長編 
3-第一次試験


「うあぁぁぁぁ!」
「…。……ん?」
悲鳴に対し、随分と遅く反応を示したカインは、両腕を上げて大きなあくびをした。



Euphorbia milii
―第一試験―



「一体何の騒ぎだ…?」
不機嫌顔でぼそりと呟いたカインは、立ち上がった。

にしても…中年太りの集団に追い掛けられる夢を見るなんて…最悪だ。
くっそぉ。あいつら、なんであんなに素早かったんだっ…。

夢での事にイライラしながら人の合間を通り、騒ぎの中心に近寄る。
ようやく見えたピエロっぽい男と腕の無い男の姿に、カインは首を傾げた。

「俺の腕がぁぁ!」
「人にぶつかったら謝らなきゃね◆」

殺人鬼…。
しかも、かなり危険なタイプの。
…いや…まぁ、俺も似たようなもんか…。

あそこまで壊れちゃいないけど。

無表情にその場を見つめていたカインは、ふと、当事者であるピエロと目が合った。

…マズイ…かも?

ニタリと笑い、ゆっくりと一直線にカインに向かって来るピエロ。
カインは瞬時に数歩後ずさり、人影に隠れた。
そして、一般人にも分かるくらい唐突に気配を消し、地面を蹴った。


「うわ、何だ?」
「今、何かいたよな?」

周りが驚いている中、ピエロはクククと笑う。

「う〜ん、逃げられちゃった◆」

小声でそう呟いたピエロは、くるりと方向を変え、去っていった。


「…」
その様子を遠くの人混みの中で見ていたカインは、ふぅ、とため息を吐いた。
少しずつ気配を戻しながら、壁に背をつける。

「アブネー奴…」
俺に気づいた瞬間、殺気が溢れ出したぞ…。
うちの一家の方がマシ、だな。
…だよな?



「トンパさんっ、このジュース悪くなってるよ!味が変」

ん…?
…子供?

「悪かった!」

あ、メタボが土下座してる。
ぷぷ。良い気味。(黒)

土下座されてるのは、黒髪の少年と金髪のお姉さん、それからオッサン…妙な3人組だな。

うん、面白いかも。

そんな興味津々な視線を送っていると、それに気づいたらしい黒髪の子と目が合い、カインはごまかすように微笑んだ。

野性の感…?
一応一般人には気づかれないようにしてたんだけどなぁ。

カインはバツが悪そうに頭を掻いた。



ジリリリリリリリリリ!!



ようやく、始まり、か…。


「ただ今をもちまして受付時間を終了いたします」
英国紳士風のダンディな男は、手に持ったベルを止め、一言そう言い放った。


ん?
誰か見てる…?

微かに視線を感じてキョロキョロと辺りを見回す。

…イルミ…じゃなくて、ギタラクル?
なんで、俺を見る?

やめろ

俺は人の視線に慣れてないんだ。
ピエロのせいでピリピリしてんだから、下手すっとお前を殺すぜ?

殺気を含めた視線を返せば、ギタラクルは微かに目を細め、時期に視線を外した。


全く…。
って。何でみんな走ってんの?!


周りが既に走り出している事に気づいたカインは、今更ながら慌てて走り出した。

「二次試験会場まで私に着いてくること。それが一次試験でございます」

かなり前方から、先ほどの英国紳士の声が聞こえ、カインはようやく事態を把握した。


つまり、どんな手段を用いてもあの人について行けば良い。と。


オーケー、オーケー。
追いかけっこは得意分野ですよ。
まぁ、追いついたら、相手は大体死ぬんだけどね。


ニタリと微笑み、カインは速度を速めた。



Dear シルバ
ハンター試験が始まったよ。
最初の課題はマラソンみたい。
ふふ、俺が追いついても殺さなかったのって、シルバくらいだよな。(親父には追いつけなかったし)

とりあえず、ほどほど頑張るよ。









―あとがき―
ヒソカの殺気に当てられて、殺戮本能がチラホラ。
落ち着け、カイン。

クラピカを女性だと思ってるのを早く解いてあげなくては…。

次こそゴン達と引き合わすぞ。




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あきゅろす。
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