長編 
29


「(そういえば、近頃あいつら怒らないな…)」
『悪魔たちのことか?』
「(うん、こんなに俺が人と話してるのに…)」


青と灰
Part29


『そういや、そうだな』
あっけらかんと言うサタンに、小首を傾げた。
「(サタン、何か知ってるのか?)」

『さぁな』

嘘臭い。
物凄く嘘臭い。

なんだ?
サタンは何を隠してる?


「紫煙くん」
「…?」
どこか知ってる声で背後から呼ばれ、肩越しに振り返った。

「…は?!り、理事長?!」

カインが思わず席を立って後退ると、他の生徒達もメフィストのことに気がづいた。

「理事長?!」
「メフィスト?!」

「こんばんは★」
不敵な笑みを浮かべてそう言うと、メフィストはバッと手を広げた。

「突然ですが!
 紫煙くんの手騎士としての資質を、ここで試そうと思います★」
突如現れたメフィストが言ったことを、カインは理解が出来なかった。

「(テイマー…?)」

あ、手騎士か。
使い魔を使役するとかいう。

「…って、なぜ今?そして、なぜ俺?」
今は休み時間なのに…。

「私としても不本意なのですが…。
 あなたの性質を考えると、私が見た方が良いかと思いまして★」
にやりと笑うその顔には、ただ、面白いとしか書かれていない。

『カイン、加減しろよー』
「(加減?!)」

何するかも分からないのに、加減も何もないだろ?!

「さぁ、時間も限られていますし。この紙に血を垂らして、思い付く言葉を唱えてください」

模様が描かれている紙と針を差し出され、カインは躊躇いながらそれを受け取った。

「(これに血を垂らすとどうなるんだ?)」
『お前が使役できる悪魔が出てくるな』

悪魔って、そんな簡単に使役できるもんなのか…。

「ちなみに。これには天性の才能が必要です。
 まぁ、あなたに関しては問題ないでしょうが」
メフィストの言葉に意識を前に戻す。

「どうしました?」
「…誰が死んでも、知らないからな」

悪魔を呼ぶ。

それは、俺の回りの人間には危険なことだ。

只でさえ今は綱渡り状態をしているのに…。
いや、もう手遅れなのかもしれないが。


「っ…」
針で自身の指を刺す。
ぷくりと出た赤い滴を紙に押し付けた。

『カイン、思い付く言葉を』

思い付く、言葉?


「痛い」


『「は?」』

いや、だって、指痛いんだもん。
理事長もサタンも声合わせて微妙な顔しないでよ。

俺は1つ、ため息を吐いた。
仕方ない。

何かを呼べば良いんだよな?


「…共に来い」


簡素な言葉に反応し、紙からじわりと熱が漏れた。
その熱は瞬く間に火傷しそうな熱さへと変貌を遂げ、カインは思わず目を閉じた。

一瞬、風が吹いたのを感じとり、ゆっくりと目を開けば、目の前に見知らぬ者が佇んでいた。

頭と胴は人間、残りはラバ。
尾には孔雀の羽が生えている。

「え、激しく微妙」

「呼び出しておいて、それはないだろう?!」

おお。会ったばかりなのに突っ込みが激しいな。

『…アドラメレクか』
「(え?知り合い?)」
『俺様の洋服係だ』

は?洋服係…?

「(…奇抜な服装をチョイスしそうだな…)」

『そこかよ』







ーあとがきー
この話を書いてる時に、拍手コメで、
悪魔たちとのあの設定はどこに…?
というコメントを頂いていて、1人であわあわしてました(笑)
フラグ回収はする予定ですので、お付き合い願えればと思います。













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あきゅろす。
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