長編 
29-最終試験
「最終試験は一対一のトーナメント形式で行う」
会場に集められた10人に、ネテロはそう告げ、組み合わせ表を見せた。


Euphorbia milii
―最終試験―


「…」

クラピカと…俺が戦うのか?
で、その上にヒソカ…か。

うわぁ、どっちとも戦いたくないんだけど…。

「最終試験のクリア条件はいたって明確。たった1勝で合格となる」
「要するに不合格は1人ってことか」
「さよう」

ハンゾーの問い掛けに頷いたネテロに、カインは顔を歪めた。

1回の勝ちって言ったって…。

普通のルールじゃ、死人がでるぞ?

「戦い方も単純明快。武器OK、反則なし。
 相手に“まいった”と言わせれば勝ち! ただし、相手を死にいたらしめてしまった者は即失格!
 その時点で残りの者が合格、試験は終了じゃ。よいな」

…なるほどね。
“まいった”か。
なかなか骨が折れそうな試験だな。

だが、結局…。
力が有利に働くのは目に見えている。

「第1試合!ゴンVSハンゾー!」

この二人から、か…。

「ゴン、自分の思うようにやってこい」

餞別にそんな言葉をかければ、ゴンは少しキョトンとしていたが、“うん!”と頷いた。

「…勝てると、思うの?」
キルアのか細い声にふふ、と微笑んだ。

「勝てる確率なんて、ないよ」

その言葉を言うのに、戸惑いは無かったのに、何故か…凄く嫌だった。

「…さて…」
俺の予想が正しければ、この試合…長引くだろう。

ちらりと会長を盗み見れば、会長の前に念字で『下がっても良いぞ』と描かれていた。

…。

「悪い、ちょっと外すな」
「は?今?」
「ん。野暮用」
キルアにそう告げ、俺は部屋を後にした。





扉を閉めて寄り掛かる。


「…」

きっと…この後に待っているのは…
拷問、だろう。
ハンゾーはその心得があるだろうから。

同じ力を持った受験者同士なら、普通の戦闘で大丈夫だろう。

でも、ゴンとハンゾーでは…力が違いすぎる。

その差を埋めることなんて、出来やしない。
だけど…

ゴンは絶対に“まいった”とは言わない。
ハンゾーだって諦めないだろう。

この試合は泥沼だと、俺は予想していた。

「さてと…」

携帯を取り出し、登録されている番号にカーソルを合わし、ボタンを押した。


『カイン?』

「シルバ?」

名前を呼び合って、少し微笑んだ。

『どうした?』
「今、最終試験の最中なんだ」

そこまで言うと、カインは歩きはじめた。
人気は無いが、鳥の声や木々のざわめきが聞こえ、良い会場だと思う。
そんな中で血生臭い決闘をやっていると思うと、少し気分は滅入るが。

『電話していて大丈夫なのか?』
「うん。今は俺の番じゃないし、違う所にいるからね」

中庭らしき場所に出た。
ベンチを見つけ、そこに腰掛ける。

「でな、シルバ」
『ん?』
「この間言ってた、もう一人のお前の子供のことなんだけど」

正確には“いる”とは一言も言ってない事柄。

『あぁ、それがどうした?』

ふふ。やっぱりいるんだな。

「確認したくて」
『確認?』

最終試験に残っているはずのゾルディック。

残った人の中で考えられるのは、
キルアは当人だから除外。
ゴンもクラピカもレオリオも違う。
ヒソカはもっての外。

他の人の中で、めぼしい人物はたったの一人だけ…。


彼しか、いない。


「なぁ、シルバ。

 イルミは、俺のことをどこまで知っているんだ?」





―あとがき―
気づいた。

というか、ゴンの拷問を書きたく無かっただけだったり。
あれは胸が痛くなります…。







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あきゅろす。
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