長編 
22-また一点

少しボーと空を眺めていたんだが。

Euphorbia milii
―また1点―


「ん?」

なんか今…木の隙間に…。
手を伸ばして取り上げたこれは…。

「プレート?」

362と書かれたプレート。

隠すように置かれたこれを見つけてしまった俺は…。

「いや、うん。見つけられるところに置くのが悪いよな。
 もらっちゃおー」

というわけで、5点目ゲットー。

ポケットに押し込んで、と。
うん、順調順調。


「あ!」

「え?」


振り返れば、三兄弟の一人…名前が出て来ないが…次男坊に捕まった男があんぐりと口を開けていた。


…。
362番がこの男
→捕まってるということは、次男坊のターゲットが362番
→362番は事前にプレートを隠していた
→戦いに破れ、プレートを渡す約束済み
→隠した場所にいた俺
→俺、総攻撃される?

この間、僅か0.235秒。


「あれ?あんた…」
目を見開いた次男坊に、軽く心の中で謝る。

悪いな。

「がっ!」
「あっ!」

背後に回り込み、二人の首に手刀を入れた。

まぁ、一日くらいで起きるように、軽くしといたからさ。

「あ、プレート…」

次男坊、持ってるよな…。
…んー…。
さすがに三兄弟から直に奪うのは気が引けるかなぁ…。
アモリ良い奴だったし…。


よし。

じゃ、頑張れよー。次男坊。


カインはまた地面を蹴って、森に消えた。


***



男はカインから数十キロ離れた場所にいた。
持っている携帯を開き、よく知る人物にカーソルを合わせ、通話ボタンを押す。

PiPiPi…

『…俺だ』
「あ、親父?」
『イルミ、試験中じゃないのか?』
電話の向こうの父親は不思議そうな声を上げた。
「うん。ちょっと気になる事があってね」
『?どうした』
目の前にいる訳でもないのに、目に力が篭る。
「親父なら知ってるかと思って。

 《カイン》っていう暗殺者。

 本名か偽名かは分からない。もう足は洗ったらしい。
 …キルに接触してる奴なんだけど。どうも気になるんだよね」

『…』

いくら待てども返答はない。

「……。………親父?」
珍しい出来事に、イルミは眉を寄せた。

『くくく…。大丈夫だ。あいつがキルに何かすることはない。カインに任しておけ』
「カインのこと、知ってるんだね」
この父が誰かを信じるなんて、珍しい。
つまり、それだけ、カインを知っているということ。

『…イルミ、カインには手を出すなよ』
「…俺より強いってこと?」
『いや…実力はそう変わらないだろ』
「じゃぁ、何で?」
『ふっ…帰ってきたらな』
「…」
何故か楽しそうな父に、イルミは訝しげに目を細めた。

『イルミ、もう一度言う。カインには、手を出すな』
「…分かった」


Pi…


…親父は何を知っている?

―カインには手を出すな―

危険な相手だから?
違う。
味方だから?
…違う。

なら…


「…身内、だから?」


ヒュン

空を切る音に、反射的に一歩、足をずらすことで銃弾を避けた。
弾の発射された方を見上げれば、ライフルを構えた女が一人、物陰からこちらを伺っている。

…ムカつく。

静かな殺意を乗せて、イルミは跳んだ。



………。
絶命した女を見下ろしながら、イルミは首を捻った。


「こいつ、誰だったんだろ?
まぁ、良いか」


…カイン。
君は、ゾルディックなのかな?




―あとがき―
イルミが気づいたー!
結構真面目(?)な感じでしたね(笑)




作中使用↓
阿佐ヶ谷Zippy
秒数のとこです(笑)
恋に落ちたわけではないのですが…数字と言ったらコレか。と。
分からない方はごめんなさい。




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