長編 
17

お。目が慣れてきた。


青と灰
Part17


「あの先生、電気まで消していったんか?」
「いや、そりゃさすがに…」

暗闇の中で交わされる声に、どうしようかと上を向く。

『上にいるな』
「(ん。何かいる。…人と悪魔。悪魔は人型だな)」
モヤのように見える影に、視線を送ったまま、サタンに答える。
サタンは少し黙っていたが、小さなため息が耳を掠めた。

『…お前、どんどん進化していくな』
「(…何が?)」

意味が分からず首を傾げたところで、隣にパッと明かりが灯った。
携帯という文明の利器のおかげで。

しかしまぁ。

「(俺は、携帯…持ってないしな…)」

連絡とる相手がいねぇ。

というわけで、俺だけ明かりがない。

「(この暗闇を利用して、どうにか逃げ出せないかなぁー)」
『カイン…覚悟決めたんじゃないのかよ』
「(え?あー、うん。…まぁ、逃げ出せるなら、逃げたいし)」

『…』

「(う……優柔不断で悪い…。だから、無言にならないでくれ)」
ヒシヒシと痛い…。

「(ん?)」

前方を歩きはじめたピンク頭に、視線をよこす。

なんかニタニタしてるー。
あれか、この暗闇に乗じて、悪事でも働くつもりか!

「俺こういうハプニングわくわくする性質なんやよ、リアル肝だめし…」

ただの肝試し好きだったー!!

『カイン、肝だめしって?』
「(…簡単に言えば、度胸試し)」
言葉にするって難しいな、おい。
「(とりあえず、ピンク頭を見てたらわかるよ。多分)」
扉の向こうに、何かいるからさ。

ガチャ…とピンク頭が扉を開けると、醜い形の悪魔がすぐそこに見えた。

「…」

バタン

「…なんやろ目ぇ悪なったかな」

「現実や現実!!」

トサカ頭、良いツッコミだ。

「(若干違うけど、今みたいな感じが肝試しだな)」
『よく分からん…』

サタンが珍しく神妙だ。
ちょっとレア。

バギャッ!!

「(うわ、威勢良いな。しかもキモい)」

扉を破壊して入ってきた悪魔に、臨戦体制をとれたのは、誰ひとりとしていない。

そうしている間に、キモい悪魔…(長ぇな)…通称キモ、がフッと腹を膨らませる。

「(げっ!なんか吐いた!)」

そう思った瞬間には、“何か”が俺達に降り注がれていた。

掛かったのは、俺以外。

『ギャハハ!分かってるじゃねーか』
「(この子達大丈夫なのか?)」
『悪魔に悪魔の体液なんざ、そうそう効かねぇよ』

俺に掛からなかったのは、どっから出てきたのか、悪魔達が俺の周りに現れて、代わりに体液を全てかぶってくれたからだ。

地面に沈んでいく悪魔達を心配しつつ、キモを見遣る。

「(キモって、危険な相手なのか?)」
『あぁ?なんでだ?』
「(あの子達が俺を守ったから)」
俺には魔障なんて効かないし、悪魔の攻撃だって、まともに喰らうことなんてない。
なのに…

『悪魔達は、カインが嫌ってるものから、お前を守るだけだ』

俺が嫌ってるもの…?

……あ、腐った奴とか?

うんうん!確かに嫌いだ!
悪魔達!ありがとう!


「ニーちゃん!ウナウナくん出せる?!」
「ニーッ、ニ゛ー!!」

左横から聞こえた声に、視線をずらせば、植物のような小さな悪魔が、木の枝を腹から出したところだった。

なんだありゃ。
木のバリケードか?
ぉお。あの悪魔近寄ってこないぜ。

しかし…ウナウナ君、ニーちゃん、ねぇ。
…あの子、イコール、不思議系少女?

「ありがとねニーちゃん。…あれ?くらくらする…」
「あ、熱い…」

「(…は?なに?)」

グッタリとした見習い君達は、その場に膝をついた。

無事に立っているのは、俺と奥村燐だけ。


…何フラグだよ、これ。



―あとがき―
ついにこの時が!
まだまだ核心には触れてくれない青主に、管理人はヒヤヒヤしております。
早く会話せい!





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