長編 
47-来訪者

それから数日。
30年の年月を埋めるよう一時も離れず、二人は語り合っては眠りにつき、食事をしては語りあった。
その日はカインがちょうど昼寝をしている時のことだった。



Euphorbia milii
ー来訪者ー


突然、1人の来訪者が勢いよく扉を開けた。

「あなた!自室に篭って何をやっていらっしゃるの?!
 キルが戻って来たばかりなのに!」

来訪者の気配に気付き、扉に向き直った直後のことだったために、ベッドに座った状態でシルバは来訪者に対峙することになった。
シルバの後ろで寝ているカインには気づかず、部屋に入ってきた来訪者、キキョウは甲高い声を上げる。

「お父様に聞いても、“今はゆっくりさせてやれ”なんて…!
 あなた!聞いているの?!」

「…少し黙れ」
シルバの強かな覇気に、キキョウは息を詰まらせた。

「起きてしまうだろう」
「え?」

起きる?何が起きると…?
この部屋には二人しかいないと言うのに。

キキョウは首を傾げていたが、近寄ってくるよく知った気配に気付き、後ろを振り替えった。

「あら、イルミ。お帰りなさい」
「うん。ただいま」

そう言うと、イルミはシルバに向き直る。

「ただいま」
「あぁ」
親子の短い会話を済ませ、イルミは「話があるんだけど」と単調に言葉を紡いだ。

「カインのことか」
「うん。帰ってきたら教えてくれるって言ってたよね」

帰ってきて、仕事に行くまでの時間が短かったために、後回しにしてしまった事柄。

あの男の正体を。

「…カイン?」
母であるキキョウの横槍に、イルミは1つ頷いた。
「ハンター試験で一緒だったんだ。親父の知り合いで、キルアと友達だと言い張ってる人のこと」

「まぁ!キルに友達?!あなたの知り合いって、どういうことなの?!
 そのカインって、まさか下に来ている連中の中にいるの?!」

再び甲高い声を上げたキキョウに、シルバは深いため息を吐いた。



***



周りが煩くなったことに気づいて、カインはふと目を開いた。
寝る時に無意識に気配を消していたらしく、来訪者が自分に気づいていないこともすぐに分かった。

「まぁ!キルに友達?!あなたの知り合いって、どういうことなの?!
 そのカインって、まさか下に来ている連中の中にいるの?!」

そして、自分について話されていることも。

どうしようかな…。今すぐ俺だって言い出すか?
いやでも…シルバに迷惑が掛かるのは嫌だなぁ。
ん?いや、でも家族なんだから堂々としていればいいか?

ぐるぐると考えていると、ぽんと頭に暖かい手が置かれた。

シルバ?

撫でてきた手に温もりを感じながら、密かにふふと笑う。
本当に甘いんだから。

「あなた!聞いているの?!」
「あぁ。カインのこと、だったな」

「…俺が、なんだい?」

すがるように後ろからシルバの首に腕を回す。
シルバの肩越しにイルミと見知らぬ女性が見えた。
女性は顔に機械を取り付けており、表情を読み取るのは難しそうだ。

これが、新しい家族?
“あなた”って呼んでたから、シルバの奥さんかな?

「なっ…」
「カイン…?」

奥さんとイルミの声が被る。



「ふふ。こんにちは」







ーあとがきー
修羅場(笑)
キキョウさんのイメージは、なんかキーキーしてる感じです。(酷)
でも、美人なんだろうと。








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あきゅろす。
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