長編
9-再試験
メンチさんは、普通の胃袋だったようです。
Euphorbia milii
―再試験―
「だから、二次試験の合格者は0よ!!」
電話相手に怒鳴り散らし、メンチは全員の不合格を伝えた。
…参ったなぁ…。
俺としては、他の仕事に就いても良いんだけど。
ネテロ会長になんて言われるか…。
ドゴオォッ!
突然響いた爆音の方に目を向けると、一人の受験者が調理台を壊し、殺気を放っていた。
「納得いかねェな。とてもハイそうですかって帰る気にはならねェ!」
うん。まぁ、納得いかないのも分かるけど…。
物を壊すのは良くないんじゃないかな?
「オレが目指しているのはコックでもグルメでもねェ!ハンターだ!しかも賞金首ハンターだぜ!美食ハンターごときに合否を決められたくねーな!!」
ワオ!よく高らかに宣言できたものだね!
たかが一般人ごときが!
こっちから見れば、君なんて、クリボーくらいの弱さだよ!
…そんなに可愛いらしい見た目じゃないけどね、君は。
カインがそんな事を考えていると、威勢の良い受験者はメンチに襲い掛かり、ブハラに吹っ飛ばされた。
「ブハラ、勝手に始末しないでよ」
「だってメンチ、俺が止めてなかったら、あいつ殺してただろ」
メンチは鼻で笑うと、手に構えた大きな包丁を数本持て遊ぶ。
ブハラが言うように、止めていなかったら、あの受験者はメンチに殺されていただろう。
「何が賞金首ハンターよ!美食ハンターごときにのされちゃって!武芸なんてハンターやってたらいくらでも身につくのよ!」
その通り。
武芸なんて、一定までは簡単に身につくものだ。
その先に何を見るかはその人次第。
美食ハンターか、賞金首ハンターか、はたまた殺し屋か。
「それにしたって、合格者0とは、ちと厳しすぎやしないか?」
響いた声に全員が驚き、突如外に現れたヘリコプターに視線を向ける。
わぁ…。ネテロ会長来ちゃったじゃん。
苦笑いを禁じ得ないカインは頭を掻き、ヘリから跳び降りてきたネテロに視線を向ける。
相変わらずのオーラ。惚れ惚れするね。
でも。
なんで視線の先がメンチさんの胸?
「ではこうしよう。審査は引き続き続行してもらう。ただし、新しいテストでは審査員であるキミにも実演という形で参加してもらう、というのはいかがかな?」
一応話は聞いていたらしいネテロの提案に、メンチは少し考え込み、微笑んだ。
「それじゃあ、ゆで卵」
あぁ。
この付近だったね、マフタツ山は。
ふふ。つまり断崖絶壁を落ちなきゃいけないんだね?
「安心して。下は深ーい河よ。流れが速いから落ちたら数十q先の海までノンストップだけど」
安心できる要素がない。
流れが早いって、落ちたら水圧とかで死ぬって事じゃないのか?
後ずさる受験者達を知り目に、メンチは飛び降りて卵をとって帰ってきた。
「あ―よかった」
「こういうのを待ってたんだよね」
「走ったり民族料理なんかより、よっぽどわかりやすいぜ」
そう言い放った彼等は、勢いよく断崖絶壁を飛び降りていった。
…念を知らない一般人であろう君達が、そうやって自信満々に飛び降りる勇気、俺は凄いと思う。
「さて。俺も行くか」
カインもゴン達の後に続き飛び降りると、卵をとって、二次試験を通過した。
とってきた卵は、ゆで卵にして食べたのだが…。
「これ、美味しいな」
「…あんた、味覚あったのね…」
「?何か?」
「なんでも無いわ」
メンチさんに凄く怪訝な顔をされました。
なんでだろう…。
Dear シルバ
どうにか二次試験合格したよ。
一般人って結構凄いね。
不安っていう言葉すら分かってないような勇気の塊みたいな人達もいれば、何も考えない馬鹿もいる。
なんだか、凄く不思議な気分なんだ。
―あとがき―
ようやく二次試験通過っ!
とりあえず、そろそろ他のキャラと絡ませようと思います。
↓作中使用
クリボー…遊戯王でもマリオでも、想像しやすい方でどうぞ。
個人的には遊戯王でした☆
[*前のお話へ][次のお話へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!