長編 
1-旅立ち



Euphorbia milii
―旅立ち―


「んぁ?」

目を覚ましたら、なんで…うちの家?
変だな…俺、死んだんじゃなかったっけ?
殺しの依頼で、とある家に行って全員殺して…。
んで、殺した奴の念に引っ掛かって、水縛りの術みたいなのに捕まって……。

…ん。

やっぱ死んだわ。俺。


「変だなぁ…死んだのに家にいる。夢か?」
でも、どっちが…?

今?
殺しの依頼の方?

「んー??」


その場に座り込んで頭を捻っていたら、ふっと現れた気配に体が反応した。

知ってる気配…。
あり?
なんでそんなに急いで…

「カインッ!!」

?!
どちらさん?!

勢いよく開かれたドアの向こうには、双子の弟であるシルバによく似た大人が一人。
え、あれ?俺もシルバも16なんだけど。
でもこの人、親父でもないし…。

おろおろとパニクってる間に、シルバ似の人は座り込んでたカインを勢いよく抱きしめた。

「カインッ、よく生きてっ…!」

し…締まる…。
抱きしめた腕が力強すぎて息が…っ!

「ぐ…」
「シルバ、カインを離してやれ。締まっとるぞ」
「あ、悪い、カイン…つい、な」
「げほっ…ごほ…」
後ろからついて来てたお爺さんに止められて、腕をようやく離してくれた。

って、ん?
今、シルバって…しかも、匂いが…確かに…。

ウェーブのかかった銀髪のおじさんを見て、カインは目を丸くした。

まさか…まじで…

「シルバ…?」
「あぁ」

じゃぁ、後ろに立っているお爺さんは…。
「…親父?」
「そうじゃ」

開いた口が閉まらないまま、再びシルバに視線を戻した。

「なんで、おじさん?」
何度も確認するけど、俺ら、まだ16才だよね?

「30年も経てば歳も取るだろ」

30年、そっかぁ。

「…30年?」

「そうだ」
「うっそん」














「え、じゃぁ…。俺、念に捕まって30年も眠ってたの?」
水晶の状態になった念に捕まって30年…。
死んだ後の念は強いって言うけど、まさか徐念が効かなかったなんて…。

「ん?じゃぁなんで俺出てこれたの?」
「さぁの。しかし、きっかり30年じゃし、期限付きだったのかもしれんの」
「適当だなぁ…」

しかし、皆が30年も年取ってるのに俺だけ置いてきぼりか…。

なんか…複雑…。

シルバも良い歳したおじさんになってるし。
親父も孫がいそうなお爺さんだし。

「…あ。そうだ。シルバ、ちゃんと結婚した?子供とかは?」
まさか未婚とか言わないよな?その歳だし…。
「ん?あぁ、結婚もしたし、子供も5人いるぞ」
「わぁ、頑張ったね」
この歳で甥っ子姪っ子が5人か…。
…でも、ま。

「幸せそうでなにより」
「カイン…」

うん、シルバはもう大丈夫だね。
俺がいなくても、生きてける。
家もちゃんと継いだみたいだし。

そうだな、俺は…どうしようか。
んー、とりあえず。

「…外に行きたい」
「何?」
瞠目しているシルバを尻目に、カインはだってさ、と言葉を続ける。
「今回の事で未熟だってのを痛感したし。外に出て修行してみるのも良いかなって」
「修行だけなら、ここでも出来るだろ」
「ノンノン。もっと広い視野を持ちたいってのもあるから」
「…しかし…」
「シルバ、カインの気持ちも察してやれ。大方、突然の事で受け入れられないから、外に出て頭を冷やしたいんだろう」

わ、さすが親父。

「不変であると思っていたものが急に変わると、カインは当分の間は受け入れられんからの」
「…バレバレ、か」
カインが頭を掻けば、ゼノは大袈裟にため息を吐いた。
「お前の考えなど、手に取るように分かるわい」
「恐れ入りました」

親父は相変わらずみたいだね。
なんか“一日一殺”とか書いてあって、キャラは濃くなってるけど。

「ん、まぁそういうことで、やっぱ外に出たい」
「俺達を受け入れられないか?」
「…受け入れられないよ。だって、俺はまだ16なのに、シルバは46。30年は大きすぎる…。だからさ、ちょっとだけ、時間をくれ」

ごめんな、シルバ。





俺は親父とシルバ以外には会わずに、その日のうちに家を出た。

身支度は手短に。
一振りの刀とベンズナイフを数本。
鞄と着替え。
それから、シルバから昔もらった懐中時計をポケットに入れた。



執事とかに会ったら説明するのか…?

家の前で、はたと気づいた事実にため息を吐く。

めんどくせ…。

俺は誰にも会わぬよう森を抜けて、試しの門に手を掛けた。

「ふん…」

お。5が開いた。
うん、筋力も落ちてないな。

ちょっとだけニタリとして、カインは門を見上げた。


「行ってくんね。我が家よ」






―あとがき―
家出完了。(違)

シルバは、基本カインに甘いと良い。
そんで、カインはシルバを溺愛してたら良い。


↓使用台詞など
NARUTO


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