長編 
20

青と灰
Part20


「(狐…?)」
ツインテールの子が怒鳴ったのは、二匹の狐に対して。

『ありゃ使い魔だな』
「(使い魔?)」
『人間に使役された悪魔のことだ。自分より強い相手にしか仕えないぜ、基本はな』
「(へー)」
『…興味無いだろ』
「(いやいや)」

ま、実際は無いけどな。
だって俺には関係ないし?

『ちなみに。カインの呼び出した悪魔も、使い魔だからな』
「(ホワッツ?!マジでか!)」

めちゃくちゃ関係あったー!


「(…しかし…。こんな状態でも詠唱を続けてるトサカ不良…。普通に凄いな)」

横目で見やれば、トサカ不良はまだまだ何かをぶつぶつ呟いている。

「(こんなに必死に…)」

何を守ろうというのだろうか。
仲間を?友達を?信念を?
…命を、賭けて?

「(ははっ。
 俺には、全く分からない…)」

…分かりたくもない。

分かる必要なんてない。

だって、俺は…


「(守るものなんて、何一つ持ってないんだから)」


顔を上げれば、キモがトサカ不良の前までたどり着いた瞬間だった。

その光景は…生死の瀬戸際。
あまりにも絶望的な状況。



「止めて…!カインは何もしてないでしょう?!」

これは…

「カインッ!」

…これは…

「逃げなさい、カイン…!」

…これ、は……




…母さんが、父さんに殺された時の…



『カインッ!何やってやがる?!』

サタンの言葉にハッと前を向けば、キモが目前で大手を振っていた。

刹那、パッと明かりがついた。

光が苦手だったのか、キモは苦しみもがいている。

「(俺、は…)」

いつ移動したのか、俺はトサカ不良の前で両手を広げていた。

「(…盾に…)」

トサカ不良を庇っている、状態。

「(なんで…)」

『カインッ!良いから、とっとと退け!』

サタン?何をそんなに…。

『お前、自分の体質忘れたってのか?!』

体質…?

ハッと後ろを、正確にはトサカ不良の背後を肩越しに見やった。


そこには、大量の悪魔が…


“俺が気にかけた人間は、殺される”


俺は静かに…歩きだした。
トサカ不良の横をすり抜け、自分のさっきまでの立ち位置に戻る。


「…ただの、気まぐれだよ…」

悪魔達に呟いた一言。
これで悪魔達は彼らを殺さないだろう。


『気まぐれ、な…』

「(サタン。…俺、無意識だった。無意識だったんだよ…)」

俺を殺そうとした父さん。
俺を守ろうと庇った母さん。

全部、忘れてたはずなのに。

どうして、こんな鮮明に…思い出した?

どうして、母さんと同じ行動をした?

どうして、俺は今、こんなにも混乱している?

「(くそ、くそ…)」

…しっかりしろ、カイン。

俺が誰かを守ったら、それで俺が死んだら…。
俺のせいで暴走した悪魔達を、誰が止めるんだ。

そうだ…。

だから…俺は…


1人で生きていくしかないんだ。


「(サタン。止めてくれて、ありがとう…)」

『ふん…』

サタンって、やっぱツンデレ属性?


「(…さぁて…。クライマックスだな)」

俺は腕を組んで、トサカ不良達に目を向けた。




―あとがき―
私が本来考えていた行動をとらせてみました。
久しぶりに青主を振り回した管理人です!

しかし…。青主が不服そうで困ります。
青主「…(`-´)」

たまにはシリアスなのも良いじゃんかー!



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あきゅろす。
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