長編 
15

デジャヴュ…
一度も経験したことがないのに、どこかで経験したことがあるように感じること。

…。
あの出来事は無かったことにしてたんだよ。俺の中では。

と、脳内辞書に向かって反論してみる。


青と灰
Part15


「(サタン…サタンサタンサタン!!)」
『うるせーぞ、カイン』

「(だって、だって!なんで、この人達がいるわけ?!)」
目の前には笑顔の新入生代表くん。
その後ろには変な石を乗せられているエクソシスト見習いが数人見え、血の気が引いていく。

サタン、謀っただろ!絶対謀っただろ?!

『いやーまぁ、なんだ。面白そうだったからな』

「(サタンの裏切り者ー!!)」

脳内会話でどんなに騒いでも、顔には出していないことは褒めて欲しい。

「紫煙君、中へどうぞ」

新入生代表くんが扉を開け放ち、中へと手を向ける。
俺が女の子だったら素晴らしいエスコートだが、残念ながら俺は男はわけで。

「いや…」
『おー、行け行け』

?!

「(ちょ?!は?!サタン?!)」

手足取られた!

意識があるのに手足だけはサタンに取られ、意図しない形で部屋の中へ入ってしまった。
新入生代表くんが閉めた扉の音が、酷く冷たく感じられ、ぞくりと背筋が凍った。

…くそー…とりあえず、ここは流れに身を任すしかない…。

「さて。じゃぁ、紫煙君もこれを」
新入生代表くんは俺を見習い達の横に座らせ、見習い達が持っている石を俺にも差し出してきた。

とりあえず、受け取ってみる。

石には模様…いや、顔があった。

「…うわ、ぶさいく…」

「「「ぶっ!」」」
トサカ頭とピンク頭、それから奥村燐が俺の言葉に吹き出した。

いや、だって不細工じゃないか。

『まぁ確かにそうだな…ぶぶ…』
サタンまで笑ってるし。

「で?これは…?」
「バリヨンという悪魔です。持っていると少しずつ重くなります」

はぁ…。

「で、なんでこんな状況に…?」

俺が問えば新入生代表くんは少し呆れたような表情で全員を見渡した。

「連帯責任ってやつです。この合宿の目的は“学力強化”ともう一つ“塾生同士の交友を深める”っていうのもあるんですよ」

連帯責任?合宿?交友?
全て俺には関係ない事柄ばっかりじゃん!!
というより…

「こんな奴らと馴れ合いなんてゴメンよ…!」
俺が文句を言う前に、ツインテールにしている女の子が俺の気持ちを代弁してくれた。



「馴れ合ってもらわなければ困る!」


新入生代表くんの声がガンと響いた。

「祓魔師は一人では闘えない!
 お互いの特性を活かし欠点は補い、二人以上の班で闘うのが基本です。実戦になれば戦闘中の仲間割れはこんな罰とは比べ物にならない連帯責任を負わされることになる。そこをよく考えて下さい」

俺は、エクソシストになりたいわけじゃないし、なれない。
だから、ただ眉尻を落とした。

その職業に就く意欲も…能力もない。

エクソシストは悪魔を屠る人。
つまり悪魔が見えなくては、どうしようもない。
俺がエクソシストになれば、サタンは俺から離れるだろう。
そうしたら、悪魔の見えない俺はただの足手まといだ。

…それに。
彼らを仲間と呼ぶには浅過ぎで、知らなさ過ぎで…。

『カインは深く考えすぎだ、バーカ』

………。

「(…俺が珍しくシリアスに入ってるのに…!サタンの阿保たれー!!)」

『ぎゃははは!お前はその方が似合ってるぜ!笑ってろよ!いつもみたいに!』

…っ!!

サタンのくせに…!

…、……あぁ、くそ…。

本当にそうだよ。

いつだって俺は笑っていただろ?
笑って、いられただろ?

「(サタンが蒔いた種だ。最後まで付き合えよ)」

内心でそう微笑んで、もう一度、新入生代表くんを見上げた。





―あとがき―
長くなって来たので、一回切ります。

笑っていられた、そう微笑んだ主人公は一体どんな結論を出すのか…。
管理人自身も楽しみです。←え



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