長編 



いつからだった?


―青と灰―
Part1

…まぁ、いつからでも良いんだけど。

『カイン』

いつからか、この声が聞こえるようになった。
俺にしか聞こえない声。

「(なんだよ?今、忙しい)」
今は学校の教室の中で、授業中だ。
『…寝てるだけだろ』
「(サボるのにも気は使うんだよ)」

俺は完全に突っ伏して寝ていた。
だって、暇なんだよ。先生雑談してるし。

『そういうものか?』
「(ん、そういうもん)」

こいつの声が聞こえるようになってから、変なものを見るようになった。
それは、おそらく、悪魔と呼ばれるものの類い。

夏目風に言ったのは、見えたのが妖怪だったら良かったのにという俺の願望だ。

本当のとこは、おそらくではなく、声の主が教えてくれた。

見えているのは悪魔で、こいつが悪魔の親玉、魔神サタンだと。

でも、ま。
あまり気にしてない。
俺に害がないし。
興味もないし。

『カイン』
「(…なんだよ)」
ため息を軽くついて、カインは伏せたまま目を開く。
『お前、もうすぐこの学校を卒業だとか言ってたよな?』
「(うん。名門の正十字学園に入学が決定してる)」
俺は頑張ったと思う。いや、マジで。
理事長は変な人っぽいが、関わらなければ良いわけだし。
名のある学校だ。将来は安定だろう。

『聞きたいのはそこじゃねぇ』
「(ぁあ?)」
『大人になったのか?』
「(…16は、大人って言わないかなぁ。あと4年くらいしないと大人じゃねぇよ、多分)」
『…そうか』
「?」

そこで丁度、授業の終わりを告げる鐘が鳴った。


***


帰宅途中、黒い影が見え、空を見上げた。
「(悪魔だ)」
そこら辺を飛び回ってる悪魔達は、どこか楽しそうに見える。
しかし、世界にはこんなにも悪魔達が溢れてるのに、なんでみんな知らないんだろう。
それを考え始めると、俺はついこう思う。

悪魔達は、案外優しい。

サタンにしてもそうだ。
あいつは、おそらく人を理解したいのだろう。
物質界と呼ばれるこの世界に興味津々だし。
まぁ、所謂、無い物ねだりなだけだが。

でも…サタンにも、愛した女性がいたみたいだし。
彼女も、多分サタンを愛したのだろう。
話を聞く限りそんな感じだ。

サタンを受け入れ、サタンを愛した彼女。
サタンを受け入れ、サタンに興味のない俺。

よく俺とその人を比べてる。
違うとか一緒だとか。

『お前は悪魔に興味がないな』
「(まぁな)」
『ユリとは大違いだ』

ほら。
また比べた。

「(なぁ、そのユリさんって、何者?)」
『ユリは祓魔師だ』
「(えくそしすと?)」
『平仮名になってるぞ』

知らない言葉だから仕方ないだろ。
てか。

「(えくそしすと?って何?)」

『悪魔を退治する奴らのことだ』

悪魔を…?

「(ユリさんに退治されかけたサタンはユリさんに一目惚れ→猛アタックの末、ユリさんもほだされてハッピーエンド?みたいな?)」

『話を捏造するな』

あれ?違うんだ。

『ユリは祓魔師だったが、悪魔の心を理解しようとしていた。ユリは俺を受け入れ、そして和解できた』
「(…ユリさんは、いい人だったんだな)」

俺とは違って。
俺は長いものには巻かれろって意識のが強いし。

あ、そうだ。

「(今日の夕飯はロールキャベツにしよう)」

『どの流れで、夕飯の話になった?!』

「(巻かれろ繋がり?)」

『何の話だ?!』

サタンとは意思の共有はしてるけど、俺が伝えようとしたこと以外は繋がらないらしい。本当いい設定だ。うん。

まぁ…サタンの方も、俺と同じみたいだけど。

“姿が見えないだけの話相手”

表現するなら、それが一番近い。
一緒にいるようで、いない。


サタンと下らない、本当に下らない話をしながらスーパーに入ると、俺と同じくらいの高校生が買い物袋に商品を入れていた。

特に驚きはない。
話したことは無いけど、よくスーパーにいるし。
あぁ、でも、少し不良っぽいから、あまり近寄らないようにしている。

「(今日もきれいな色だ)」

…あの青い瞳は、実は俺のお気に入りだ。

その青年の後ろを通った時、違和感に思わず振替ってしまった。

「(…?)」
『どうした?』

サタンの呼びかけに応じる頃には、彼はもうスーパーを出て行った後だった。

「(なんか、今変な感じがした)」

なんだろう?
よく分からない。
でも、よく知ってるような…

『あぁ…』
「(何か、知ってるのか?)」
『くく…後の楽しみにとっておきな』

…ま。いいや。

「(キャベツ安売りしてるかなぁ)」
『お前のその適当なとこ、嫌いじゃねぇけど、もうちょっと突っ込んでこいよぉー』

「(やだ。もう、どうでもいい)」





―あとがき―
私にしては、ずいぶん楽観的に書きはじめた話。
適当主人公とまさかのサタン様到来★彡

スーパーですれ違ったのは、もちろん愛しい若君ですとも!!







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