長編 
23

かくれんぼをやると、いつも意地の張り合い。
見つかるまでは絶対に出て来ない。
だから、こういう時には丁度良いわけだ。


青と灰
Part23


「…今の、何や…?」
トサカ不良は驚嘆の声を出し。
「訳分かりませんわ…」
眼鏡男児は顔を青くさせて、そう訴え。
「カイン君は緊張感無いなー」
志摩は苦笑いをしていて。

「これで当分、悪魔達は出てこねーよ。安心しろ」
俺は頭を掻きながら、ため息を吐いた。

「あいつら、どこ行ったんだ?」
奥村燐が首を傾げてそう尋ねるから、“さぁ?”と、俺も首を傾げた。

「さぁ、って…」
「かくれんぼ中だから、分からない」
何となく…その辺にいるのは分かるけどな。

「かくれんぼって…!」

理解できないと、ツインテールの子の表情が物語っていた。

「(説明するの、めんどくさいなぁ…)」
悪魔達の気を紛らわさないと、こいつら全員死んじゃうわけで。
でも、こいつらは俺の体質も何も知らない。

全てを説明する?
この俺が?

…ありえないな。

「俺は、お前らとは生き方が違う。もう関わらないでくれ」

借りていた救急セットの蓋を閉めて、俺は立ち上がった。

このまま帰れるかは謎だけど…まぁ、こいつらも帰れるみたいだし、俺も帰って大丈夫だろう。


「待てや」


ドアに手をかけた瞬間、トサカ不良に呼び止められ、俺は肩越しにトサカ不良を見た。

「俺の名前は勝呂竜二や。覚えとき」

勝呂…か。
まぁ、俺が呼ぶときは…。

「トサカ不良」
「その妙なあだ名で呼ぶんやない!」

別に良いじゃんか。

「この間言ったけど、俺は奥村燐な。燐」
「…奥村燐」
「だから、燐で良いって…」

…定着しちゃったんだが。

「僕は三輪子猫丸言います。よろしゅう」
「…猫か」
「あ、そこだけ取るんですね…」

だって猫なんだろ?

「え?これ自己紹介するの?…私は神木出雲よ」
「ツインテール」
「見た目?!」

名前が小難しいからな。

「で、そこで寝てるのは…杜山しえみな」
「今回の功労者やな」
奥村燐の台詞に、勝呂が言葉を付け足してうんうんと頷いた。

和服少女。
あの木のバリケードを作った子だな。
今は治療を受けて寝てるけど。

「パペット持ってるのが宝。フードを被ってるのは山田や」

「そう。…で?」

自己紹介して、それで何だ?
君は俺に何を求めてるんだよ。

「…。…俺のこと庇ったやろ?」

庇った…?
…あ。キモの時のことか…。

「あの瞬間、一瞬でも奴の気が逸れた。
 …ありがとうな」

………。

「(…なんか今、もの凄い罪悪感に見舞われた…)」
『なんでだよ』

「(だって、俺は邪魔してやろうと思ったんだ)」

俺は関係無いのに、そこにいるのが嫌で…崩してやれば、少しは気が晴れるかなって…。

なのに…。

「(こんな言葉をかけられるなんて…)」

ありがとうなんて…。
そんな言葉…

欲しかったわけじゃないのに。


「…バカらし…」


俺は小さく悪態をついて、さっさと部屋から出た。


…正しくは“逃げ出した”だと、分かっている。


「(俺は弱いな…)」

『あ?人間が非力なのは、仕方ねーだろ』「(…そうか…)」

非力。
確かにその通りだ。

俺は自分自身を支える力も、誰かを受け止める力も…何の力もない。

「(サタン、帰ろうか)」

俺は、非力で弱くてバカらしい存在だけど。

『カインー、チョコが食いてー』
「(お気に入りだな)」

くつりと笑って、帰路を歩き出した。

ここにいる。
今はただ、それだけで。



―あとがき―
やらかしたことを反省。
青主の中で、これは大きな事柄になったようです。

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