長編 
14
「っ…」
夏も真っ盛りなのに、なんで鳥肌が止まらないのか…。
そんなもの、原因は分かってる…!


青と灰
Part14


腐った犬のせいだ!!

この目の前にいる腐った犬!
急に現れた事にもビビったけど。
買い物の帰りぎわに、まさかの鉢合わせ!
俺のことを威嚇しまくってて、全然道を開けてくれないし…。

ていうか…なんで腐ってるのに動いてんだよ!
バイオ○ザードか!!

「グルルル…」
「(マジ、無理)」
『お、アスタロトの眷属じゃねーか』
サタンの声に、あぁこれも悪魔かと冷静に納得しながら、眉間にしわを寄せる。
「(あ?アスタ…?)」
『アスタロト。“ふ”の王だ』

ふ?

…負?府?不?麩?歩?婦?赴?浮?
うーんと…

「(腐?腐ってんの?嫌なネーミングだな…)」
『仕方ないだろう。そういう奴なんだから』

……あれ?

「(腐ってるので合ってるのか…!)」
『…お前なぁ…あの腐ってる犬がアスタロトの眷属って言っただろうが…』
「(あ、そういえば)」
すっかり忘れてたよ。

「(でだ。この犬、なんだろうか…?)」
『お前に用があるんじゃねーのか?』
「(俺に??)」
『お前、悪魔に好かれるだろ』
「(…。嫌だ…)」
俺は可愛い悪魔とのみ関わりたい。
腐ってるとか…無いよ!

「グルルル…」

「(いや、ちょ、マジ無理…)」

一歩後ずさり、横道にダッシュした。
「(俺の脚力は犬より上!)」
振り向くこともしないで、必死に走り回る。
木々の隙間や建物の間などを選んで縦横無尽に走るも、サタンの笑い声があの犬を撒けていないと物語っている。

『ぎゃははは!カイン、後ろ後ろ!』

ネタが懐かしいなぁ!もう!
とりあえず、こうなったらどっかに逃げ込むしかない…!

目端に捉えた廃墟のような建物を目指し、ひたすらに走った。

「(寮…?)」
入口に書かれた“正十字学園男子寮”の文字に、内心首を捻る。

自分も男子寮に居を構えているが、こんなところに寮があったとは知らなかった。
昔に使っていたものか?
うん、かもな。廃墟っぽいし。

「(あ。あそこの窓、開いてる!)」

角を曲がったところで、微かに開いている窓を発見し、音を立てないように転がりこんだ。
窓に鍵をかけ、息をひそめて座り込む…。

あとはあの犬が通り過ぎるのを…

「(あ!犬って嗅覚鋭いじゃん!)」

やべぇ、逃げねぇと!

すぐに立ち上がり、部屋から廊下に逃げ出した。
物音は特には無かったし、サタンもつまらなそうにしているところから、多分、あの犬からは遠ざかれたのだろう。

「(体力の限界を超えた気がする…)」
『そーかぁ?つーか、ここ、使ってねーわりには綺麗だな』
「(…そういえば…)」
廊下には埃は積もってないし、空気がジメジメしているわけでも、物が散乱しているわけでもない。

「(人がいそうだな)」
『あぁ…クク…いるみたいだな』

あーサタンの奴…確実に面白がってるし…。
俺、不法侵入も良いとこじゃん。
…でも、こんなとこに住んでるのって…一体…?

『おい、カイン。上の方に人がいるぜ?』
「(え?俺、逃げる気満々なんだけど)」
人間に捕まりたくないし。
ここ、不気味だから、嫌な悪魔多そうだし。

『あ?こんな面白そうなこと、なんで逃すんだよ。行くぞー』
「(えぇ??あ、ちょっと、足!足!)」

足だけをサタンに持って行かれ、なんだか変な歩き方になってしまった。

「(サタンー。歩くから足返してー)」
バランスとりづらくてたまんないよ。

『じゃぁ、とっとと歩け。そんで、俺を楽しませろ』
「(サタンの理不尽ー)」
『おいおい、悪魔の親玉に理不尽も道理もあるかよ』
「(あー。悪の大王が律儀だったら嫌だなぁ)」

でも、まぁ、サタンは悪の大王じゃないじゃん。魔神って言うけどさ。
…うん。だって結構律儀だし。

階段を上がって廊下を歩くと、明かりの点いている部屋を一つ発見した。

「(おおっ。マジで住んでた…)」
こんな廃墟によく住めるなぁ…。
どんな人だろ。

『開けてみろよ』
「(え?隙間から覗くのじゃダメ?)」
『良いじゃねーか。ガラッと開けてみりゃ』

それって…俺が1番貧乏クジ!!


ガラッ。


…うん、俺は開けてない。
指一本だって触れてないさ。

でも、開いた。
つまり、それが意味するのは…


「あ、紫煙君。今日から授業参加ですか?」


……。

これ、なんのデジャヴュ?



―あとがき―
終わり方が11話とそっくりな感じに!
いや、狙ったんだけどね。
とりあえず、合宿に参加したかったんだ!!←






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あきゅろす。
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