長編 
22

つまり。
この合宿とやらは茶番だったと。
そういうことか?


青と灰
Part22


あちこちから出てきた“先生方”の姿に全員が安堵のため息を吐いた。
俺が感じてた人の気配はこの人達か。
で、一人の悪魔は理事長。

「紫煙君だったね。君もすぐに手当てを…」
一人の“先生”に手を差し出され、俺は咄嗟に距離をとった。

「俺に触るな」

「…。まるで野良犬だな」
ため息を吐いて、“先生”は肩を上げ下げした。

「君を傷つけるつもりはないよ。だから…」
「そういう意味じゃない」

壁や床に隠れてはいるものの、まだ悪魔達は大量にいて、そして、いきり立ってる。
下手に触らせれば、この人は死ぬ。


「紫煙カイン君。このような形で会うのは初めてですね☆」
スッと前に出てきた理事長に、俺は目を見開き、そして睨みつけた。

「(いけしゃあしゃあと…)」

「おや。嫌われてしまいましたか★
 しかし、そのままでは手当てができません。あなたの従わせている悪魔を抑えて下さい」
「嫌だ。あんた達は信用出来ない」

悪魔に俺を操らせる様な奴ら、信用出来るか。
「…。我々は、けして君を傷つけない。約束しましょう」

「…」
思わず、目を瞬いた。

なんだ…この人…。
急に真剣な表情に…?

「(サタンー…この人、信じても良いのか??)」
『さぁな。俺様でも何考えてるか分からん奴だ、こいつは』

えー、じゃぁ。


***


「で、や…」

ん?

「なんでお前がここにおんねん!!」

トサカ頭の怒鳴り声におお、と体が傾いた。

「…救急道具借りただけだろ。すぐに帰るよ」

結局、俺は救急道具を借りて自分で手当てしている。
部屋は祓魔師見習いと同じ部屋。

『お前も甘くなってきたなぁ』
「(いや、絶対帰してもらえなかっただろ、あれは)」

俺の答えを聞いた後の理事長の目は、やはりというか笑ってた。
逃げても逃げなくても、面白いって感じの笑み。

逃げても捕まってたと思う。


「カイン君、やったけ?」
ピンク頭がずいっと近づいてきたので、少し身を引いて、小さく頷いた。

「俺は、志摩廉造。よろしゅうな」
「…」

なるほど。こいつ…馬鹿か。

「何や、今…もの凄いけなされとる気ぃする…」

けなしたからな。
…よし。手当て完了。

「カイン君」

は?

ガッと手を掴まれ、志摩は両手で俺の手を握った。


「よろしゅう」


屈託のない、笑顔だった。




『カイン!』

サタンの声にハッとした。

「ストップ!」

俺の叫び声に、全てが止まった。
俺の周りに現れた悪魔達も、志摩に飛び掛かる前に止まってくれた。

「(ま、間に合った…)」

「ビ、ビックリしたわー…!」

いつ移動したのか、トサカ不良の後ろに隠れている志摩を確認し、ホッと息をついた。

「(死んでないな…。良かった)」

「使い魔くらい制御しぃや…。周りに被害が及ぶやないかい」

トサカ不良の呆れ顔を軽く無視し、俺の周りを飛んでいる悪魔達に対して、指を一本立てた。

「かくれんぼやる子はこの指止まれ」

抑揚のない声でそう言うと、周りを警戒していた悪魔達は競って俺の指にタッチしていく。

「よし、始めるぞー。
 1、2、3、4、5、6…」

ここまで言って、周りを見渡せば、一匹の悪魔さえ見当たらなかった。

「これで良いだろ」

「「「「「「「…」」」」」」」


なんか、みんな間抜け面…。






―あとがき―
志摩は、ヘタレだけど男前な気がします。
メフィストの話し方が謎(涙)
京都弁も謎…(涙)
間違っていたらすいません…。

それにしても。
祓魔塾のメンツと、ようやくまとも(?)な会話が出来そうです。




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あきゅろす。
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