長編 
33-波乱の予感

Euphorbia milii
―波乱の予感―


「ハラハラしたぜ、まったく…」
レオリオは、ため息混じりにそう呟いた。

「ごめん」
苦笑いして謝れば、“心がこもってねぇ”と頭をぐしゃぐしゃにされた。
ひどい。

「…レオリオは、俺が怖くないのか?」
カインが彼らの前であんな殺気を出したのは、今回が初めてだ。

「は?…あぁ、そりゃ、さっきみたいになったら怖いけどよ…。
 カインは良い奴だし。
 なにより、さっきのは優しさから来るもんだろ」

ちょっと直接的すぎるけどな、と続けたレオリオに、カインは目を見開いた。

…良い奴…?優しい…?
俺が?
…違うよ。

俺じゃなくて、レオリオが…

「…優し過ぎるんだよなぁ…」
「?」

聞き取れなかったらしく、レオリオは首を傾げていた。

「なんでもない」

レオリオ、ありがとう。


***


ここからの試合は最初の2戦に比べ、比較的スムーズに行われたように思う。
まぁ、自分の番が終わったから、というのもあるけど。


○ハンゾー対ポックル×
力の差は大きく、ハンゾーの「手加減はしない」という宣言により、幕を下ろした。

「ハンゾー、おめでとう」
「おう」


○クラピカ対ヒソカ×
多少の攻防の後、ヒソカが耳打ちをし、その時に自らの敗北を告げた。

「(ヒソカの耳打ちとか…クラピカ、ドンマイ!)」
「カイン、口から漏れてるぞ」
「嘘…?!」
「クックックッ、カインにも耳打ちしてあげようか?★」
「…慎んでお断りします」
戻ってきたヒソカに微笑まれ、顔を引き攣らせつつ首を横に振るった。

しかし、これで…クラピカも合格…か。


○ポックル対キルア×
「まいった。あんた弱そうだし、戦う気がしない」

…多分、俺だけじゃないけど、口をあんぐりと開けてしまった。
キルアがまさか不戦勝を申し出るなんて思わなかったから。
負けず嫌いだし、ゴンはもう合格してる、早く追いつきたいはず…。

それにしても、運が悪い…。
いや、仕掛けたのか?会長?

キルアの次の相手はイルミだ。
兄弟で戦うなんて…。
それに、力の差は歴然としてる。

…嫌だな…胸騒ぎがする。


「キルア、次の相手と戦うな」
「は?」
「始まった瞬間に降参しろ。これは忠告だ」
「んだよ、それ…」
そっぽを向いて頭を掻くキルアの手を掴んだ。

「キルア、お願いだから…」

「…。…わーたって」

少しぶすくれたキルアの頭を、約束だぞ、と撫でた。


○ヒソカ対ボドロ×
激しい攻防の末、ヒソカの耳打ちによりボドロが敗北を宣言。

ヒソカがハンターか。
何だか世も末というか…。
あ、俺もそう変わらないか。


第7試合。
ギタラクル対キルア
もとい。
イルミ対キルア


キルア、約束守ってくれよ…。


開始の合図と共に声を上げたのは、

イルミだった。


「久しぶりだね、キル」
「?」

訝しげに構えるキルアに、イルミは“この姿じゃ分からないか”と針を抜き始めた。
一本抜くたびに変形していくイルミの顔を、会場にいた全員が驚きに満ちた顔で見ていた。

「あースッキリした」
針男からは考えられない風貌…黒い長髪、黒い猫目はどうにも感情を宿して無いように思えた。
そして、ゆっくりとその瞳がキルアを捉える。
キルアも目を見開いて、イルミを見ていた。
目は口ほどにものを言う。

驚愕と恐怖。
今、キルアの中にあるのは、たったそれだけ。


「…兄、貴…!」


戦って、勝てるわけはない。

キルア、どうする…?




Dear ゴン
キルアのピンチだ。
…ゴン。
今、お前がここにいたら、何か変わったのかな?




―あとがき―
ついに兄弟再会。







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あきゅろす。
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