長編 
20-狩られる者

この島、人居すぎ…。
受験生×2ってくらいの人数がいて、誰が誰だかわからん。
俺にも死神の力があれば、その人の霊圧でどこにいるのか一発なのに…。


Euphorbia milii
―狩られる者―


木の幹に座って、円に集中しているカインは首を傾げた。

他の受験生の後ろに、必ず一人、着いて行ってるんだよなぁ…。
俺の後ろには誰もいないけど。
何の仕打ちだろうか、これは。

「うーむ。とりあえず誰かに会いに行こうか」
俺はあと二点。
知らない奴がいたら狩ろう。

カインは腰を上げて地を蹴った。


***


あ。

「ゴン」
「わっ!!え?カイン?」
酷く驚いた様子のゴンに、隙だらけだなぁーと笑ってしまう。

「何してるの?」
竿を振り回して。

「特訓だよ!」
「特訓?」
「ヒソカのプレートを取るために!」

!!
諦めてなかったのか…。
まぁ、そうだよなぁ。ゴンだし。

「釣竿を使うのか?」
「今の俺に可能性があるとしたら、コレかなぁって」

…釣竿の針でプレートを奪い取るつもりか。

中々面白い手法だね。
成功率は、まぁ…限りなく低い。

けど…。

確かに、ゴンの可能性の中では、最も高いものだな。

「俺が、的の代わりになろうか?」
「え?」
「ヒソカは俺より強いけど、魚相手にするよりかは実践的じゃないか?」
「んー」
腕を組んで考えるゴンに、おや?と首を傾げる。
「何か秘策があるのか?」
「ヒソカが、誰かを襲う瞬間を狙おうと思ってるんだ」

――獲物を狩る瞬間は酷く無防備だ。如何なる強者であろうと、その時には一部の隙が出る――

結構前に親父が言ってたな。
その隙を一秒でも出さないように努力しろって。

「ゴン。一瞬の隙には、その人間の癖もある。よく見極めろ。勝負は一度しかやってこないからな」
「…うん!」

一度しかない、その時を…。
まぁ、ゴンなら…仕出かすかもな。

「じゃぁ、俺はもう行く」

結局、俺に出来るのは…。

「…ゴン、頑張れよ」

君を応援することだけ。

「うん!ありがとう!カイン!」

ヒソカの札を持った君と、次の試験で会おう。



***



ゴンには分からない程に遠ざかったあと、気配を消し、もう一度ゴンがいた方に近づく。
ドレッドヘアーの男を目視し、男の真後ろに歩みを進めた。

「……あの子を殺したら、俺がお前を殺すからな」

男の背中に刀の柄を突き付け、カインは言い放った。

ゴンを狙う僅かな殺気。
胸に番号札は無いが、おそらく受験者。

…この男は、ゴンを狩る者だ。

「…今、俺のことは狩らないのか?ここまでしていながら」
男の言葉は、確かにその通りだった。
でも。

「殺さないならそれで良い。あの子には良い教訓になる」

人を狩れば、狩られる。
人を殺せば、殺される。

因果応報。

何かを成せば、必ず何かが返ってくる。

悪いことも良いことも。

「あんたは、甘いな」
「ふふ、そうでもないさ」

ゴンが死んでも、俺はただ通り過ぎるだけ。
親子でも兄弟でもない、赤の他人。

剣の柄を彼の背から離し、一歩下がる。

「じゃ。背中に気をつけて」
「…やっぱり、あんたは甘い」

そんな言葉に苦笑して、俺はその場を後にした。



Dear ゴン
お前の背中を狙うやつがいる。
俺は何もしない。
ハンターを目指すなら、必ず通る道だと思うから。



―あとがき―
ゴンと接触。
E主(Euphorbia milii主人公の略)、ゴンのことは結構気に入ってるよね。

次は誰のところに行くのかな。




↓作中使用
脱色



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