長編 
37-出発前に
「あ、いたいた」
パソコンルームに三人の姿を発見し、カインは声をかけた。

「カイン、話は終わったのか?」
振り向いたクラピカが心配そうにこちらを見ていた。
「あぁ。何てことない話だったよ」
「…そうか」
にっこりと笑顔を作れば、クラピカは何度かうなずいてパソコンに向き直った。

んー…。
なんか気を使わせちゃったかな…?


Euphorbia milii
ー出発前にー


「カイン、チケットは取ったぜ。今日中の便だ」
「お。ありがとう」
レオリオの報告に、にこりと頷いた。

「クラピカ、次はハンターのページで、ジンってとこめくってみてくれる?」

「…ジンって誰?」
カインの素朴な疑問に、ゴンは嬉しそうな顔をした。

「俺の親父なんだ」

あ、なるほど。

「あったぞ。この人物だな」

そう言うと、クラピカはエンターキーを叩く。


ビービービー!!


「「「「?!」」」」

激しく鳴るブザー音に、全員が目を丸くした。

「…電脳ページ上での彼に対するあらゆる情報交換が禁止されている」
「クラピカ、それって…個人でか?」
カインの問いに、クラピカは頷いた。
「あぁ。
 …ちなみに、個人がこれに加入するためには、一国の大統領クラスの権力と莫大な金が必要だ」

なんて規格外な…。
「さすがはゴンの父親…」

カインの言葉にレオリオも目を瞬かせて頷く。

「ゴン、お前の親父は予想以上にとんでもねー人物みたいだな」
「うん」

ゴンは父親に会いたいと言っていた。
しかし、情報規制がかかっている相手を見つけ出すなんて…

「見つけるのは、難しそうだ」
これは骨が折れる。
「…でも、見つけるんだろう?」
「うん!」

頷いたゴンの顔は、とても嬉しそうだった。




***



飛行船の待ち時間の間、カインは三人から少し遠ざかった。

携帯を取りだし、見知った名前にカーソルを合わせる。


「もしもし…?シルバ?」
『カインか。試験、終わったらしいな』
「あ、うん。俺は受かったよ」
いつも通りのシルバの声に、安堵しながらも、1つ深呼吸を済ます。

「…先に謝っておこうと思って。
 俺は、キルアの友達と一緒に、キルアを迎えに行く」

『…何故、謝る?』

多少の沈黙のあと、発せられたシルバの声は穏やかだった。

「当初の目的とは違うから…」

シルバに会いに行くと言いながら、息子を奪いに行くと宣言してるなんて…。

『それでも、カインは来るのだろう?

 俺に会いに』


!!


「……うん、そうだね」

会いに行くよ。

いや、会いに…帰るよ。


「シルバ、今から帰る。
 今度こそ“ただいま”って言うから、待っててくれ」

『あぁ。待ってる』


シルバ、そうしたら。


シルバの30年、教えてくれ。





ーあとがきー
ついにハンター試験編終了です。

ここまでノリと勢いとブラコンで突っ切ってきましたが、ここまでこれて、本当に良かったです。

さぁ、次はゾルディック編!
気合いが入ります!!










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あきゅろす。
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