長編 
35-選択
扉の前に立ち、カイン達4人はイルミを威嚇する。

ネテロはただそれを見ていた。
今までのハンター試験には少なかった場面。

どう転がっても、これは面白い。


Euphorbia milii
ー選択ー


「まいったなぁ。仕事の関係上、俺も資格が必要なんだけどな。
 ここで彼らを殺しちゃったら、俺が落ちて自動的にキルが合格しちゃうね。
 あ、それはゴンを殺しても同じか。

 …よし。合格してからゴンを殺そう」

抑揚のない声で、イルミはそう言い放った。

「それなら失格にならないよね?」
「うむ。ルール上問題はない」

会長…こういう時くらいこっちに味方しろよ!
もう…!

「キル。どうする?
 俺と戦って勝たないとゴンを助けられない。
 友達のために俺と戦えるかい?
 答えは簡単。できないね」

キルアの目を見ながら、イルミは続ける。

「“勝ち目のない敵とは戦うな”
 俺が口を酸っぱくして教えたよね?」

イルミがキルアに手を伸ばす。

「動くな」

びくりとキルアの体が揺れる。

「少しでも動いたら戦い開始の合図とみなす。
 同じく、お前と俺の体が触れた瞬間から戦い開始とする。
 止める方法は1つだけ。分かるな?
 …だが、忘れるな。
 お前が俺と戦わなければ、大事なゴンが死ぬことになるよ」

「やっちまえ、キルア!
 どっちにしろ、お前もゴンも殺させやしねぇ!
 そいつは何があっても俺達が止める!お前のやりたいようにしろ!」

レオリオ。
…ありがとう。

「キルア!俺達を信じろ!
 大丈夫だ!俺の強さはお前も知ってるだろう?」

カインの言葉にのみ反応したイルミは、訝しげに顔を歪めた。

「…ねぇ、カインってさ、もしかして俺に勝てると思ってる?」
イルミは酷く不思議そうに首をかしげていて、俺は思わず笑ってしまった。
「ふふ。あぁ、思ってるさ。俺はイルミと戦っても生き残る自信があるよ」

まぁ、ズタボロになるだろうけどな。

「そう。
 じゃぁやっぱり、今のうちに、カインも殺そうか」

「!!」
キルアの目がさらに見開かれる。

「さぁ、キル。どうする?
 戦わないとカインもゴンも死ぬよ?」

酷い選択肢だけど。
でも、キルアならこの選択肢を選ぶ確率は…


こっちが、有利……?




…本当に?




初めから答えが分かってるみたいに、イルミがあんなに落ち着いてるのに?

違和感を感じて、凝でキルアを見やった。
キルアの頭にほとばしる、念の塊。
これは…


「…っ…」



……きっと…キルアは戦えない。


キルアの頭に何かある。念の込められた何かが。
分からなければ、きっと希望が持てた。

でも、分かってしまった。

あれは…

キルアを縛る鎖だ。


キルアは戦えない。

あれに、抗えない。


カインは目をつむった。
これから放たれる言葉を受け入れるために。







「…まいった。俺の負けだよ…」






キルア、お疲れ様。
大丈夫。
ゴンは絶対守るから。

だから

悔いるな。




「あー良かった。ゴンとカインを殺すなんて嘘さ」

いいや。
本気だった。
本気で殺すつもりだったはずだ。

そうじゃなきゃ、あんな殺気は発しない。


イルミに何かを囁かれ、ふらふらと戻ってきたキルアの後をカインは追った。

「キルア」
「…」
「お疲れさま。気にするな、あれはイルミが悪い」
「…」

聞こえてるか?俺の声。

「キルア。
 キルアが何を思おうと、俺もゴンもクラピカもレオリオも、キルアのことを友達だと思ってる。
 それだけは忘れないでくれ」

「…」



キルアは次の試合、ボドロを殺して失格となった。



ーあとがきー
これで最終試験も終わりです。
長かった。ようで、短かったですね。

E主は30年前から今に渡り、そして今を生きて、変わってきました。
ストーリーに何らかの影響を及ぼす存在になるかは、全くの未定ですが、何かやらかしそうですね。
やらかせば良いのに。←









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あきゅろす。
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