長編 
43-ミケ

「オレ達まで入って大丈夫なのか?」
周囲を訝しげに見たレオリオの言葉は、クラピカも同感のようで、ゼブロの返答を待っていた。


Euphorbia milii
ーミケー


「試しの門から入れば、まず襲って来ることはありませんよ。
 ミケーおいでー!」
ゼブロの言葉に呼び寄せられるように、深い闇の中から、何かがぬっと現れた。

現れたその生き物は、犬のような猫のような狐のような…何とも言いがたい顔つきをしていた。
その巨体は人の数十倍もあり、その手足や牙を振るえば、簡単に人を死に至らしめるだろう。

ずしりと腰を落とし、目の前にいる人間達を感情の無い眼でじっと見つめている。

全員が一言も言葉を発さず、その間、獣の息づかいだけが森の静寂に響いていた。

「どうだい、ゴン君」

沈黙を破ったのはゼブロだった。

「あれが完璧に習熟された狩猟犬というやつですよ。君が今まで見て来たどの動物とも違う生き物です」

その言葉に、カインはひとつ頷いた。

確かに、野生の動物とは明らかに違う。
…生身の人間じゃ、太刀打ちできそうもない…。
なかなか強そうな動物だなぁ。

「コミュニケーションをとる気満々だったでしょう?
 ミケの瞳を見るその直前までは」

ゴンは冷や汗を垂らしながら、ひとつ頷く。

「ミケは今、初めて見る者の姿、匂いを記憶しています。それ以上の感情はミケにはありません」

まぁ、記憶しても、あっちの門から入ってきたら食い殺しちゃうんだろうけど…。

「ゴン君、こいつと戦うことができるかい?」

ゼブロの問いに、ゴンは勢いよく首を横に振った。

「やだ、怖い…!絶対に戦いたくない」

やっぱり、ゴンは素直だね。

「ついて来てください」

ゼブロはミケの横を通り、スタスタと歩き出した。
全員の後ろを歩いている間、カインはどうしようか思案する。

本来なら、あの門を開けさせるために鍛練とかさせてあげたいんだけど。
俺も一回家に帰りたいんだよね。
シルバに会いに行くって言ってあるし…。
キルア奪還したら、また出かけるつもりだし…。
うーん…。


悩んでいる間に森を抜けた。

家…?
外に1人、男がいるってことは、この家は守衛の住まいってことか。

「交代だよー」

ゼブロの声に反応して、外にいた男がこちらを向いた。
すると、少し戸惑ったのか顔を歪める。

「客人とは珍しい」

そりゃぁ、誰も来ないからな…。
敵以外は。

ゼブロをちらりと見て状況を把握したのか、男は不適に笑った。

「ゼブロに気に入られるとは大した奴らだな。
 ゆっくりしていけよ。
 …ま、この家じゃそうもいかないだろうがな」


どういう意味だ…?

思案する間もなく、男は森の中に消えていった。





PiPiPiPiPiPiPi…!


突然、携帯がけたたましく鳴り響き、全員がびくりと肩を揺らした。

「…ごめん」

全員の顔を見て、カインはにへらと笑ってみせる。

「カインー!ビックリさせんな!!」
「いやーだから、ごめんって!」
レオリオに怒鳴られて、更に笑うしかできなくなってしまった。

そんなに怒らなくても良いじゃんー。

携帯が手の中で震えている。
着信を告げる音が未だに鳴り響いていた。

「あー…ごめん、先に入っててくれ」
「…えぇ、分かりました」
片手で謝罪を現せば、ゼブロが笑顔で答えてくれた。


良かった。
よし、さっさと森に入って電話に出るか。


「…もしもし?」

なんとなく誰なのかは想像がついてる。
なぁ?シルバ?






ーあとがきー
中々会いに行けないww
管理人モヤモヤ中…。






[*前のお話へ][次のお話へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!