長編 
28

「本日から紫煙君にも、授業に参加していただきます。
 皆さん、色々と教えてあげてくださいね」


青と灰
Part28


夏休み少し手前。
俺は祓魔塾に通い始めるようになった。

ここに入るまでの1週間…毎日行われる講義と、出される膨大な宿題。

奥村先生は毎日のごとく俺にマンツーで勉強教えてたのに、なんであんなにピンピンしてるんだか…。
あの人は半分と言わず、全部悪魔の方がしっくりくるぞ…。


「カイン君〜」
「なんだよ?ピンク頭」
休憩の最中にやって来た志摩に悪態をついてみる。

「繊細な心の持ち主に、そんな暴言…あかんって」
「ふーん」
「…無関心の方が痛い気ぃするわ…」
うなだれている志摩を眺めながら、カインは首をひねった。

こいつは何で俺にかまうのだろう?

あれだけの悪態をついたのに。

「あ、せや。カイン君、カイン君はマイスターは何にしたん?」
「まいすた?」

なんだ、そのアニメのタイトルみたいなのは。

カインが首を傾げると、近くにいた勝呂が深々とため息を吐いて、どかりと前の席に座った。

「“マイスター”や。“称号”と書く。
 称号は祓魔師に必要な技術の資格や。
 5つ存在し、1つでも得られれば祓魔師として認定される。
 ここまではええか?」
「お、おう」

紙とペンを出して完璧な図解をしてくれる勝呂に、カインは戸惑いながらも、うなずいた。

「騎士(ナイト)はその名の通り、刀剣で戦う称号。
 竜騎士(ドラグーン)は銃火器で戦う称号。
 手騎士(テイマー)は使い魔を使役して戦う称号。
 詠唱騎士(アリア)は聖書や経典を唱えて戦う称号。
 医工騎士(ドクター)は医療をする称号。

 これで5つや。
 奥村といいお前といい…ちょっとは学んできぃや…」

「勝呂は絵が上手いなー」

「聞けや!」

その後の話から、勝呂達は詠唱騎士やら、騎士やら目指してるものがあるらしい。
さて…

「俺はどうするか…」
「お前はどう考えても、手騎士やろ」

…。

勝呂即答すぎるだろ。
つーか、どう考えてもって…。

「…なんで?」

「あれだけの悪魔従えてる奴が、手騎士以外に何になんねん!」

従えてるわけじゃないんだけど…。

「えー。竜騎士とか、かっこいいじゃん」
名前が。

「名前かいっ!」

「うわ、心の中読まれたっ」
「口に出しとるわっ!ど阿呆!」
「ど阿呆って…酷いなぁ。トサカ引っこ抜くぞ」

手をわきわきと動かせば、勝呂は深々とため息を吐いた。

「お前の相手は疲れるわ…」

俺なにもしてないのに。

『ぶははっ』

「(何さ、サタン)」
急に笑い出して。

『いやー。友達になれるといいなぁ?カイン』
「(…サタンにしてはムカつく嫌味だな)」

友達を作れない俺に、そんなこと言うなんて。

『あ。わり』
「(軽っ)」

ったく…。

「(…。称号か…。どうしようかな…)」



***


授業を終え、雪男は廊下を歩いていた。

「奥村先生」
「…はい」
どこから現れたのか、理事長であるメフィストに呼び止められ、雪男は立ち止まった。
いつもの白い衣装に身を包み、にやにやと笑うメフィストに、心の中でため息をついた。

また何か面倒事でも頼まれるのか、と。

「紫煙君の教育、素晴らしい勢いでしたね」
「彼の飲み込みが早かったので。私の力ではありませんよ」
「またまた。ご謙遜を」

謙遜する必要もないほど、彼は飲み込みが早かった。
と、雪男は振り返った。

「(スポンジが水を吸うように知識を吸収していった。
 多すぎる量の宿題を出しても、ケロリとやってのけ、理解もしている。
 まるで、一度聞いたことがあるかのようだった。
 彼に憑いている悪魔たちが教えたのだろうか…?
 しかし、そんな高等な悪魔は見ていない…)」

「では、奥村先生」

メフィストの声にハッと意識を戻した。

「その調子で、他の生徒たちの教育も頼みますよ」
「はい」

メフィストが去った後、雪男は歩きだした。
「(まぁ、彼は特殊だ)」

…それよりも。
他の生徒達とうまくやっていけるかが心配だな…。






ーあとがきー
というわけで授業参加です!
そして、サタン様のスパルタ教育完璧すぎる…。
でも、肝心な称号とか教えてないのは、何故?(笑)











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