長編 


深夜に目が覚めた。
んで、寝れなくなった。
とりあえず、コンビニに行こうと思う。


青と灰
Part5


「(何か飲み物でも買って帰るかなぁ)」
『こんな時間にやってるのか?』

深夜1時。

「…(さぁ?)」
それは確認しなかったなぁ。
まぁ、やってなかったら、その時はその時だよな。

「(サタンは物食べられないもんな)」
『実体がねーからな』
そうだよなぁ。
「(食べられるなら、ゴリゴリくん奢ってあげたのにー)」
『ゴリゴリくん?なんだそりゃ』

…?!

「(ゴリゴリくん、知らないのか?!)」
『だから、なんだよ?』
な、なんて事だ!
あれを知らないなんて!

「(チョー激ウマ!子供から大人まで、老若男女みんな大好き国民的アイスの事だよ!!)」

『…そ、そうか』

「(あれを知らないで生きてるなんて…)」
サタンの引き攣った顔が思い浮かぶが、もしもサタンが目の前にいたら、ゲンコツかましたと思う。

『ハーゲン〇ッツ、なら知ってるが…』
「(それは世界的アイスの話!)」


と、そんなやりとりをしながら、コンビニのドアをくぐった。

やってて良かった。

「(…ゴリゴリくん買って帰ろう)」
『それがゴリゴリくんか?』
「(そう。値段もリーズナブルな、貧乏学生にはありがたい代物だよ)」

本当、良いよね!ゴリゴリくん!

「(あとはお茶。以上)」
『あっさりしてんなぁ』
会計を済ませながら、サタンとの会話を続ける。

「(夜にあんまりウロウロしてると寄ってきちゃうだろう?)」

悪魔達が。

「(俺は別に寄ってきても良いけど、この時間だと周りに被害出そうだし)」

それで警察沙汰になったら笑えないからな。

コンビニの外に出て、ゴリゴリくんの袋を開ける。
ゴリゴリくんは口に加えて、袋はゴミ箱に捨てた。
左手にお茶の入ったポリ袋を持って、ゆっくりと歩きだす。

『心配なら出歩くなよ』

「(俺の嗜好品のためなら、みんな命を張れ!!)」

『言ってること矛盾してるぞ?!』

「(これはグレーゾーンだから良いの!)」

俺のやりたいこと、と、悪魔達の行動。
どっちもとれるグレーゾーンがここなんだって!

『ほー。とか言ってる間に増えてるぞ』

増え、てる?

ゆっくり後ろを振り向けば、どこから集まったのか、大量の悪魔がうごめいていた。

「(…ちょっと、キモい…)」

その悪魔達から逃げるように、早足にその場を立ち去る。

『あーあ。ほら、言わんこっちゃない』

うーむ。
思った以上に今日の悪魔達はしつこいな。

着かず離れず、数を増やしながら俺の後ろを着いてくる悪魔達に、苦笑いを浮かべた。

「(サタン…)」
『なんだ?降参か?』
にやにやと笑うサタンに一つ頷く。

「(ゴリゴリくん、美味しいよ)」

『…。お前、緊張感ねーな…』

いや、だって。
ゴリゴリくん、マジで美味だから!

『でもよー』
「(んー?)」
『相当、増えたぜ?』
「(…あー。人とすれ違ったらヤバいかもなぁ)」

凄いなぁ。この量。
軽く100匹くらいは居そう。

「(ま。どうにかなるだろー)」
『…お前、まじで人間やめろ。…で、悪魔落ちしろ』
「(ははは、ムリ!)」

どうやってなるのか知らないし!!
そもそも、悪魔落ちって何…?




「君!伏せて!」

「は?」

前方から聞こえた若い男の声に、ハッと前を向いた。

前方には二つの銃を構えた、黒いロングコートの青年。
眼鏡をかけており、ホクロが印象的だ。

って。

え?


…銃??



「っ!!」
瞬時にしゃがみ込んで、弾が当たらない事を祈る。

数分の間、発砲音が頭上で鳴り響いていた。


「…もう、大丈夫ですよ」
「っ!」

いつの間にか止んだ発砲音の代わりに、ポンと肩を叩かれた。

顔を上げると、先ほどの眼鏡の青年が俺を見下ろしていた。

「は…?何が…?」
ビビってしゃがんだけど、何が大丈夫なんだ?

「もう、悪魔達はいませんから」

バッと振り返る。
そこには、もう何もいなかった。

「え?」
「体は大丈夫ですか?あれだけの数に追いかけられていたのですから、どこか魔障を受けたんじゃないですか?」
「…いや。特には…」

やべぇ。
人と話すのが久々過ぎて、訳分かんねぇ。
てか、普通に、話についてけてない…!

「無傷…幸運でしたね」
「は、はぁ…」

あれ?
こいつ、どっかで…。

「僕の顔に何か?」

あ。

「新入生、代表?」
「…ええ。まぁ」

わぁお。

「秀才でも夜歩きするんだ…」
「…仕事、ですから」

「え?夜歩きが?」

「いえ。僕は祓魔師です」

えくそしすと…?
あ。あれか…。

「…あー。あ!」

俺のゴリゴリくん…しゃがんだ時、地面落とした…!!

「俺の…」

うー…今日は厄日だ。
泣きそう。

「…えーと」
静々と声を上げた新入生代表君は、苦笑いのまま固まっている。

俺が行動起こさなきゃダメか。

「…もう、大丈夫なんで」

テンションの低い声で言い放ち、お茶の入った袋を掴むと、俺は彼の横を通り過ぎて早々に帰路についた。

追いかけてくるかもと思ったが、心配は杞憂に終わったらしい。


それにしても。

「(ビビった…)」

人生の中で、銃口を向けられることなんて無いと思ってたよ。


「(…あれ?そういや、あのコート…)」

父さんと母さんが生きてた頃、二人が着てたやつと似てる…。


「(あー。それにしてもゴリゴリくんがー…)」

『結局そこに戻るのか?!』

「(あたり前だろー!明日また買う。絶対買う!)」

『…』





―あとがき―
ゴリゴリくん談議と雪男登場。

サタンがツッコミ役過ぎる(笑)





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あきゅろす。
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