長編 
27-4→←5

うぅむ、口を出すタイミング逃した…。


Euphorbia milii
―4→←5―


カインはゴンとクラピカの会話を、死角の壁に背を預けて聞いていた。

けして、盗み聞きではなく、二人への配慮のために。

話の内容は4次試験でのこと。
…ゴンはヒソカから札を一旦は奪えた。
けど、その瞬間にゴンを狙っていた男に札を奪われてしまう。
ヒソカはその男を殺し、その男の札を奪った。
ゴンには自分の札をよこして。
結局のところ、ゴンにはヒソカの札が手元に残った。

ヒソカに仮を作った状態で、ゴンは試験を通過してしまった…。


「いらないって言ったらぶっとばされて、『ボクを殴ることができたら受けとってやる』ってさ」

ヒソカはゴンを自分の元に来るように手を打ったんだ。
ゴンが強くなり、自分と死闘出来る日が来ることを望んでいるから。

「やり返せなかった自分自身が、すごくくやしくて」
そう言って泣き出したゴンの肩をクラピカが優しく叩く。
「私もレオリオも、お前がいたからここまでこれたんだぞ。…本当に感謝してる」
「…オレの方こそ、ありがとう」

目を伏せ、カインは二人の傍から遠ざかった。

良いなぁ。
誰かがいたから、とか。
誰かに感謝する、とか。

そんなこと、一度も考えたことないや。

なぜか少しほっくりした気持ちで歩いていると、艦内にアナウンスが響き渡った。

『これより会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は2階の第1応接室までおこし下さい』

面談…??
ネテロ会長が直々に、ね。
なんか企んでるよな…確実に。

「あ」
「ん?」
前方から現れたメンチは、カインを見るなり声をあげて立ち止まった。
その顔には「しまった」と描いてある。

「メンチさん?どうしました?」
「…なんでも無いわよ」
そう言い切るものの、ちらちらとカインの顔を見る。
「…ねぇ」
「はい?」
「あんた、暇?」
「は?いえ、この後、会長との面談が…」
『301番の方、応接室においでください』

タイミングの良すぎる放送を苦笑いして、カインは「ね?」と首を傾げた。
「…分かったわ。あんた、面談が終わったら、厨房に来なさい。良いわね」

え、問答無用?

「まぁ、大丈夫ですけど…」
「じゃぁ、また後で」
「はい…」

手を上げ、去っていくメンチの背中を見ながら、カインは首を傾げた。

なぜ厨房…?

「…。あ、面談」



***



「失礼します」
カインは、ノックして扉を開けた。

「ほっほ、よく来たの」
「俺、この間も面談しましたよね?」

する意味あるのか?俺。

「ほっほっほっ」

「答える気、全くないだろ」

あ、しまった。敬語抜けた…。

「まぁ、最終試験を望む前に、皆と話しておきたくての」
ネテロの言葉に、カインは目を見開いた。

「次が最終…」

「終わってしまうのは寂しいのぅ」
「…」
そうですね、とは何故か言えなかった。

「…お主が、1番気にしておる受験者は誰じゃ?」

気にしている…

「…99、403、404、405、この4人ですね。特に99番は…成長が楽しみで」
シルバによく似た、俺の甥っ子。

「ふぅむ。では、戦いたくない相手は誰かの?」
「44。変態は好かない」
即答したカインに、ネテロは一つ頷いた。

「うむ。下がってよいぞ」
「じゃ、最終試験、楽しみにしてます」
笑顔で軽く頭を下げたカインは、その後すぐに部屋を出て行った。


「本当に変わったのぅ」

暗殺者ではない、明るい表情、優しい笑顔。
「良い兆候じゃ。光の道を歩くのも、また乙なものじゃぞ。カインよ」

ここにはいないカインに向け、ネテロはほくそ笑んだ。



***


Dear シルバ
聞いたか?次が最終試験だって。
そしたら、きっと、みんなとも道を違える。
シルバはいつでも戻ってこいって言ってくれたけど、俺は当分、家には帰らないつもりだ。

もっと、世界を見てみたい。





―あとがき―
ついに次が最終試験。
あのトーナメント、どの場所に入れるのか、相当悩んでます…。

というわけで一回閑話だよ!(ぉい)

タイトル『4→←5』は、
4次試験と5次試験(最終試験)の間。という意味です。






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あきゅろす。
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