長編 


金のトサカ不良は俺にこう言った。

「魔障も受けへんとは、お前一体なんや?」


青と灰
Part8


ご覧の通り、絡まれ中のカインです。

どうしよう。

悪魔ハーフ兄弟から逃走し、無理矢理かまった悪魔に噛まれ、俺が何をしても放さないし痛みもないし、とりあえず良いやと、そのまま歩いてたら、金のトサカ不良とピンク頭と気弱そうな眼鏡男児に絡まれました。

「(ここまでを一息で言えたら、俺は感動する)」
『現実逃避してるぞ』
「(させろ。変なのに絡まれて、今テンパってるから)」

今日は本当に厄日だ。
こんなに人と対峙する日が来たのは数年ぶりだし。

「(あの子、消されちゃったし)」
俺に噛み付いていた悪魔は、金のトサカ不良に消された。
あの子、根性で俺にくっついてたから、なんだか可愛くなって、他の悪魔達に“ほっといて良い”って、言った直後に消された。

「(サタン。この人も、えくそしすと?)」
『見習いだな』

えぇー…。見習いでも悪魔を消す力があるのー?

「黙ってへんで答えぇや」
「坊。彼、怖がってはりますよ?」
金のトサカ不良を眼鏡男児がなだめている。
悪魔達に下がるよう指示をするために下を向いたままだったから、怖がってるように見えたんだろう。

「せやけど、このまま逃がすわけにはいかんやろ」
「とりあえず、奥村センセに引き渡せばええんとちゃいます?」

ピンク頭が言った一言に内心首を捻る。
奥村センセ?
悪魔ハーフ兄弟のどっちかか?

んー。とりあえず。
俺、飯食い途中なんだよなー。

…昼終わる前に食いたいし。
うん。とんずらしよう。

「魔障受けないのは体質上仕方ないんで。大丈夫です。じゃーね」
「「「あ」」」

三人組に背を向けて、本日二回目のダッシュをして、逃げ出した。

“待てやー!”

という叫び声を後ろに聞きながら、振り返らずに走り続けた。

目指すは屋上!




「ぜはー…!!」
さ、流石にノンストップで屋上まで走るのは、死ぬ…!

その場にゴロリと横たわり、大の字になって空を見上げた。

「(…空が、青いなぁ)」
『なんだぁ?また感慨深げに』
「(あはは。やっぱりこの状態が好きだ)」
『あ?』
「(サタンと俺と悪魔達と。それだけが良い)」

人と関わるのは、つらい。

『お前はユリとは違うな』

あぁ、また。
比べるんだ。

「(ユリさんは人と関わりたがったのか?)」
『ユリは、虚無界も物質界も分かり合えると思ってたからなぁ』
自慢げに、愛を語るように、サタンはユリさんの事を口にする。

「(愛なんて、俺はいらないなぁ…)」
『あ?何の話だ?』
サタンの疑問視を無視し、ゆっくりと目を閉じる。

「(愛は、痛いだけだ)」

両親も、友達も、サタンも、何もかも。

愛せば愛すだけ…痛い。

『ぎゃはは!お前は、馬鹿だなぁ』

「(何が?)」
『愛せば愛すだけ、面白くなるだろうが』
「(面白い?)」
『俺は、ユリが愛した世界が欲しい。虚無界と物質界が一緒になれば、ユリの見た世界が見える。それが欲しい』
「(愛した世界、かぁ…)」
『今はその過程だからなぁ。面白いぜ?変な奴にも会うしなぁ』

ん?

「(変な奴って、まさか俺のことか?!)」
『それ以外に誰がいんだよ』
「(サタンの馬鹿野郎ー!!)」

人が真面目にブルーになってたのに!!

やっぱり今日はチョコの大量買い決定!





―あとがき―
人と関わりすぎて疲れちゃったカインくん。
シリアスになりきれない(笑)






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あきゅろす。
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