長編 
36-イルミ

「お前に兄貴の資格ないよ」
「兄弟に資格なんて必要あるのかな」
「友達にだって資格はいらない!」

ゴン、ごめん。
キルアは、家に帰ったよ。
止めることは出来なかった。


Euphorbia milii
ーイルミー


ハンターライセンスの講習を受けた後、ゴンは早急にイルミを捕まえた。

「ククルーマウンテン、そこに俺達の住処がある」

イルミの情報に、随分素直に教えたなぁと首を捻ってしまった。
まぁ、試しの門も今のこの子達じゃ無理だと分かっているからだろうけど。

でも、それは“ゴン”を知らないからだ。

この子は絶対諦めないよ。


「ククルーマウンテン…」
まさかこの面子で行くことになるとは…。

「カイン、ククルーマウンテンのこと、知ってるの?」

知ってるというか…実家だしな。

「…観光地だよ」
「観光地?」
「行ってみりゃ分かるさ。さぁ、チケットをとってさっさと行こう」

行く間にシルバに会いに行く口実、考えなきゃな。



「カイン、ちょっといい?」
そう呼び止められ、カインは振り替えった。
「…イルミ?」

…なんだろう?
まぁ、とりあえず。

「ごめん、先いってて。少し話つけてくる」

威嚇するゴン達に笑顔でそう告げ、カインはイルミに向き直った。
背後から気配が消えたことを確認してから、イルミに目をあわせる。

「で?何のようだい?」
「カインって、親父と知り合いなの?」
「…」
単刀直入に放たれた言葉に、目を見開いてしまった。

家に帰ればすぐに分かるのに。
わざわざ俺に聞きに来るなんて…。

「それを確認してどうする?」
「…。…親父が家族以外の誰かを信じるなんて、今まで無かったから」
「ふふ。そうか」

ここに来て初めて、イルミはカインをまじまじと見た。

銀の髪、銀の猫目。
親父に似た、自信の満ちた表情。

親父との電話が気になって…4次試験の後、観察していたあの時…。
まさか電話で二人が話し始めるとは思わなかった…。
あんな風に笑い、信頼してるなんて…。

自分の予測が確信に変わっていく。
しかし、それを心の片隅で否定し続けようとする自分がいることも、イルミは感じ取っていた。

カインはもしかしたら、自分の兄弟や従兄弟なのかもしれない。
もしかしたら。ただの遠い親戚なのかも。

しかし…。
あの父親にあれだけ信頼を置かれるのは、容易なことではない。

カインは、何者なのか。

結局のところ、その答えが出ない。
親族なのだとしても、その答えが出ない。

「カインって、何者?」
「…帰れば分かるよ。
 じゃぁ、俺はもう行くね」

不服そうに顔を歪めたイルミを背に、カインはその場を立ち去った。

人知れず、カインは笑う。

俺は少しイルミのことを勘違いしてたみたいだ。
だって、あんなことを聞いてくるなんて…

イルミも、怖いんだね。

新しい誰かが、現れること。

ふふ。多分、イルミは長男なんだろうな。
家のことで知らないことは、ほとんどない。
母親とは仲良く、父親とは対等に。
知らないことは幼い頃に全て消えて、あとはただ、自分がどうするのか。
そうやって生きてきたんだろう。

それなのに。
急に現れた俺は父親と親しげで、同じ殺し屋なのに全く考えが違ってて。

俺が何なのか分からない。
それが怖い。

ふふ…。シルバ。
中々面白い子供を育てたね。






ーあとがきー
イルミの人格が一番の未完成だと思ってる管理人です。
イルミは人との関わりが極端に少ないんだろうなぁと。

きっと普通の生活は送れない。(笑)


そして軽くフラグ回収。
4次試験の後、二人の電話を見ていた影はイルミでしたー(笑)









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