長編 
16

「では、僕は今から三時間ほど小さな任務で外します。ですが、昨日の屍の件もあるので、念のためこの寮全ての外に繋がる出入口に施錠し強力な魔除けを施しておきます」

は…?


青と灰
Part16


施錠?魔除け?
…出口、塞がれた?

「施錠って…俺ら外にどうやって出るんスか」
「出る必要はない。僕が戻るまで三時間、皆で仲良く頭を冷やしてください」
ニッコリと笑い、新入生代表くんは部屋を出て行った。

「三時間!?鬼か…!」

ピンク頭の言葉はまさしくその通りだろう。
三時間も正座は、俺だってつらい。

「もう限界や…。お前とあの先生、ほんま血ィつなごうとるんか」
「ほ、本当はいい奴なんだ…きっとそうだ!」

いやいやいや。
新入生代表くんが本当は良い奴とか知らんけどな。

つーか…

「お前ら…何したんだ?」
「!」

トサカ頭くんよ…俺が声をかけただけで、そんなに驚かなくてもよくないか?

「あー…あそこにおる女が、ケンカ吹っ掛けてきたんや」
と、ツインテールの女の子を指差せば、その子はトサカ頭に食ってかかる。
「何よ!私のせいだって言うの?!」
「それ以外に何があるんや?!」
うわ…。
幼稚園か、ここは。
なるほどなぁ、こりゃ怒られるわ…。

言い争いを始めた二人を横目に、軽くため息を吐く。
視線を下に落とせば、膝の上にいるバリヨンと目があった。

何度見ても、ぶさいくだな。
でも、こんな感じのおもちゃ、どっかで…。

「(あ、起き上がり小法師か)」
『起き上がりこぼ…??』
「(起き上がり小法師。絶対に倒れない昔のおもちゃだよ)」
『ほー』

バリヨンを膝から床に移動させ、ツンツンと突っついてみると、グラグラ揺れて倒れてしまった。

「(ありゃ?起き上がらない…)」

バリヨンを再び立たせて、また突っつく。

『まぁ、所詮石だからな…』

あ、また倒れた。
再挑戦ー。

「(石か…。石という割には軽いけど。素材が軽石とか?)」
『そう感じるのはお前だけだ』

あ、また倒れた。
もう1回…「って、何しとんのや?!お前は!!」

トサカ頭の怒声に思わず手を離したら、バリヨンはまたゴロンと倒れてしまった。

「起き上がり小法師的な感じかと」
「何の話しや」

大まじめに解答出したのに…。
仕方ない的なため息はちょっと傷つくよ。

「それにお前…。バリヨンを膝から離すの早すぎや」
「個人の勝手だろ。それに、そんな軽石、どうってことないし」
「あぁ?軽石やと?…あと20分くらい乗せとけや。どんどん重ぅなるで?」

転がっていたバリヨンをトサカ頭くんが膝に乗せてきた。
しかし、まぁ…ほとんど重みを感じないんだけど。

『そいつも悪魔だからなぁ』
「(え?なに?どういうこと?)」
サタンの言葉に首を捻る。

『重くなっていくのは悪魔の性質だ。カインには効かねぇよ』

「(あー。なるほど)」

納得納得。
俺にバリヨンの能力は効かないわけだ。

「(なぁ、サタン?)」
『あ?』
「(見習いくん達、死ぬかな?)」
『なんでだ?』
「(事務的な会話じゃなかったから)」
いつもなら、燃やされるか食い殺されるかしてる頃合いだ。

『さぁな?悪魔は自由だ、カインが考えるほど律儀じゃねぇよ』
「(そっか)」

悪魔達の姿も見えないし、今のところ大丈夫かな。


………

「「「!!」」」

は?!
電気が…?!

急に消えた電気に、辺りをキョロキョロと見渡すが、真っ暗で何も見えない。

「あだっ、ちょ、どこ」

「ぎゃぁああ!!バリヨンが足にぃぃいい!!」

「何だ!?」


「(…マヌケだ…)」
左側から、見習いくん達のパニックが伝わってきて、逆に平常心を取り戻せた。


…さてと。
これは一体どういう仕打ちだ…?





―あとがき―
まだまだ合宿は続きます。

何人か予想されていた方がいましたが。
素晴らしい!ご明答です!
主人公にバリヨンは効きません!(笑)



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