長編 
18-悪戯

そういえば、レオリオは誰がターゲットだったんだろう?


Euphorbia milii
―悪戯―


あと少しでゼビル島に到着する。

廊下の壁に背を預けながら、携帯に文章を打ち込んでいく。
「順調に合格してるよ。っと」
これでオッケー。

「弟に報告か?」
横から聞こえた声に、視線だけを向ければ、見知った顔。
「クラピカ…。うん、そう。無事であることを伝えないと、多分心配するから」
「本当に弟と仲が良いのだな」
「二人しかいない兄弟だからね」
「心配してくれる家族がいるのは、良いことだ」
「…うん」
そうか…。
クラピカには、もう誰もいないのか。
心配してくれる家族も兄弟も。

でもさ。

「クラピカ。俺はクラピカには、幸せになって欲しいよ」

復讐しても、多分何も変わらない。
その先に、幸せを描けていない限りはね。

「幸せになって、笑っていてほしい」
「…。急にどうしたんだ?」
「伝えられる内に、伝えときたかっただけだよ」
ふふ、と笑えば、クラピカは瞬きを繰り返した後、優しく微笑んだ。

「…そうか。ありがとう…」

そうやって、笑って生きていけば良い。

「カインも幸せになれ」
「ふふ。ありがとう」

クラピカ、俺は今、十分幸せなんだよ?

「ちなみに俺のターゲットは80番。クラピカじゃないから安心してくれ」
「私もだ。16番、トンパだ」
「なーんだ。楽勝だな」
「見つかればな」

あ。
そうだ…良いこと思いついた。

「…うん。勝機を見出だしてから、仕掛ければ大丈夫さ。相手がうずくまった時とかね」
「?」
「じゃ、お互い頑張ろう」
「あぁ…?」

未だ疑問詞を浮かべているクラピカに手を振り、“良い事”を実行するために医務室に寄った後、一室に篭った。

ニヤニヤと作業するカインに近づく者は誰もいない。
むしろ、いなくて正解である。
今近づけば、実験台にされることは間違いないのだから。

「出来た」

出来上がったカプセル2錠を手の内にしまい、立ち上がった。

受験生達がいる部屋を、一つ一つ確認していく。

いないなぁ…
せっかく捜してやってるんだから、出てこいよな…。

キョロキョロと辺りを見回していると、近づいてくる気配に、内心ニヤリと笑う。

「カイン、だったよな。誰か捜してるのか?」
「あぁ、まぁね」

いた。
16番トンパ。俺が嫌いな中年メタボ。

「実は俺、ターゲットの番号が誰か分からなくてさ」
「なるほどな。だけど、札なら、みんな隠しちまってるだろう」
「そうなんだよ。困っちゃって」
あははと、わざとらしく笑っている間に、常人には見えない速さで手中のカプセルをトンパの口に突っ込んだ。

ごくん。

よし。飲んだな。

「ん??」

違和感を感じたのか、喉に手を当てるトンパに背を向ける。

「ま。もう始まるし、自分でどうにかするから、大丈夫だよ」

と、捨て台詞を吐いて、さっさとその場を後にした。


『受験生の皆様にお知らせいたします。まもなくゼビル島に到着いたします。皆様、甲板に起こし下さい』

船内に流れた放送に、カインは満足げに微笑んだ。

「ふふ。これで、あいつが万全の状態で試験に望む事はないな」

トンパに飲ませたカプセルの中身は、強力下剤入りのジュース。
第1次試験の時、トンパが渡したジュースだ。

自分の罠に自分で嵌まればいい。

今のカインは、黒かった。

ふふ、効くのは試験が始まってからだな。




Dearシルバ
嫌いな奴に退場してもらうことにした。
ま、すぐだと知り合いが困るだろうから、試験始まってから効くように、時間とか色々調整してだけど。

ふふ。これで気分が軽くなった。




―あとがき―
管理人…実はトンパのこと、結構嫌いだったんだもん。
原作では出来ない悪戯をしてみました。

自分の毒で苦しめばいい(悪笑)



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