長編 
13-殺し屋と元殺し屋

「イルミってさ、殺し屋?」
「なんで?」
「なんとなく」

Euphorbia milii
―殺し屋と元殺し屋―

「…確かに、殺し屋だよ」
「へぇ。じゃぁ、なんで試験受けた?」
「仕事で必要になったから」
「まぁ、妥当だな」
途切れた会話を見計らったかのように、階段の終わりが見えた。

「広い部屋…」
目前には直径50mはある部屋。

お?
姿は見えないけど…大量の気配と殺気…。
戦わせる気か?

ブツと電子音が響き、最初の部屋で聞いた声が響く。
『よくここまで降りてきたな。この部屋を脱出できれば、ゴールはすぐそこだ』

ふーん。
随分楽な道だったな。

『だが。ここで君達のチームワークを試させてもらう』

試験官の言葉と共に部屋のあちこちの扉が開き、中から大量の人間が出てきた。
総勢で100というところか。
全員が全員、手枷をしており、見ただけで囚人だと分かる。

『彼らと戦い、この部屋を脱出したまえ、もちろん二人でだ。片方が死ぬ、もしくは戦闘不能になったら失格とする。頑張りたまえ』

不謹慎にも楽しげな試験官の声は途切れ、囚人達の手枷が外れる。

「久々に殺れるぜ…」
「優男が二人かっ」
「すぐに血祭りにあげてやる!」
囚人達の好戦的な態度に、カインは口角を持ち上げた。

「ふふ。戦え、か。殺しても問題ないな」
「カイン、半分で良いね?」
「ん」

二人の会話に囚人達はニタニタと笑みを深めた。

「お前らはここで死ぬんだよ!」
「簡単に俺達を殺せるなんて思『ドス』…っ」
言葉が途切れた男の額には一本の針。

「五月蝿い」
「イルミ容赦ないなー」
ふふ、と普段と変わらない笑顔を見せるカインも、背中に背負っていた刀に手をかけた。

「さぁ、零崎を始めよう。なんてな」

ニタリと笑みを深め、カインは囚人に飛び掛かった。


舞い踊るように敵を殺していく近距離型のカイン。
無感情に敵を針で刺し殺していく中距離型のイルミ。

戦い方はまるで違う。
しかし、カインは敵をイルミに近寄らせないように動き、イルミはカインの死角に立つ敵を殺していく。
チームワークというなら、完璧ともいえる動きだ。

「あと二人」

カインは刀を一降りし、刃の届いていない敵までもを切り付けた。

「終わり〜!」
刀を鞘にしまい、うーんと伸びをしたカインはイルミから視線を感じた。
「何だ?」
「…カインのそれ、便利だね」

その、刀に纏わせた念。

「…隠で隠してあったのに、よく分かったな」

カインの念能力の一つ、≪刃に纏わせしは殺意(リーサル)≫。

刀に纏わせた念を伸ばし、隠で隠した見えない刃で相手を切りつける。
隠の制度は高く、熟練した念使いでも見抜くのは難しい。

カインにとって一番ポピュラーな能力だ。

「人を殺す…倒すには丁度良いんだよ。この能力」
「カインって、同業者?」
「…元同業者だな。俺は足洗ったから」

まぁ、いつか復業するかもしれないけど。

心で呟いたその直後、再び試験官の声が響く。
『見事なチームワークだ。その扉を潜れば試験終了。次の試験も頑張りたまえ』

偉そうだな。おい。
てか、俺達が殺し屋だって知っててこの試験内容にしただろ…。こいつ。
馬鹿試験官め。

「カイン、口から出てるよ」
「おっと、イケネ」

カインは笑って頭を掻いた。

「さて、じゃ、行く…って?!イルミ?!」

針男?!

いつの間にか、イルミは顔を変形させ、針で止め終わっていた。

うわ、さっきのままのが、目に優しいのにっ!
なんで戻った?!

「カタカタカタカタ…まだバラすわけにはいかないから」

あ、誰かから隠れてたんだっけ…。
うー、それにしたって…心臓に悪い。

「…よしっ!とりあえず行くかっ」
「うん」

この二人っきりの空間から早く脱出するに越したことない!


ギィ…


『三次試験通過第二、三号!ギタラクル、カイン!所要時間12時間2分!』



Dear シルバ
二日目、三次試験通過。
イルミという黒髪の男と知り合いになった。殺し屋としての腕はかなり良い。
感情が乏し過ぎるけど、殺しに関して感情なんて必要ないから、良いのかな。

昔の俺と似てると思ったのは…秘密。




―あとがき―
一旦シリアスにしたら、ギャグに戻せなくてアタフタ中。
次はギャグ要素を含めるぞー!



↓作中使用
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あきゅろす。
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