長編 
31

これがいい。
もふもふの柔らかい生き物!!


青と灰
Part31


「これでいいのか?」
「思った以上に完璧でビビった」

俺の目の前にいるのは、アドラが化けた黒い毛のうさぎ。
イラストで見せたのに、想像以上に再現度が高い。
もしかしたら、アドラはうさぎを見たことがあるのかもしれない。

「これならば、主は怖くないのだな」
「うん」

何が違うのかよく分からないと、首を傾げているうさぎの姿をしたアドラを持ち上げる。

あ、なかなかいい感じ。
うさぎにはついるはずのない鋭い爪とか、肉を噛み千切りそうな牙とか、そういう見えているものがどうでもいいくらい、いい感じ。

『良いのか?これはある意味ホラーだぞ?』
「(ホラーの親玉みたいなサタンに言われてもなぁ)」
サタンの姿なんて知らないけど。
『しかし、アドラメレクはお前のこと気に入っちまったようだな。
 高等悪魔も形無しってか』
そう言うと、サタンはぎゃははと笑った。

アドラって高等悪魔だったのか。

「まぁ、これからよろしくな。アドラ」
「ふむ、ほどほどにな」

アドラを膝に乗せて席につく。
全員の何とも言えない視線がこちらを向いているが、この撫で心地の良さには敵わない。



***



「で、このぐちゃぐちゃな教室が出来上がったと」
「召喚した時に風が吹いたけど、そのせいじゃないです」
「完全にそのせいや!」

教室の扉を開けた他の先生が悲鳴を上げ、奥村先生が呼び出され、今の会話が行われた。
ちなみに突っ込みを入れたのは勝呂だ。
さすが関西人。

というわけで、片付けの真っ最中です。

「主よ、この空間は居心地が悪いな」
「空間の切り取りがどうとかっていう話のせい?」
「あぁ。閉塞感がある。あと聖水の臭いがする」
カインの肩に乗っているアドラの耳がしゅんと垂れた。

「(聖水の匂いかー。サタン、分かるか?)」
『わかんねぇな』
あっさりと返されてしまい、カインは残念そうに目を細めた。

「アドラ、耐えきれなさそうなら言えよー。
 俺には聖水の匂いとか分からないから」
「うむ、まぁ、優れない程度だ。問題ない」

さすが高等悪魔。
なかなか耐久力がありそうだ。

「カイン君はうさぎ好きなん?」
箒を手にした志摩に話しかけられ、カインは運んでいた机をゆっくりと下ろした。
「…まぁ、動物は好きだ。人間は嫌いだけど」
「主に話しかけるな、ピンク色」
カインの拒絶の言葉とアドラの威嚇が、志摩に突き刺さる。

「酷いわぁ…」
「志摩さんも、よう飽きまへんね」

猫くんが苦笑いしつつも、志摩をフォロー……いや、けなした。

「空間が切り離されてるっていうけど、下手に話しかけると、お前ら死ぬぞ?そこら辺分かってるのか?」
呆れたようなカインの言葉に、ため息を吐いた勝呂はカイン以上に呆れた顔をした。
「お前はほんまに人との付き合い方が下手やな」

「悪魔に好かれる体質なのは分かった。
 せやけど、やつらが攻撃してくるのは、お前を守ろうとする時だけやろ」

「…え?」
『………』

守ろうとする時だけ?
勝呂は、何を言っているんだ…?





ーあとがきー
実はいろいろすっ飛ばした気がする。
勝呂の話は真実か。それとも、ただの戯言か。








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