長編 
11

サタンと俺と悪魔達。
これだけが、俺の世界を形成している。

なんて…馬鹿な考え。


青と灰
Part11


「(結局、止まなかったな…)」
下校時刻になっても、雨は止まなかった。
鳴り続ける雨音に傘を開く。
踏み出した足元で、バシャリと雨水が跳ねた。

『今日はどうすんだ?』
「(んー?夕飯ならお好み焼きにするつもりだけど)」
『お好み焼きか…焼きそばも買え』
「(了解した)」
『…って、違う!夕飯の話じゃねぇ!』
「(サタンもノリツッコミ上手くなったよなー)」

本当、無駄にそんな技術ばっかり上げて。

『お前がそういうことばっかり教えるからだろうが!!』
「(えぇー??俺のせい?!)」

俺何もしてないのにー。

「(で?何の話だっけ?)」
『あ?あー…、あ、あれだ、あれ』
「(サタン…歳か)」
“あ”と“あれ”しか言ってないし。

『確かにお前よりかは年上だが、そうじゃねぇ』

「(じゃぁ、何?)」
『アマイモンの奴が、お前の体を…』

……。

………。


…………は?


え?
何これ?

真っ白なんだけど。

背景が白いし、音もしないし、誰もいないし、体動かないし。

サタンー?
サーターンー??

あちゃぁー。
ダメだ。俺、完全に落ちたみたいだな…。

ここは心の中だ。

引きこもりは部屋に閉じこもるけど、俺のこれは心の中に閉じこもった状態。

両親が死んだ後、何回かやった。
この状態になると、数日抜け出せない。

でも…。

俺はこんな状態になる程、考え込んでも、後ろ向きにも、なってない。

じゃぁ…なんで…?


…あ…そうか…。
これは、初めてサタンに会った時と同じ状態…。


あの日、サタンは俺の中に入ってきた。
驚いた俺は、自分を守るために心の奥底に逃げ込んだ。
それがここ。

『お前は魔障を受けないんだな』

白い景色にぼんやりと浮かんだ青い炎
サタンは酷く楽しそうに俺に声をかけたんだ。

「…誰だよ、あんた」
『俺か?俺様はサタン、魔神だ』
「魔神?」
『悪魔の親玉だ』
「そう…」

あの時は、両親が死んでからそう経ってなくて、サタンに全く興味が無かった。

「で?何の用?」
『…っ、ぎゃははは!お前面白いなぁ!』
「は?」
げらげらと、は揺らいで、そして俺の目前に飛んできた。
『本当はてめぇの体、使ってやろうと思ってたんだけどよぉ』
「え?」
『てめぇに興味が沸いた。当分の間、傍にいてやるよ』
「…」

途中の言葉にも、最後の言葉にも驚いて、俺はただ瞬きを繰り返した。

それが、俺達の始まり。



さらっと昔話をしたところで。

この状態から抜け出すためには、あの時のサタンみたいに、ムリに俺の体に入ってきた奴を追い出せば良いってことだ。

てーことで。

…どうすりゃ良いんだよ…。

ため息を吐いて、その場に座り込んだ。

サタンの時は向こうから話かけてきたし。
今回は勝手が違う…。


「…い、おーい。」

ん?

「大丈夫ですか?」

んん?

「こいつ、ホンマに塾生なんやろうな?」
「奥村センセが言うてはりましたから、間違いあらへんと思いますけど」

あ?

「ねぇ、燐。この人、燐のクラスなんでしょ?」
「ん?あぁ、まぁな…」
「なんや?そない曖昧な返事は」

どっかで、聞いた事あるぞ…?
この声…。

「いや、話そうとしたら拒否られたから…」
「なんやぁ。俺らと同じやんか〜」
「志摩ぁ!」
「痛っ!坊!殴らんでもええやないですかぁ?!」

あぁ、思い出した。
この間の…

「五月蝿い。耳障りだ、ボケが」

あの悪魔の子を消した奴らだ。

「うぉ?!急に覚醒すんなや!」
「ウザい。俺の前に現れるな」
「はぁ…?!」

この間の三人組に、奥村燐に、女の子が三人に、フード被った変人と、パペットを持った少年が一人。

なんだこれ。

「お前なぁ!廊下に倒れとったのを運んでやったんわ、俺らやぞ?!」
「は?倒れてた?」

なんだ、それ。

「行き倒れてたんだよ?大丈夫?どこも痛くない?」

着物姿の女の子が俺の顔を覗きこんでくる。

行き倒れてた?
つーことは、俺の中に入ってた悪魔は出てったってことか?
確かに存在は何も感じないな。
あれ?サタンもいないじゃん。なんだよ…。

「おーい?大丈夫か?」
「…あぁ。邪魔した。帰る」

とりあえず、ここを離れよう。
んで。サタンを探して、お好み焼きと焼きそばを作る!

その場に背を向け、出口らしい扉に手をかけた。

刹那。ガラリと扉が開いた。

…俺は開けてないぞ。

「は…?」
「おや、起きたんですね。紫煙君」

新入生代表くんが、にっこり笑顔で俺の行く手を阻んだ。





―あとがき―
あぁ、ついにこの時が…。
ようやく主人公メンバーと絡み始めましたが…。

京都弁が分からない…っ!!(え)


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あきゅろす。
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