長編 
17-ターゲット

先人は上手い事を言う。

明日の事を言えば鬼が笑う、なんてさ。


Euphorbia milii
―ターゲット―


島かぁ。
…うちの山のが広いかな?

記憶の中の我が家と目下に見える島を比べ、カインは首を傾げた。

「カイン!」

後ろから名前を呼ばれ振り返れば、キルアとゴンが駆け寄ってくる。

「カイン、何番だった?」
「さてねぇ?」
「勿体振るなよ」

俺達のも教えてやるから、と繋げられた言葉に思わず笑みがこぼれる。

よかった。
俺はこの二人のターゲットじゃないみたいだ。


せーので見せようというゴンに合わせ、自分が引いた札を手に持った。

「せーの」

「「「…」」」

あ…

「…ゴン、運無いね」

なんで44なんて引き当ててんの…

「だよな!カインもそう思うだろ?!」

思いますとも。
この試験の受験者全員(自分含め)が引きたくない番号だよ、それ。

「…ゴン、どうするつもり、って…。意思は決まってるって顔だな」
「うん。どこまで出来るか分からないけど、頑張ってみる」

怖いもの知らず。
この言葉がよく似合う。良い意味でも悪い意味でも。

「そうだな、やるだけやってみれば良いよ。
 …でも、死ぬなよ?」
「うん!」

ゴンは悪運強そうだから大丈夫だろうけど。


「なぁ、カインの番号って誰だっけ?」
キルアの問いに、持っていた札をみる。

80番

「ん?さぁ?」

「なーんだ。カインも分からないんだ」

カインも?ってことは。

「キルアもか?」
「そ。みんな札隠しちゃうんだもん、ズルイよなぁ」

あれ?でも、キルアの番号…どっかで…。
……………………あ。

「キルアのターゲット、多分三兄弟の誰かだよ」
「え?」
「ほら、顔の似てる三人組」
「……あぁ。あいつらか」

至極つまらなそうにキルアは言い捨てた。

…まぁ、分からないでもないけどね?
俺も弱そうって思ったし。


「カインは誰か分からないんでしょ?どうするの?」
ゴンの問いにカインは頭をかいた。

「うーん…。まぁ目星ついてるのがいるから、何人か当たってみるよ。
というか、ゴンは他人より自分を心配すること!どうやってあの変人から札をとるのか、考えたのか?」
目を逸らすゴンに、カインは深くため息をついた。

まったく…。
悪運が強いとはいえ、命には限度があるんだからな?

「よく考えて、何十回も何百回もシミュレーションして、それからトライしろよ。出来ないなら、他の人を三人倒しなさい」
「えー」
「えー、じゃない。良いな?」
「…うん」
渋々頷いたゴンは、すぐに二へと笑った。
「なんかミトさんみたい」
「ミトさん?」

誰のこと?

「俺のおばさん。母親みたいな人なんだ」

「へぇ」

…俺はその人に似てる、のか?

「ミトさん、カインみたいに口うるさいから」

「…ゴン、覚悟は出来てるか?」

「ゴメンナサイ」

始めから言わなきゃ良いのに。


一つ息を吐く。
今度は二人の顔を交互に見て、笑みを作った。

「二人とも、合格しろよ?」

その言葉に二人は一瞬目を見開いて、すぐにニッと笑った。

「もちろん!」
「カインこそ」

「ふふ。じゃぁ、またな」

そう手を振って、二人と別れた。


俺は大丈夫。
だって、君達より、他の受験者より断然強いし。
念も使えるし。
経験だってあるし?

だから、大丈夫なんだよ。
札なんて、すぐに集まるからさ。


「…なーんて。フラグ立てて、俺、合格しなかったりして。…笑えないな。
 俺も気合い入れて頑張ろ」

川立ちは川で果てる、だな。
くわばらくわばら。




Dear シルバ
もう四次試験だ。早いよな。
今一緒にいる子が、ヤバい相手から札を奪わないといけないんだ。
少しだけ心配…。





―あとがき―
ゴンとキルア、今見ても良いコンビだよね!



諺↓

明日の事を言えば鬼が笑う→
先のことはわからない、はかりしれないとうこと。

川立ちは川で果てる→
川に慣れた者は川で溺れて死ぬということ。人は油断すると不注意になり、失敗するということ。

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あきゅろす。
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