長編 
23-質の良い卵


ちょっと様子を見たかったんだ。


Euphorbia milii
―質の良い卵―


「やぁ◇君から近づいてきてくれるなんてね◆」

ヒソカの射程圏内にわざわざ入って行った俺が悪いのは、よく分かってる。
しかし…。

「無視してくれても、良いんじゃないか…?」
つい口走った俺に、罪はないと思う。

「君が近寄ってきたからだろう?◇」

そりゃそうだが。

「お前に関わりたかったわけじゃないし」

ゴンのこと気になってたし、ヒソカの様子見にちょうど良いか。くらいにしか考えてなかった。
すぐ、立ち去ろうと思ってたのに…。

にしても。
ヒソカ、動く気0じゃん。

蝶々に囲まれて、木にもたれ掛かって。
そこから、ただこっちを見上げてるだけって。

…声かけた意味はなんだよー。

「逃げないのかい?◆」
「ん?まぁ、暇つぶし程度に話し相手になってやっても良い」
時間はまだまだあるからな。

俺がすたっとヒソカの傍に下り立ち、そこに座りこむと、ヒソカは珍しく目を瞬かせ、そして笑い出した。

「クックックッ…◇君は本当に面白いねぇ★」

「お気に召したようで。
 …で?ヒソカ、プレートは?6点集めたのか?」
反応があれば、ゴンが何かした後ってことになるが。

「ううん。まだ誰とも戦ってもいないからね★僕のプレートしかないよ◆」
「ふーん」

あ、俺の目的終了した。

「カインは?集まったのかい?◇」

「俺?俺は自分のと、俺を狙ってた奴のプレート、あと拾ったので計5点」

「僕がターゲットじゃないのかい?◆」

は?

「なんで?」
「僕に近づいてきたから★」
あぁ…。

「…近づいたんじゃなくて、ただ突っ切りたかっただけだから」
「残念◆」
「まぁ、ヒソカがターゲットだったら、誰でも良いから3人倒すな。ヒソカには絶対会わないようにして」
ヒソカと戦うなんて、命がいくつあっても足りない。

「酷いなぁ★」

心にもないことを。
俺の方が弱いって分かってるから、まだ戦うつもりは無いんだろ?
いつかはって願望があろうとも。

…ハンター試験って、そういう意味じゃ“質の良い卵が揃う場所”か。

「ヒソカは何のために受けたんだ?」
「ん?◇」
「ハンター試験だよ。何か目的があったから受けたんじゃないのか?」
ヒソカがハンターを志すとか、ちょっと違う気がするし。

「うーん◆人を殺しても免責になることが多いから、かな★」
「それだけのために?」

嘘だろ。
誰が殺したか分からないようにする技術だって持っているだろうに。

「クックックッ…☆
 それだけ、ね◇カインはやっぱりこっち側だねぇ★」
「はぁ?」
「(人殺しを“それだけ”と称したのは、君がこちら側であるという証だよ◆出来ることなら…今、戦いたいけど◇
 あともうちょっと、果実が熟すまで…★)」

…ゾクッ…。

なんか今…凄い悪寒が…。

「本当の理由だっけ?◆」
「え?…あぁ、うん」
うーん、と顎に手を当てたヒソカは珍しく真面目な顔をしていた。

こうやって見るとピエロメイクが嘆かわしい…。

いや、別にアレンを非難したわけじゃないんだけど。
アレンのピエロは綺麗だと思ったさ。

まぁ、最初はビビったけどな。
担当T氏の気持ちがよく分かるよ…。


「僕、去年も受けたんだけどね◇
 つまらなくて、試験官を半殺しにしたんだ★」
「…はぁ…?」
「今年は受けるつもり、あんまりなかったんだけど◆
 でも、知り合いが受けるっていうから、もう一回受けようかなぁ…って★」

「え?ただの成り行き?」

俺とあんまり変わらないじゃん。
…ヒソカとお揃いとか嫌だ…。

「そうだねぇ★でも、カインやゴンみたいな子と知り合えたし◆
 今年は受けて良かったよ◇」

うわ、嬉しくない。

「つか、ヒソカの理由って…簡単に言えば、いつか戦う相手の品定め?」
「クックックッ◇せっかくオブラートに包んだのに◆」

え、今の優しさだったのか?!

「カインの言う通り…☆
 僕は青い果実を見つけに来たんだよ◆」

うげー。合ってんじゃん。

「俺は戦うつもり無いからな。死闘とか好きじゃない」

俺の専門は殺し屋で、戦闘狂じゃないし。
一応…足洗ったわけだし。

「いつかは手合わせ願いたいなぁ◆」
「嫌」
「即答…◇クックックッ…寂しいねぇ◆」

諦めてない…よな…。

あ、やべ。
…誰か来る。

「…じゃ、俺はそろそろ行くよ」
「なんだ、行っちゃうのかい?◇」
「ん。俺はあと1点集めなきゃだし。じゃ」

軽く手を上げて、カインはすぐにその場を後にした。

さて。

カインはヒソカが見えない位置まで来ると、気配を消して木の上に上った。
んん?
ヒソカに向かってくるから…ゴンかと思ったら違うじゃん。


「背中血まみれ…。あれはもうダメだな」

ヒソカに…いや、イルミにプレート取られて終わりだな。

イルミの気配をじんわりと感じながら、ため息を吐く。

ゴン…大丈夫かなぁ…。
まずヒソカに辿り着けるかが心配だよ…。

…あぁ。でも、ドレッドヘアーはちょっと遠くにいるじゃん。
向かって来てるのかな?

ふふ。
ゴン、頑張れよ。



Dear シルバ
殺人狂とちょっと話してみたんだが。
うん、身の危険を感じたよ…。

あぁ、そうだ。
前に話したあの子が立ち向かう相手。
あんなのに挑むあの子に、本気でエールを贈る。
殺人狂はあの子のことを気に入ってるからさ、殺されることはないだろうけど…。

…ふふ…、俺がこんな心配をするなんて…。
らしくない、か。




―あとがき―
ヒソカの理由は持論です。
免責のためだけに動く人じゃない!と。

そして時系列から分かるように、ゴンにバッチリ見られてますね!



作中使用↓
Dグレ



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