長編 
67-休息と約束
「全治4ヶ月ねぇ。良かったな、その程度で済んで」
にっこり笑ってやれば、腕を包帯で吊ったゴンは頬を引き吊らせてあやふやに笑った。


Euphorbia milii
ー休息と約束ー


ギドとの試合はゴンの完敗で幕を下ろした。
絶をして駒を避け続けていたが、リンクの中に逃げ場が無くなり、ゴンはあの駒に腕をへし折られた。
ポイントがMAXになり、強制的に試合は終了。
ゴンは闘技場の医師から治療を受け、ようやく自室に戻ってきたところだ。

「たく、どうなってんだよ!この頭の中はよ!!」
キルアがゴンの頭をつついている様を横目に、カインもため息を漏らす。
「本当…。念能力者との真っ向勝負。
 しかも、隠れるところもないあんな状態で“絶”なんて…即死でもおかしくなかった。
 生きてることが奇跡と言ってもいい」
俺の苛ついた言葉を受け、キルアも続ける。
「一歩間違えば、洗礼を受けたっていうあいつらと同じになってたんだぜ?分かってるのかよ?」
「あー、でも、何回か攻撃を受けてみて、まあ急所さえ外せば、死ぬことは…

 おぉお〜…っ…!」

能天気に笑っているゴンの腕(折れている方)を、キルアは足でぐりぐりと攻撃した。
それなりに痛覚はあるようで、ゴンは奇声を上げながら涙目になっている。

本当に分かってないな、この子は…。

不意にノックの音が部屋に響いた。

この気配はウイングさんか…。
怒られちゃうな。

キルアが開いたドアの向こうに立っていたウイングは、無言でつかつかとゴンのもとに歩み寄った。
表情は、今まで見た中で一番険しい。

「ウイングさん…。あ、その……ごめんなさ」

パンッ!!

謝ろうとしたゴンの頬に平手打ちをしたウイング。
その手のオーラは限りなく押さえられており、怒りと同時にゴンへの多大な心配も感じられる。

「私に謝っても仕方ないでしょう!!
 一体何を考えてるんですかっ!!
 念を知らずに洗礼を受けた人たちを見たでしょう!?
 君自身、ああなっていても全くおかしくなかったんですよ!!」

「あ、それ俺が言っといた」

キルアの言葉に、ウイングは大きくため息を吐いた。

怒るところは全員同じな訳で。
3人に同じことを言われたのだ。
ゴンも少しは自分を大切にしてくれれば良いのだが。

「まったく…この程度で済んでよかった。本当にもう…」
ゴンの肩に手をかけ、ウイングはようやく安堵の声を出した。
そんなウイングの様子に、ゴンは今度こそ、自分のやってしまったことを痛感したようだ。
自分を心配してくれる人がいる。
その人を悲しませてしまうところだった。

「…ウイングさん、本当にごめんなさい」

「いーえ!!許しません!」
「うぐ…」

まぁ、それを許すほど甘くはないようだが。


ゴンに課せられたペナルティは2ヶ月。その間、念能力を学ぶことは禁止。
試合も修行もしてはならない。
それを破れば完全に破門。

誓いの証として、ゴンは指に赤い紐を結びつけられた。

あの紐、念を使えば切れるように細工されているのだろう。
紐が切れた時点で、本当に縁が切れる。
約束は守れよ。ゴン。



***


翌日、カインは1つの決意を胸に、扉をノックした。

通された部屋のソファーに腰かける。
お茶の有無を聞かれたが、すぐに終わるからとやんわりと断りを入れる。

「…ウイングさん。少しの間、2人をお願いしてもよろしいですか?」
「…どこかに行かれるのですか?」

ウイングの問いに1つ頷いて、小さく微笑む。

「2人が念を学べない今が、一番良いと思ったので」

俺の言葉に、ウイングさんは少し考えたあと、確かめるように頷いた。

「分かりました。二人のことは任せてください。
 …ただし、カイン君、無茶はいけませんよ。自分のことを大切にしてください」
「…あはは。大丈夫ですよ。無茶をするつもりはありませんから」
まるで見透かしたようなウイングの言葉に、カインは笑ってしまった。

事実、無茶をするわけではないのだ。
少し調べたいことがある。
それだけ。

「2ヶ月以内には戻ります。その間、2人を頼みます」
「はい…」


そして、カインは闇へと消えた。






ーあとがきー
自由なターンに突入。
さて、どこに向かうのか。



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あきゅろす。
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