長編
10
青と灰
Part10
「(雨かぁ)」
自分の席から見える空はどんよりとした灰色で、大粒の雨を落としていた。
『お前、雨嫌いだったか?』
「(いや、普通かな)」
別に好きでも嫌いでもない。
「(ただ、ちょっと……)」
『ちょっと、なんだ?』
「(なんだろう?)」
『お前なぁ…』
がっくり肩を落としてる様が浮かんで、カインは静かに微笑んだ。
「(ごめんごめん。なんだか、感慨にふけっただけ)」
『詩人か、てめぇは』
「(あはは)」
サタンとの会話には笑顔を見せるものの、、曇り空と同じで、カインの心はぼんやり灰色に曇ったままだった。
「(なんか、晴れないんだよなぁ)」
霞みかかった脳裏には何も浮かんでいない。
「(帰りたいなぁ)」
『帰るか?』
まだ3限目も済んでないけど。
「(この雨の中、帰るのは嫌だなぁ)」
『優柔不断め』
「(あはは。そうだねぇ)」
人知れずため息を吐き、カインは顔を伏せた。
『寝るのか?』
「(うん。授業始まるまでね)」
『分かった』
分かったって…起こしてくれるのかな?
まぁ、良いや。
***
『カインー』
「(…うん…?)」
『授業終わったぜー?』
「(…終わりに起こせと誰が言った)」
サタンのバカ!
しかも、先生…俺のことスルーしたのか…。
『さっきの人間なら、お前を起こすの断念して授業始めてたぜ?』
「(その時に起こしてほしかったよ…)」
しかし、俺、爆睡してたんだな。
昨日もしっかり寝たのになぁ。
「(サタン、夜に俺の体使ったりしてないよな?)」
『俺は使ってねーな』
「(そっかぁ)」
『おう』
「(…“俺は”って何?)」
『アマイモンなら使ってたぜ?』
「(うぉぉい?!)」
重大事実!衝撃事実!!
「(もっと早く言えよ!バカサタンー!!)」
『あぁ?!なんで俺様が責められるんだよ?!てめぇは自分の体の管理くらいちゃんとしやがれ!』
「(…。…か、返す言葉もございません…)」
すいませんでした。
サタン様の方が正論です…。
『ったく…』
「(アマイモノの奴…俺の体、何に使ったんだよー…)」
『メフィストのとこに行ってたぜ?』
「(メフィスト…?)」
って、誰?
『お前の学校の理事長だ』
「(は?)」
あのスゲーシュールな服装してるあの人?
しかもアマイモンって、悪魔じゃん。
なんで人間の理事長に会いに行くんだよ。
「(ん?理事長って人間だよな…?)」
『いや、悪魔だ』
「(…あれまー。この学校、人間生活してる悪魔多過ぎだろ…)」
深々とため息を吐いて、頭を掻く。
「(理事長と何話してた?)」
『そこまでは聞いてねぇ』
「(清々しいまでの即答ありがとう。もうサタンには聞かないよ)」
求めた俺が馬鹿だった。
「(はー…変な事にならなきゃ良いけど)」
外は相変わらずの雨模様だった。
―あとがき―
雨だったので。←え?
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