長編 
21

トサカ不良の詠唱終了と共に、キモは一瞬にして灰となった。


青と灰
Part21


「(終わった、のか…)」
目を細め、カインは小さなため息を吐いた。

さて。ここからが問題か。
俺はこれから、何をどうしたら良いか…。
この部屋の外側に至る所に人なり、悪魔の気配は…一匹か。がするし…。
逃げきれる気がしない。

あ、ほらまた一人走ってくるし。

「お前ら!ぶ、無事…?」

走り込んできた奥村燐に、トサカ不良がラリアットを食らわせた。

「(い、痛そう…!)」
『お前の腕も相当だけどな』

…腕?

「(…あ、忘れてたー。……う!…思い出したら、痛くなってきたぞ…!)」
『そりゃあんだけザックリやったらなぁ…』

仕方ないさ…。
あの時はそんな気分だったんだ!
に、してもだ。

「(サタンー、血が止まってくれないんだが…。どうしたら良いんだ?こういうの)」
『俺に聞くな』

サタンが冷たい…。

「カイン!お前それどうした?!」

トサカ不良のラリアットからいつ復活したのか、ずいっと近寄ってきた奥村燐にビクリと肩を揺らした。

「(なんか、顔が近い!!)」

「大丈夫なのかよ?!血が止まってねーぞ?!」

…あー、怪我の事か。


「…どうにかなる」


『「なんねーよ!それは!」』


うぉ…。
サタンと奥村燐でハモるなよ!
ビックリするだろうが!

…本人達、全く気づいてないみたいだけど…!

「とりあえず、離れろ。近い」

唾が飛ぶ距離にいるなって。


ガラッ…


おもむろに開く扉の音に、全員の視線がそこに集まった。

「これは…」
「…雪男…」

奥村燐の声を片耳で聞きながら、見たことのある人物と目があった。

「あ、詐欺師さんだ」

「「「はっ?」」」

…。
しまった。
つい口を挟んでしまった。

「詐欺師って、お前ネイガウス先生になんちゅー口を!」

え?

トサカ不良の言葉に、俺は思わず顔をしかめた。

先生…?

「詐欺師なのにか?」
「詐欺師やないゆーとるやないか!!」
「トサカ不良の言葉は、信憑性が低い」
「誰がトサカ不良じゃ!!俺は優等生に入るわ!」

「「ぶっ!」」

「そこ、笑うんやないっ!!」

奥村燐とピンク頭が吹き出したのを指差して突っ込むトサカ不良に、呆然としてしまう。

世の中、いろいろあるもんだな…。
詐欺師が先生だったり、不良が優等生だったり。

…まぁ、今は良いや。
気になる事があるし…。
先にそっちを解決だな。

「んで?…一体何のために、俺達を化け物に襲わせたんだ?詐欺師先生?」
そう睨みを効かせると、周りの悪魔達が詐欺師先生に敵意を向けた。

「へぶっ!!」

は?
今、何か天井から降ってきたぞ…。

「おや、失敬☆」

奥村燐を平然と踏み潰したまま、かの悪魔はそう宣った。
見た目は人間にしか見えないが、悪魔だと、サタンが言っていたから、まず間違いはない。

さて…名前は何だったか…。

「ハーイ☆訓練生の皆サン、大変お疲れサマでした」
「メ…、メフィスト!?」

あ、そうだ、名前は…メフィスト…?
そんな名前だったか?
まぁ、良いや。
この悪魔は、学園の理事長。

で、俺を祓魔塾に入れたがってる張本人だと思われる人物。

そういえば…。
面識無いのに、なんで悪魔が見える事分かったんだろ?

あ。

「(サタン)」
『何だ?』
「(理事長ってさ、高等な悪魔なんだろ?)」
『あぁ、そうだな』
「(サタンがここにいること、知ってるのか?)」

『…。いや、知らねぇな。知ってるのはアスタロトくらいだろ』

「(アッスだけかー)」

てことは…どっかで見られてたのか?

「(まぁ、拒否しときゃ良いか)」
『メフィストはしつこいぞ。しかも物質界が好きな馬鹿息子だ』
「(ふーん…)」

あ、いつの間にか話が進んでる…。

「なんと!この強化合宿は、候補生認定試験を兼ねたものだったのです!!」


…何の話だ、何の…!




―あとがき―
ネイガウス先生を詐欺師先生と呼ぶとは思いませんでした…。
自由人は相変わらずです。

でも、実は青主…かなりテンション低いと見える。

青主「お前が、過去の話なんて持ってくるからだろうが」

…すいません。





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