長編 
39-黄泉への扉

バスは門の前で停車し、乗客を下ろした。


Euphorbia milii
ー黄泉への扉ー



「ここが正門、別名黄泉への扉と呼ばれております。 入ったら最後、生きて戻れないとの理由からです
中に入るには守衛室横にある小さな扉を使いますが…
此処から先はゾルディック家の私有地となっておりますので、見学できません」

守衛室…?

カインは首を捻る。

そんなものあったっけ?
しかも、その横の扉って…いつのまにあんなもの…。


「山はまだはるか向こうだぜ!?まさかあそこまで…」
「はい。ここから先の樹海はもちろん、ククルーマウンテンも全て、ゾルディック家の敷地になります」

そうそう。うちは広いから。
小さい頃はこの山全部で鬼ごっことかしたなぁ。
懐かしい。

「ねェガイドさん」
「はい」

多少の感慨にふけっていると、ゴンの声が響いた。

「中に入るにはどうしたらいいの?」

あ…。
ガイドさん、笑顔が歪んでますよー

ガイドさんは、ずいっとゴンに顔を近づけた。

「ボウヤ、私の説明聞いてまして?」
多少怒っている様子のガイドさんは、ゴンに詰め寄る。

「うん。でも…」
「中に入れば2度と生きて出られないのよ?殺し屋の隠れ家なのよ?!」

綺麗なお顔に青筋がたってます。


仕方ないなぁ…

「ゴン、お姉さんを困らせないの」
「う、ごめんなさい…」
よしよし。

ゴンは相変わらず素直だね。
しかし…こんな風に育つなんて…。
ゴンを育てたミトさんとかいう人に会ってみたいな…。
どんだけおおらかな人なんだろう?


って、え?

カインが目を見開いたのは、バスの中で見かけた弱そうな二人組が、守衛を持ち上げているところだった。

「さっさと鍵を出しな」

そうのたまって、守衛から鍵を奪い取ると、守衛室横の小さな門から二人は中に入っていった。

「大丈夫ですか?」
ゴン達が駆け寄るのを見て、俺も静かに近づく。

門から目を離さないようにして。

向こうに何かいる。
動物みたいな、何か。

「全く…ミケがまたエサ以外の肉食べちゃうよ…」

ミケ?

首を傾げたところで、扉が少しだけ開き、獣の腕が2体の骸骨を外へと放り出した。

うわー、家出るとき全く気づかなかった…。
こんな生物を飼うことにしたのか。

「えー…、皆様御覧いただけましたでしょうか。
 一歩中に入ればあの通り無残 な姿をさらすことに… 」

さすがプロ。
笑顔を崩さずに説明を続けるガイドさんに、俺は心の中で拍手した。

「いいからそんなこと!」
「早くバスを出してくれ―!!」

観光客は一目散にバスに乗り込み、運転手を急かす。

ガイドさんもバスに乗り込んだが、カイン達が残っているのに気づくと、大声で呼んだ。

「あなた達、何してるの?!早く乗って!!」

「行っていいですよ。俺達ここに残ります」

ゴンの一言に、バスに乗り込んだ全員の目が点になった。



Dear シルバ
門の前まで帰ってきたよ。
俺が眠ってた間に、ゾルディックもいろいろ変わったんだね。
そんな変化に、楽しさを覚えるよ。

…でもやっぱり、ちょっと寂しいかな。




ーあとがきー
さっさと家を出たがゆえに、なんにも確認しないで出てきちゃったカイン。
今さらに知らないことの多さに気づかされます。

ミケや守衛さん達の働きはじめって、案外最近なんだよね。








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あきゅろす。
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