長編 


今日は中庭で昼食。
天気が良いし、きっと、今日はいい日になる!


青と灰
Part6


「(いただきます)」
『おー、食え食え』

サタンが茶化してくるが、それは気にせずに木陰で弁当のフタを開ける。

卵焼きを口に入れ、うん、と頷く。

「(我ながら美味く出来た)」

朝に作った弁当を一人と数匹の悪魔達で囲む…

「(って、そんな構図あるかいっ)」
『どうした?!』

本当は木陰で俺が弁当を食べ、悪魔達は弁当を覗き込んだり、木に上ったり、楽しそうにしている。

「(しかし。この間撃ち殺されたのに、よくこれだけ残ってたな)」
『なんた?うっとうしいのか?』
「(いや、俺は嬉しいよ)」

静かに微笑めば、小さな悪魔達がわらわらと俺の周りに寄ってくる。

「(こんなに可愛いのに、なんでみんな嫌うかな)」
『さぁな』

…そういえば、サタンも悪魔だったっけ。

「(サタンは可愛くないけど…)」
『ぁあ?カイン、俺に喧嘩売ってるのか?』
「(え?サタンに可愛さ=ラブリー的な要素、求めていいの?!)」
『んなもん求めるな!!』

なんだよー。
サタンが実は物凄く身長低いとか、女顔とかだったら、大爆笑してやるのに。

てか、実際の姿って悪の大王みたいな?
ツノとか生えてたりするのか?

…もしくは。
サリーちゃんのパパ的な?(古っ)

『どんな想像だ!』
「(あれ?心の声が漏れてた?)」
『…あぁ。“もしくは”の部分からな』
サリーちゃんの下りからか。

「(その前のは知りたい?)」
『変な想像しかしてないだろうから、いらん』

ちっ。
つまらんやつだ。

寄ってきた悪魔の頭を軽く撫でながら、この間のことを思い出す。

「(…そういえば、新入生代表くんは、悪魔見えてたよな。ってことは、あの人以外にも見える人がいるってことか?)」
『まぁ、いるだろうな』

そうなんだ。
ってことは…。

「(この子達、俺の傍にいると、危ないか?)」
『それは…』


「なぁ、お前」


響いた声に、悪魔を撫で続けていた手を止める。
ゆっくり上を見上げれば、太陽をバックに見知った青の瞳が、俺を見下ろしていた。


名前は、確か…奥村、燐。


「紫煙カインだよな?…お前、悪魔見えるのか?」
少し小声で、けれど、しっかりと俺には聞こえた。

「(どう答えよう)」
「なぁ、どうなんだ?」
「(あぁ、でも。答えは一つだ)」

俺は息をヒュッと吸い、久々に口を開く。

「俺に、近づくな」


出た答えは、当たり前の一言。
選択肢なんて、俺には何一つない。

「なっ…」
「(早くどっか行けよ)」
悪魔達が、お前を殺す前に。

俺は無言で俯き、悪魔の頭に乗せたままだった手を動かし始めた。
気持ち良さそうに悪魔はグルルと鳴いた。

「…悪魔と仲良いんだな」
「死にたくないなら、俺から離れろ」
冷たい言葉を吐いても、奥村燐はその場を動かない。

「(サタン…、どうしたら良いかなぁ)」
考えあぐねて助けを求めると、サタンは鼻で笑って口を開く。

『別に良いんじゃねーか?こいつ、悪魔だし』

「(…。え?)」
爆弾発言。
そんな言葉が頭に浮かぶ。

「お前さ、よくスーパーにいただろ?同い年くらいでスーパーにいるの、珍しいからさ」

「(この人、悪魔なのか?)」
『半分な』
「(えぇー?!人間にしか見えないよ?!)」
思わずまじまじと相手の顔、出で立ちを見てしまう。
黒い髪に青い瞳、少し耳が尖って八重歯も多少発達してるが、悪魔とは到底見えない、ただの高校生。

「同じクラスだって分かった時、話し掛けようかと思ったんだけど…そういう雰囲気じゃなかったしさ…」

これが、悪魔??

うわー全然見えない。
まんま人間じゃん。
てか、人間として生活してんじゃん。

「なぁ…?」
小首を傾げる仕種はなんて言うか、

「(ワンコ…!)」

『お前は相変わらず緊張感がねーな…』
「(だってー)」

っと、答えないとな。

「俺は…」

「兄さん!」

は?
いや、俺は兄さんじゃないよ?

「何やってるの、兄さん」

奥村燐にそう呼びかけた青年は、どこか見知った顔で。

「(この人…新入生代表くん)」

ハッと、近場にいる悪魔達を背中に隠す。

ヤバい。
また殺される…。


「雪男?お前こそ何してんの?」

「は?」

ごく当たり前のように答えた悪魔の彼に、思わず口が出てしまった。

二人の視線がこちらを向く。

黙って逃げればよかった…!

俺の失態をぎゃははと笑うサタンの声をバックに、俺はゆっくり弁当のフタを閉めた。

「君は…」
新入生代表くんが驚いたように声を上げた瞬間、さっと立ち上がる。

「じゃ、失礼」

ここは素早く逃走だ!!

思いっきり足に力をこめて、ダッシュして逃げ出した。

悪魔の何匹かは俺の服にしがみつき、残りは俺の後を必死で追ってきている。

肩越しに見た風景はそんな感じで、あの兄弟?は呆然と見送っていた。

「(サタン!後で問い詰めるから待ってろ!!)」
『くくっ…あー?何をだよ』
笑いを引きずりながら言うサタンに、ムカっとした。

ので。

「(あの二人!わけ分かんないよ!馬鹿!)」
とりあえず、当てつけた。

『俺様に馬鹿だと?!言ったお前のが馬鹿だ!』
「(馬鹿に馬鹿って言った方がもっと馬鹿なんですー!)」
『なんだと?!てか、お前が馬鹿って肯定してんじゃねーか!』
「(サタンに比べりゃ、まったく正常だよ!)」
『あぁ?!』

幼稚な口喧嘩をしながら、中庭から見事に逃走した俺を褒めてほしい。


「(今日は厄日だ!)」





―あとがき―
燐と接触vv
そしてサタン様、軽く爆弾落としました。
こらこら(-"-;)

サタン様が幼稚になっていく…(泣)



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