長編 
30

「我はアドラメレク。
 人間ごときにに召喚されるとは、思いもしなかったが…まぁ、それなりに器もあるようだ。
 少しの間、力を貸してやろう」

「はぁ…どうも。
 あ、俺は紫煙カイン」


青と灰
Part30


なんか、凄く偉そうなのが出ちゃったなぁ。

「ぶっ…!あはははっ!」

急に笑い出したメフィストに、全員の視線が注がれる。

「あひゃひゃっ…げほっ!ごほっ!
 ……あー、いや、笑わせてもらいました」

「…仕掛けたのは貴公か…」
メフィストを見たアドラメレクは、眉を寄せた。

「いやいや、呼び出したのは彼ですから…」
カインに視線を寄越し、メフィストはにやりと笑う。
「もっと残忍な悪魔が出てきたら、虚無界に返すつもりでしたが…。
 アドラメレクなら大丈夫でしょう」

え、サタンのお付きさんなのに、良いのか?
まぁ、俺は気にしないけど…。

「…ふむ…」
カインとメフィストを交互に見た後、アドラはメフィストに視線を向けた。
「…貴公に聞きたいことがある」
「?はい、何でしょう?」
未だ、にやにやと面白がって笑みを浮かべてるメフィストは、ゆっくりと首を傾げた。

「…この場所が異空間になっているのは何故だ?」
その言葉にメフィストは瞬きを繰り返し、ちらりとカインを見た。
「…彼の体質のためです。
 彼の血は悪魔を呼ぶ原因になります。下手な被害を出さないために、塾生といる時は空間を切り取るようにしているんです★」

「(空間の切り取り…?)」
『簡単に言えば、お前の周りに出てくる悪魔達が入ってこれないようにされてるってことだ』
「(へー。理事長すげー)」

変な服装してるだけじゃないんだな。

『あいつも悪魔だからなぁ』

そういやそうか。
しかし、俺が人と話しても大丈夫だったのって、理事長のおかげってことか。
うーん、複雑。

「では。お二方、仲良く頑張ってくださいね☆」
そう言うと、メフィストはそそくさと部屋を出ていった。
残された塾生と悪魔は困惑した表情で、その扉が閉まるのを見送ったのだった。

雑な受け渡し…!
えーと。
アドラメレクか…長いな…。
アドラメレク…アドラでいっか。

「アドラはずっと俺といるのか?」
「あ?…あぁ…いや、必要な時だけ呼び出せばいい。力は貸す」
「そう」

どうしようかなぁ…。

「(なぁ、サタン。悪魔って、姿形は変えられるのか?)」
『あー、出来るが…。何するつもりだ?』
「(見た目微妙だから、整えてもらう!)」
『ぶふっ!!』

だって、もふもふしてないし!
なんかごわごわしてそうだし!

「アドラ、お願いがある」
「なんだ?」
「姿を変えてほしい」

「……………………………」

あ、沈黙が痛い…!

「ダメか?その姿だと、結構怖いんだが」
「…。そういう注文が来るとは思わなかった」

そう言うと、アドラは顎に手を当てて考え込んだ。

「どんな姿が望みだ?」
「え?…出来れば…柔らかそうな生き物で!」

「「「は?」」」

燐達塾生のすっとんきょうな声が聞こえたが、まぁ、無視っておこう。

「柔らかそうな…?」
「うん!腐ってたり、固かったり、気持ち悪かったりしなければ良いよ」

俺の要望に、アドラは押し黙ってしまった。
変わらぬ表情のまま動かなくなってしまったアドラに、俺は首を傾げる。

『ぎゃははは!アドラメレクのあんな顔、初めて見たぜ!』

サタンの大爆笑が頭の中でガンガン鳴っていて、一発殴ろうかと思った。
ていうか、アドラの表情…何がどう変わったんだろうか??

「主の望む姿がいまいち分からん。
 表せ」

「……………」

アドラの言葉に、今度はカインが黙りこんでしまった。

「(主って、俺のこと?
 でもって、表せって…)」
『絵でも描いてやれば良いんじゃねーか?』

…あー、なるほど。

ノートの1番最後を捲り、カインはペンを取った。



ーあとがきー
アドラメレクにつきましては、容姿以外は完全にオリジナルです。
まぁ、神話的なあれだと、
メレクが王様という意味だったり、
信仰されてたりとか、
子供を生け贄に求めたとか、
色々ありますが…。まぁ、その辺は無視ったり無視らなかったりで(笑)






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あきゅろす。
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