長編 
4-出会い


走る〜走る〜おれーたーち♪

そこ以外、歌詞は知らないけど。



Euphorbia milii
―出会い―



「おいガキ、汚ねぇぞ!そりゃ反則じゃねーか!オイ!!」

ん?さっきの三人組のオッサン?
何やってんだ?

「何で?」

そう言葉に出したのは、スケボーに乗った銀髪の少年。


あ、あの子…。


シルバの小さい頃にそっくりだっ!!

何だ?誰だ?
何であんなにそっくりなんだ?!

嗚呼!
是非、写真を撮らせろ!
今の高性能なカメラでシルバの子供時代を残すのだ!
いや、昔のカメラも味わいがあるのだがねっ!


って、俺っ!
あれはシルバじゃないんだから!!


カインは頭を振り、一度考えを払い落とす。


それにしたって、ハンター試験に子供が二人も。
珍しい…。
…多分ね、多分。

ハンター試験の内実を全く知らないカインであった。



「ねえ君、年いくつ?」
銀髪のスケボー少年は、黒髪の少年にそう尋ねた。
「もうすぐ12歳!」
「ふーん、やっぱオレも走ろっと」
そう言うと、銀髪少年は格好良くスケボーから降りた。
「オレ、キルア」
「オレはゴン!」

微笑ましいねぇ。
小さい頃のシルバを見てるみたいで、何だかちょっと寂しい気もするけど…。

ん。
ホームシックになる前に、ちょっと離れますか。

カインは足に力を込め、ぐんと加速した。








あれ?

なんだ、結構遅く走ってたんだ。
さっきの英国紳士が目の前にいるよ。

んー。走るだけって、案外つまらないなぁ。

「あの。試験官さん?名前は?」
「サトツと申します。おや、ずいぶん退屈そうですね」
「あははは。後ろはみんなへばってるけどね」

サトツさん、ね。
この人もハンターなのかな?
念使えるみたいだし。

「君の名前は?」
「俺はカインです。サトツさんはハンターなんですか?」
「えぇ。ハンター試験の試験官は資格を持つものが無償で請け負うもの。試験官は例外なく、全員ハンターですよ」
「そうなんだ…」
無償で、ね。
親父だったら絶対請け負わないな。
いや、うちの家系はみんなそうだけど。

……その前に、お呼びが掛からないか。
暗殺一家で通ってるわけだし。


「いつのまにか一番前に来ちゃったね」

およ?
さっきの子供だ。

「あ!さっきの人だ」
「ん?俺のことか?」
黒髪の…ゴンに指を指され、カインは首を傾げた。

さっきって、君ら僕を見てる様子無かったじゃないか。

「トンパさんがジュースくれた時、見てた人!」
「は?ジュース?」

トンパ?誰…?
…あっ!

あの、丸鼻メタボの時かっ!

カインがそう叫ぶと、二人は腹を抱えて笑い始めた。

笑いながら走るなんて起用だね。二人とも。

「っ…お前…良いセンスしてるっ…」
「うーん、お褒めに預かり光栄ですけど。しかし、よく覚えてたね」

「うん、なんか獣に見られてる気がしたんだ。気配消して、こっちを探ってるような…」
「あぁ…なるほど」

現にそれをやったから、気づかれたわけだ。
…まったく、野性児だな。
獣程度の気配に気づくなんて。


「あんた、名前は?」
「ん?カインだよ」

ファミリーネームは聞くなよ。
答えられないから。

「カイン、ね。俺はキルア。んで」
「俺はゴン」
「うん、よろしく」

元気の良い子供達だ。

「カインは男の人、だよね?」
「?うん、そうだけど」
女と間違われた事はないぞ?一応。

「何で髪伸ばしてるの?邪魔じゃない?」

ストレートの長い銀髪を一つに結び、肩に流しているカイン。

「…この長い髪は、双子の弟とお揃いなんだ」

シルバはウェーブが掛かってて、一見お揃いには見えないけど。
そういや、30年経っても伸ばしててくれたな…。

「え、双子なの?」
「うん。溺愛してっから、お互いにね」
「へぇ〜」

ふふ、ゴンは…居て妹、かな?

「ゴンは?」
「俺は一人っ子だよ。妹みたいな子は近所にいたけど」
ほう。俺の勘もまだあるな。
「そっか。キルアは?」
「俺は5人兄弟」
「ぉお!大家族だな」
親を入れて7人家族、みたいな?

「俺も兄弟欲しかったなぁ」
「あんま良いもんじゃないぜ、兄弟いるのも」
「えー」

ふふ、二人は良い友達みたいだな。

ゴンとキルアのやりとりを微笑ましげにカインは眺め、そういえば、と声を上げた。

「二人は子供なのに何でハンター試験、受けてんの?」

見渡す限り子供は君らくらいだ。俺も16だし。子供とは言い難い年齢だよな。

「んー俺は難関だって聞いたから。でも拍子抜け。つまんねーの」
「はははっ、言うね。ゴンは?」
「俺は親父がハンターだから、かな」
わお。二代に渡りハンター家業か。
血って強いよな、やっぱ。

「どんなハンターなの?」
「分かんない」
その答えに、カインもキルアも目を見開いた。
「何それ?」
「俺、小さい頃におばさんの家に預けられてさ。会ったことないんだよね。でも、子供をほったらかしてまでやりたい仕事って、どんなだろうって」
ゴンの告白に、深々と頷いたカインは、ふふ、と笑う。
「その父親に会いたいんだね、ゴンは」
「うん!」

自由だね、この子は。

「カインは?」
「ん?」
「ハンター試験、何で受けたの?」
「んー。なんとなく、かな?」

会長に言われたからって答えたら、なんかマズイ気がする。

「なんか意味深だな」
「いやいや」
キルアの訝しげな視線に苦笑いを返した。


「出口だ!」

誰かの叫びにより、カイン達の視線は前方に向けられた。





Dear シルバ
君に似てる子に会ったよ。
それから、純粋で俺達とは全く違う子にも。
ハンター試験はまだ始まったばかりだけど、結構楽しんでる。

シルバも、こんな気持ちでハンター試験受けたのかな?
今更だけど、一緒に受けたかったね。






―あとがき―
ゴンとキルアに出会いました!
わー♪楽しい〜♪


[*前のお話へ][次のお話へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!