長編 
26

黒いコートを羽織った両親の姿。
いつも笑顔だった二人。

あの日以外は…。


青と灰
Part26


両親の姿は今でも鮮明に思い出せる。
二人とも、いつも凜として、悪を退治しにいくのだと笑っていた。

俺にとって、両親はヒーローだった。

「父さんと母さんが…祓魔師?」

「えぇ。…見事な連携でいつも悪魔を倒していましたよ」

…。

「あなたが祓魔師になれば、本当のご両親の姿に近づけるかもしれません。見たくはありませんか?」

二人の本当の姿?
祓魔師という以外に何がある…?

「我々祓魔師の中には、ご両親と関わった方が沢山いますし…」

そいつらから話が聞ける、ってことか。

「(サタン、どうしたら良いかな)」
『あ?俺に聞くのか?』
「(え?だって、サタンだけじゃん。俺の傍にいてくれたのは)」
『…』

あれ?サタン?

『お前の好きなようにしろ。
 カインが祓魔師になっても、俺は咎めねーから』

「(サタン…それって…)」
『気になんだろ?親のこと』

確かに、気になる。
でも、サタンと縁を切るほどじゃないと思った…。

『俺とカインは違う。 俺は祓魔師にはなれねーが、カインはなれるだろ?
 だったら。その情報掴んで来いよ』

「(サタン…)」

…そう、だな。

俺は人間で、両親がいた。
二人の姿は瞼の裏に、しっかりと焼き付いているのに、俺は何も知らない。

知りたい…。
どうして、俺を殺そうとし、そして死んでしまったのか…。
本当のことなんて、俺は何一つ知らない。

「…良いだろう。なってみようじゃないか。祓魔師とやらに」

『…』

「おや☆随分あっさりと決まりましたね」

まぁ、サタンの後押しがあったからな。

「しかし、 これで…。
 晴れて全員、候補生に昇格です!」

…!
…エクスワイアって何だ…!!
とりあえず、勉強しないと分からん…!

「皆さんの合格を祝して…この理事長が、もんじゃを奢って差し上げましょう!!」


もんじゃ…だと…?!


…つまり、それは…キャベツ料理…!!

お好み焼きに並ぶ、キャベツを使う料理だ!
味としての存在感が薄いものの、無ければ確実に味気ないものに変貌する…
縁の下の力持ち!!

なんて素晴らしい…!

キャベツ!

「スキヤキ…」
「せめて焼肉…」

なんだと…?

もんじゃを下に見るとは…
けしからん…!

「もんじゃは最高だ」

「「「「「え?」」」」」

目を見開いて俺に向けられる視線を、ぐるっと見渡す。

「もんじゃはキャベツと生地の割合、入れる具…。七変化する素晴らしい料理だろ」

「おや☆紫煙くんは、私と好みが合うようですね!嬉しい限りです」

理事長の言葉に、少し眉を寄せた。

「俺は白い変なスーツは着ない…」

「「ぶふっ!」」

志摩に奥村燐…長いな。
燐で良いか、もう…。
そこの二人、後ろで地味に笑うんじゃないっての…。

「この格好は正装ですよ。紳士たるもの、そのくらいは…ね☆」

「(サタン…?悪魔の色彩認識って…)」
『俺に聞くんじゃねぇよ。あれは、あいつの勝手な認識だからな?!』

そうなのか…。

「…正装でそれとは…悲しいもんだな」
「何気なく酷いですね、紫煙くん」

そんなことはない。

「で?」
「はい?」

「もんじゃ食べ行くんだろ?さっさと行こうぜ」

腕を組んでそう言ったら、俺以外の全員が瞬きを繰り返した。

「…そうだよな!食べ行こうぜ!」

ニッと笑った燐の呼び声に、全員が笑って頷いた。


「(サタン!もんじゃだぞ、もんじゃ!)」
『よく分かんねーが、楽しそうだな。美味いのか?』
「(ん!あれはいろんな意味で衝撃的な食べ物だ!)」
『ほー。楽しみだな』

それにしても。

「(サタンも大概、物質界好きだよなぁ)」

『当たり前だろうが』





―あとがき―
結構前向きに祓魔師に入ってしまいました。
しかしまぁ…。
うちのサタン様、物質界好きすぎるだろい(笑)
そして影響力がハンパないww





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