短編
続・生徒会長の学園祭企画(青エク)
さて。次は雪男君だな。
―続・生徒会長の学園祭企画―
彼の教室を覗けば、帰宅する生徒達の中に目的の人物を発見できた。
「雪男君」
「え…生徒会長?」
目を見開いて俺を見つめる雪男君の横の席に座り、満面の笑みを作る。
「やぁ。久しぶりだね」
生徒会に入らないかと、勧誘していた頃以来になる。
…全く。
こんなに優秀そうな子なのに。
“忙しいのでお断りします”なんて…。
もったいない!
…しかし。
事情を聞けば、随分苦労しているようで…。
仕方ないと諦めたのだ。
「生徒会長、何故ここに?」
「頼み事があってね」
雪男君は少し顔を歪めた。
「生徒会には…」
「あぁ、それではない」
生徒会には入れない。
それは解決済みだからね。
「雪男君は、学園祭で毎年やっているイベントを知っているかい?」
「…イベント、ですか?」
「あぁ」
雪男君は顎に手をあて、眉を潜めた。
「………いえ、分かりません」
今の間、考えを消したね。
君ならミスターNo.1コンテストで優秀な成績を収められると、周りからも言われているだろうに。
「ミス&ミスターNo.1コンテストだよ!」
「…やっぱり…」
頭を抱えることではないだろう?
周りに認められるというのは、素晴らしいことじゃないか。
「だが、今年はそれだけでは面白くないと思ってね!」
「え…?」
おや。そんな表情も出来るのだな。
年相応の子供の顔だ。
「今年は女装・男装コンテストも開催する予定だ!」
「女装…?」
雪男君の顔が引きつってるけど、気にしないよ。
「しかしだ。残念ながら、この企画はまだ決定事項ではない」
燐君には承諾を得たけれど、十分なわけじゃないからな。
「この企画をやるならば、と理事長が条件を出してきてね」
「理事長が…?」
おや?
燐君の時と少しダブったな。
メフィストと燐君は呼んでいたけれど…。
「理事長から出された条件は2つ」
燐君には1つしか言わなかったがね。
「1つ目は、燐君と雪男君のコンテスト参加」
「僕と兄さん…?」
「話題性に富むからね。君達兄弟は」
「はぁ…」
「そして、もう1つが…俺の参加だ」
「…え?」
運営者として動くつもりだったのに…。
理事長も人が悪い。
「生徒会長も出場されるんですか?」
「あぁ、そうなるね。
先ほど、燐君には承諾を得たよ。あとは雪男君、君だけなんだが…」
「…」
考えているね。
さて…。
雪男君は往生際が悪いわけではないし…。
畳み掛けるかな。
「雪男君。女装など、やりたくないのは、重々承知だ。
本当にすまないね、巻き込んでしまって…。
しかし、俺達3年生にとって、最後の学園祭なんだ」
「…」
んー、掴みはいまいちか。
…なら。
「…燐君は、素直に承諾してくれたよ。
学園祭を楽しみにしてるって」
「…え…?」
「燐君、学園祭は初めてなんだろう?
協力してくれる彼のためにも、俺は最高の学園祭にしたいんだ」
「会長…」
「もちろん、この企画以外にもいろいろと案は出しているのだが…。
現実的なものは、中々な…」
苦笑いをして窓の外を見る。
雲一つない、晴れた空だ。
「…俺は、みんなの笑顔が見たい。
雪男君。
協力、してはくれないか?」
おや。
下を向かれると表情が分からないんだが…。
次の手が打ちづらいじゃないか。
「考えさせていただいても、よろしいですか?」
「…あぁ。もちろん。
無理をお願いしているのは、こちらだからね」
「すみません。明日には、ご報告します」
そう頭を下げた雪男君は、教室から出て行った。
結果は明日、か。
しかし、あの表情…。
燐君に確認しに行ったのだろうな。
学園祭を楽しみにしているのかどうかを。
雪男君は燐君に甘い。
事前に情報を確認しておいて、正解だった。
この勝負、勝ったも同然だな。
***
次の日。
雪男君は“あまり際どいのは止めて下さいね”と、承諾を伝えに来た。
「という訳で、許可して下さいますね?理事長」
「やりますねぇ、紫煙君」
理事長はニヤニヤと笑っている。
これもこの人にとっては遊びなのだろう。
「いえ。学園祭を成功させるためですから…必死になりますよ」
来年、俺は就職してしまう。
本当に最後の学園祭になるから、最高のものにしたかった。
「…では。その意気込みと行動力に、廃棄された企画を1つ復活させてあげましょう☆」
「え?!」
今、なんと言った…?!
企画の復活…?!
「何がよろしいですか?」
「どれでも、良いのですか…?!」
「えぇ。私の権限で承諾しましょう」
なんと…!!
「では…!」
俺は生徒会長として、この学園祭を最高のものにしよう!!
生徒諸君!
期待してくれたまえ!
END
―あとがき―
生徒会長は一般人で、祓魔師の存在すら知らない方です。
しかし、この人…キャラ強すぎだわ。
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