。

『カイン、バレンタインってなんだ?』
「(女の子が、世話になった人とか好きな人にチョコを贈る日のことだよ)」

まさかもらうとは思わなかったけどな。

「(あ。ついもらってしまったが…杜山さん、大丈夫かな…?)」
悪魔達の動きなんて、見てなかった…。
『押し付けられた感じだったからな。あんまり気にしてないみたいだぜ?』
「(そう。なら…いっか)」

無事でいるなら問題ない。

『で?中身はなんだよ?』
「(んー)」

ガサリと包みを開ける。

『「(い?!)」』

すぐに包みを閉じ、固く封をした。

「(サタン…。俺、見ちゃいけないものを見たよ)」
この世の物でない色をしていた。
見間違いだと信じたいけど、もう一回開ける勇気がない。


『カイン、とりあえず、包みごとアマイモンにでもやっとけ』
「(サタン…ナイスアイディア♪)」



***



バリバリバリ…

「ぐっ…」

「(あ、死んだ)」
『アマイモンでもダメか…』


アマイモンでもダメだったあれに、一体何が入っていたのか、今は知るよしもない。




―あとがき―
スライディングセーフ!!!
すっかり忘れてました!
バレンタイン!



***

次の日

「(あ。これ…)」
机の中、包みはまだ入っていた。

「あー!カイン!机の中に入れといたチョコ食ったか?」

クラスメイトの奥村燐が俺の前の席に座り、首を傾げてくる。

「…チョコ?」

「俺が作って入れといたんだよ。
 昨日、カインがくる前にしえみからもらったチョコ食ったら保健室に直行でよ…。
 カインにやったの伝えてねぇと思って」

食ったのか…あの得体のしれない物体を。(酷)

で。
「これは、燐か」

机の中に入れっぱなしだった包みを取り出せば、燐は頭を抱えた。

「あー、悪ぃ…。手紙でも置いときゃ良かったな…」

いや。まぁ…。あれを食ったあとなら無理だろ。イロイロ。

頭を抱えたままの燐を尻目に、包みを開けると、中には美味しそうなチョコケーキが入っていた。

「ありがとう、燐」

そのチョコケーキを一口食べると、絶妙なチョコの甘みが口に広がった。

「…美味い」
「!…よっしゃ!」

『カイン、狡ぃ!!俺にも食わせろ!』
「(うわ!サタン出てくんな!!)」

サタンから体を守りながら、さっさとチョコケーキを食べきった。

うん。美味かった!!






―ホントに終わり。―
本編にはまだない他人との触れ合いでした。
ここまで仲良くなれば良いね。ホントに。


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