長編 
21-疑心と信頼

円で辺りを探る。
あ、二人で行動しているのは、クラピカとレオリオかな?

「行ってみるか」


Euphorbia milii
―疑心と信頼―


あぁ、やっぱり二人だった。

「クラピカ、レオリオ」
「「!!」」
背後から声をかければ、驚いて二人は臨戦体制をとった。

「「…カイン?」」

怪訝そうにこちらを伺う二人に、ふふ、と笑う。
「うん、カインだよ。元気?」
「“元気?”じゃねーよ!驚かすな!」

えー?声かけたのにー。

「どうしてここに?」
クラピカの問いに少しばかし警戒が見え、苦笑いをしてしまう。
俺のターゲットは二人じゃないんだけどなぁ…。

「いや、見かけたから、声かけたんだけど…。二人は6点集まった?」
少しの嘘と笑顔を含めて問えば、クラピカは少し安心したのか、一つ頷いた。
「私はな。レオリオはまだだ」
「そう…。レオリオのターゲットは?」
「246番、ポンズっていう女だ」

246か…。

「残念…。俺の持ってる札と違う」
「?」
「俺の事を狙ってた人の札、84番だったから」
そう言って札を見せると、二人はキョトンと目を丸くした。
「カインは6点揃ったのか?」
「え?まだだけど」
まだ4点分しかないね。

「もしも番号が合ってたらどうするつもりだったんだ?」
「あげるよ?」

「「…」」

え、何、その目。

「人の心配する前に、自分のプレートを集めろよ…」
レオリオのため息混じりの言葉に、あぁ、と納得してしまう。

「ふふ、心配してくれてありがとう。
 だけど、心配はいらないよ。俺は強いから」

慢心ではなく確信。
いざとなれば、集め終わっている受験者を狩れば良いだけの話だ。

「で?このプレートいる?」

欲しいならあげるけど。

「んー…。…いや、悪いが受け取れねーな。俺は俺の力で、この試験を通過しなくちゃならねぇ」

「そう…」

俺としては運も実力のうち。って気がするんだけど…。
まぁ、レオリオがそう決めてしまったのなら、好きなようにやれば良いさ。

「じゃぁ、俺はもう行こうかな。俺もあと2点集めなきゃだし」

二人に背を向け、軽く手を振る。

「次の試験で会おう。じゃぁな」
「あぁ」
「おう」


さて。次はどこに行こうか。


あれ?
そういや、クラピカには俺のターゲット教えなかったっけ?

ま…いっか。


***


走り去ったカインの背を見送って、深々と二人はため息を吐いた。

「嵐みたいな奴だな」
「あぁ…」
レオリオの感想に、クラピカも同意を示す。

「…少し警戒してしまった…」
眉尻を落としたクラピカに、レオリオはカインが来る直前の会話を思い出した。


『トンパの野郎、人の事騙してるから、薬なんて盛られたんだろうな』
『あぁ…』
『クラピカ?どうした?』
『カインが…試験が始まる前に意味深な発言をしていてな…』
『意味深?』
『あぁ。トンパに薬を盛ったのは、おそらくカインだ』
『!…マジでか…』
『トンパに気づかれずに、4次試験に入る前に薬を盛る。そういう技術…意思をカインは持っている…』

妙な沈黙が二人を包んだ瞬間、

『クラピカ、レオリオ』

『『!!』』

カインは現れた。


「タイミング悪ぃよなー、あいつ」
「全くだ」

ため息を深々と吐き、カインとは反対側に歩を進める。

「カインって、敵には容赦なくってタイプなのかもな」
「そうだな。身内には相当甘いようだが」

4次試験が始まる前に、弟にメールを送っていたカインの顔は、甘く優しいものだった。

「だとしたら、俺達も一応、カインの内側にいるって事か」
無償でプレートを渡そうとしたカインの姿が目に浮かび、クラピカはくすりと笑った。

「あぁ、そのようだな」

本人は気づいているのかいないのかは分からないが。
あの時のカインは、慈愛に満ちた顔をしていたのだから。

「4次試験…通過しないと、格好悪いな」
あれだけの大見えを切ったのだからと、頭を掻いたレオリオに一つ頷いた。

「必ず、合格しよう」
「おう!」




―あとがき―
トンパへしたことが、二人の伏線になろうとは…。

書き上げてから、
『なんかクラピカが警戒してるなぁー』
と思って読み返したら、『あ、トンパのせいか!』と気づきました。←

最後の二人の会話が付け足しの形なのはそのためです(笑)


[*前のお話へ][次のお話へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!