長編 

甘いものって本当幸せー


青と灰
Part9


結局、帰り際にチョコの大量買いをした俺は、部屋に着くなり戦利品を広げた。
板チョコ、チロルチョコ、マーブルチョコ、ナッツの入ったチョコ、ついでにチョコレートケーキ、等等。

「(チョコ尽くし♪)」

にんまりと笑みを浮かべ、チョコレートケーキに手を伸ばす。
甘い匂いが充満する室内で、悪魔達は興味津々にチョコを見つめている。

「(チョコ、食べるかな?)」

ほいっと、チロルチョコを差し出せば、口に含んだ悪魔は、嬉しそうに飛び跳ねた。

「(お。口にあったみたい)」
『ほぉー、そんな黒いのがウマイのかー』

忘れてたが、サタンも興味津々だったか。

んーと。

「(サタン、俺の体使って食べてみれば?)」

俺の提案に、サタンはぎゃははと笑う。

『良いのかよ?お前の体、乗っ取っちまうかもしれないぜ?』
「(そん時はそん時だよ)」

ありだよ。それもね。

『たぁく…。じゃぁ、ちょっと借りるぜ?』
「(おーよ)」

そして、俺は意識を手放した。



「カイン、誕生日おめでとう」

大好きだった母

「カインの好きなチョコレートケーキだぞ」

優しかった父

「やった!チョコケーキ!!」

何も知らなかった自分






『…カイン、カインー?』
「(ん?)」
「相変わらず無防備ですね」
サタンとは違う声に、んん?と首を捻る。
パッと目を開けば、ツノの生えた垂れ目がチョコを頬張っていた。
確か、こいつの名前は…

「…アマイモノ?」

「僕はアマイモンです!」

あー。だっけか。

「惜しかったー」
「棒読み?!」

ギャーギャー騒ぐアマイモノが煩いので両手で耳を塞ぐ。

五感を一つ奪われた事で敏感になったのか、サタンの存在を近くに感じ、少しだけホッとした。

「(サタンー?チョコはどうだった?)」
『まぁまぁだな』

とか言いながら、結構食っただろ。
なんか満腹だし。

「(お気に召したようで)」
『虚無界にはねーからな。そんなもん』
そうなんだ。

「(チョコがないのか?それとも、甘いのがない?)」
『あ?あー、どっちもねーよ』

どっちもない?!
絶対行きたくねー!虚無界!

「(普段、何食ってんの?)」
『普通のもんだよ』

…普通のもんか。
中々に難しい返答が…。

虚無界って、食生活とか全く違いそうだしなぁ…。
説明されても分からなさそうだし。

うん。
スルーで。

「(ところで。サタン、なんでアマイモノがここにいるの?)」
『お前の体を借りた少し後に、勝手に入って来たぜ』
「(窓に鍵かけたはずなんだけどな)」

…悪魔に窓は意味ないんだっけ?

「(アマイモノって悪魔の中では強い方なのか?)」
『まぁ、それなりにな。こいつは“地の王”だ』

「(え?知の王?馬鹿そうな顔してるけど、知識人なの?)」

『そっちの“知”じゃねーなぁ。大地の方だ』

あぁ、
地の王。

「(ははっ。イメージじゃねー)」

俺の中のイメージだと、甘いものが好きなただの悪魔だし。

グイッと、耳を塞いでた左手を引っ張られ、途端に耳に音が入ってくる。

「ちょっと!いつまで僕を無視するんですか?!」

うむー。耳元で大きな声出すなよー。

「煩いよーアマイモノ」
「僕はアマイモンです!!」

ん?
どこか違ったか?





―あとがき―
甘いものって言ったらアマイモンかと。
アマイモンのこと、本気でアマイモノだと思ってた時期がある管理人(笑)





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