長編
28-料理研究
メンチさん、何の用だろう。
Euphorbia milii
―料理研究―
「メンチさーん?」
「来たわね」
こっちは準備万端よ。とメンチは胸を張る。
でも。
「俺、何で呼ばれたんです?」
小首を傾げた俺に、メンチさんはにんまりと微笑んだ。
「あんたの料理の腕、叩き割って上げようと思って」
「え゛?」
た、叩き割る?
「あ、間違った。叩き直すのよ!」
…目が本気だった…絶対本気だった…。
顔が引き攣るのを必死に押さえていると、メンチさんは俺を指差し、軽く睨みをきかせる。
「まずは私が見本を見せるわ。あなたは、それを真似して作りなさい」
メンチはそう言って包丁を握った。
俺は目の前で振るわれる包丁捌き、流れるようなメンチさんの手際は本当に美しかった。
「出来たわ」
「ぉおー!凄い…美味しそう」
メンチが作ったのは炒飯と酢豚。
「とりあえず、この二つだけでもマスターしてもらうわよ」
「はぁ…。でも、何でそこまで?」
俺、劇的に料理下手なのに。
「私みたいな被害者を出さないためよ!」
「ひ、被害者…」
俺は犯罪者か!!
いや、殺し屋やってた時点で言えた義理じゃないけどさ…。
「調味料は決められたものしか入れないこと!」
そうして、俺の料理特訓が幕を開けた。
「切り方は正確に!」
「はい!」
「違う!それじゃ細すぎる!」
「はい!」
「中華は火力が重要よ!手早く、火が通ったら味を決める!」
「はい!」
「変な調味料は入れない!味がおかしくなるでしょ?!」
「はい!」
「自分で味見して美味しいと思ったものを完成としなさい!!」
「はい!」
そして、俺は、中華マスターになった。
って、んなわけないから。
…今は5回の試作の末にメンチさんに試食してもらってる最中だ。
「どうですか?」
「…。…うん。食べれるものにはなったわね」
よーし!!
「良い?料理は実験じゃないのよ。
調味料はレシピ通りに。微調整はするけど、レシピ通りが基本!良いわね」
「はい!」
「味覚は正常なんだから、あなたはまだまだ伸びるわよ。諦めないで頑張りなさい」
「ありがとうございました!」
一礼して、調理場を後にする。
…終わった…っ。
カインはふらふらと廊下を歩き始めた。
みんながいるはずの共同スペースに、クラピカが座っているのが見え、カインは近場にゴロリと寝転がった。
「え?どうした?!カイン!」
揺さぶられ、顔を上げる。
「クラピカ、料理は戦争だよ…」
「は?」
そう呟くと、カインはすぐに眠りに落ちた。
「…。仕方ない奴だ…」
ため息を一つ吐いて、クラピカは自分の毛布をカインにかけてやった。
***
「あれ?メンチ、この料理何?」
「ブハラ。それ、食べない方が良いわよ。300番の途中経過の作品だから」
「え?でも、美味しいよー?」
「は?!」
カインが二回目に作った料理を頬張るブハラに、メンチは怪訝な表情を向けた。
「お、い、し、い?」
「う、うん。食べてみなよ」
そう言って皿を差し出したブハラの皿を受け取り、恐る恐る一口頬張った。
「お、美味しい…?!」
もう意味不明だと、メンチは首を振るった。
―あとがき―
久々に題名から内容を考えた!
カインの料理は摩訶不思議。
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