長編 
42-ゾルディックの庭


「ここを上って中に入る!」


Euphorbia milii
ーゾルディックの庭ー


「ちょ…ゴン、そんなことをしてもミケに食い殺されるだけだ!
 キルアに会う前に死んでもいいのか?!」

「俺は大丈夫だから!みんなはここで待ってて!」

おいおい…。
そんなこと許せるわけないだろ。
それだったら、俺が開けて中に入れるって…!

「うーん…、しかたないなぁ」
ゼブロが頭を掻きながら、そう呟いた。
全員の視線がゼブロに移る。

「ゴン君、カギを渡します。これで中へ入りなさい」
そう言うと、ゼブロは懐から鍵を取り出した。

「オッチャンちょっと待ってくれ。今、オレらが説得するからよ」
レオリオの言葉に、カインもクラピカも頷いた。

「しかし、ゴン君の意志はかなり固いんでしょう?」

う、とレオリオが詰まる。

「まぁ、代わりといっちゃなんですが。
 ゴン君が入ったら、私も侵入者用の扉からついていきます」
「え?」
その言葉には、ゴンも目を丸くした。

「もしかするとミケは私のことを覚えているかもしれませんし。
 私が一緒に行けば…攻撃して来ないかも知れません。
 まぁ、ほとんどの確率で皆殺されてしまうでしょうが」

ミケに殺されない確率なんて、1%にも満たないじゃないか。

「ダメだよ。そこまでおじさんに迷惑はかけられない」

「いいえ。残っても同じですから一緒に行きます」
ゼブロの言葉にゴンは少し瞠目したようだった。

「どっちにしろ、キルア坊ちゃんの大切な友人を見殺しにしてしまったとなったら、私はもう坊ちゃんに会わせる顔がありません。
 あなた方が死んでしまった時は私も死にます」

「…」


数秒の沈黙の後、ゴンは投げていた針を竿に収めた。

「わかった。…ごめん。俺、全くおじさんのこと考えてなかった」

そう言うと、みんなに謝るゴンを見て、カインはホッとため息を吐いた。

これがご年配の方の落ち着きというか…。
説得力というか…。
凄いなぁ。

ポジション的には夏目の滋さんかなぁ。

そんな視線を送られているとも知らず、ゼブロはゴンに声をかけた。

「ゴンくん、動物が好きでしょう?」
「え?うん」
「ずっと野山か何かを遊び場にしてたのでは?」
「うん、そうだよ。なんで分かるの?」

緩やかに頷くと、ゼブロは上着を脱いだ。

「もう一度、試しの門を開けますので今度は正面からミケを見て下さい」

ミケを見せるつもりかな…?
まぁ、俺も一度も見てないし、ちょうどいいか。


ゼブロが開けた扉の中に、全員が入り込んだ。


扉を潜った先は、相も変わらない景色だった。

光の届かぬ鬱蒼とした森。
薄く聞こえる何かの気配。
暗闇に浮かぶ、死火山ククルーマウンテン。

どことなく冷たい空気に、隣の三人が息を飲むのが分かった。

それでも…。


カインは1人、柔らかく微笑んでいた。


…あぁ、帰ってきたんだな…。


そこは優しくも懐かしい、ゾルディックの庭。






ーあとがきー
ついに帰ってきました。
早くシルバに会いに行きたいね。




作中使用↓
夏目友人帳







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あきゅろす。
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