長編 
7-二次試験


まだまだこれからだろ。
楽しませてくれよ。


Euphorbia milii
―二次試験―



「いよいよ、だな」
「うん」
キルアの言葉にゴンは頷いた。

鬼が出るか蛇が出るか。
ふふ。さぁ、来い。


ぎぃぃぃぃぃぃ…


そこには、獣以上の巨体を誇る男と、露出度の高い服を着た美人さんが座っていた。

「どう?ブハラ。お腹は空いた?」
「聞いての通り、ペコペコだよー」

そんな会話をした後、美人さんは受験者達を一度見渡し、

「というわけで。二次試験は料理よ!」

と叫んだ。


料理…?
刃物を扱うのは得意だけど…基本料理なんてしないんだけど…俺…。
前に一度作ったら、シルバに二度と作るなって言われたし。

あっは★…どうしたものかな?


試験官である巨体の男はブハラ。美人さんはメンチというらしい。
二次試験はこの二人にそれぞれ料理を食べさせ、『美味しい』と言わせること。

そして、前半戦の課題は…

「オレのメニューは豚の丸焼き!!オレの大好物!」

豚の丸焼き…つまり焼くだけ?
それくらいなら、多分行ける!!

「ブタの種類は自由!それじゃ、二次試験スタート!!」
それを合図に、受験者は一斉に走り出した。
カインもそれに混じり走り出す。

とりあえず、豚を探さないと。
確かここにいるのは一種類だけ。
世界一狂暴な豚、グレイトスタンプ。

「お、いたいた」
カインの目の前には一頭の豚。
鼻の先は大きく盾の様になっている。
「えーと、確か、こいつの弱点は…」
豚はカインに気づくと怒り狂った様に大きく吠え、突進してきた。

「アブネーな」

カインは軽々と飛び越える事でそれを回避した。

こいつの弱点…額だったな。
んじゃ、お構いなく。

「うりゃ」

カインはそんな緩い掛け声の下、豚の額に回し蹴りを決めた。
メギャ…と頭蓋骨が砕けた音が付近に響き渡り、すぐに豚は崩れ落ちた。

「ふふ。後は焼くだけだね。

…一緒に薪集めでもするかい?キルア」

振り向きもせずそう問い掛けると、木の影からキルアが顔を出した。

「気づいてたんだ」
「跳んだ時に銀髪が見えたからな」
「ちぇ」

ふふ。気配の消しかたは上手いけど、まだまだって感じだな。視線はバリバリ感じたし。

薪集めをちゃちゃっと済ませ、豚を並べ、二人で火をくべた。
「カインって、何してたの?目茶苦茶強ぇじゃん」
「んー?俺は暗殺者だよ」
「は?」
サラっと言われた言葉に、キルアは目を見開いた。

「俺の家、暗殺を生業にしてるんだ」

まぁ…俺だけは、30年間何も活動してないって事になるけど。

「暗殺一家…?」
「怖いか?」

暗殺者、人殺し、化け物…今まで、沢山の人に罵られてきた。
怖がられるのは、慣れている。

「いや、俺は…俺も、暗殺者だから」
「え?」

何ですと?

「俺ん家も暗殺家業なんだよ」
「…ワオ!てことは、お揃いだねっ」

ゾルディッグ以外で、暗殺家業なんてやってる家あったんだ!
なんだか新鮮だ〜♪

「お揃いって、良いのかよ…それ」
「えー、嬉しいよ?
俺、家を出てこういうことするの初めてでさ。お揃いって、双子の弟以外とやったことないんだよね!」

シルバとはいっぱいお揃いがあるけど、他の人間は皆無だ。
友達も、いないし。
普通の子と話したりするのも初めて。

「そっか…」
「キルアは?」
「ん?」
「嬉しい?俺とお揃い」
「…んなわけねーだろっ!!」

立ち上がったキルアはそっぽを向いたが、耳まで赤いのは後ろ姿でも分かった。

「…っ、お前可愛いなぁ!」
「だぁー!!抱き着くなっ」

マジ可愛いっ。
シルバはこんな反応しなかったし。

「ほら、豚焼けるぞ!」
「おう!」

中が焼けてる事を確認したカイン達は火を消し、豚を軽々と持ち上げた。

「キルア、競争な」
「え?」
「よいドン!」
「あーっ、ずりぃ!」

後ろでキルアの怒声が聞こえるが、ただ笑うだけで、カインは速度を落とさず走り続けた。




「わぁ、美味しい!うん、これも!」

あれは人間か?
体の体積よりも多く食べてるなんて…

「あ〜食った食った。もーおなかいっぱい!」

ゴォォオン!

ブハラのその一言により、メンチが終了のドラを鳴らした。
「終ー了ォーー!!」

ブハラが食べた豚の丸焼きは71頭。

「ハンターって、凄い人がいっぱいなんだね」
「食費が大変そうだ…」

「そこじゃねぇだろ!」

ゴンとカインの視点のズレた感想に、キルアが冷静にツッコミを入れた。



第二次試験 前半 71名通過。




Dear キルア
他人の中で、初めてお揃いってのを経験したよ。
すごく嬉しいものだね。

シルバとは、同じであることが当たり前で、一緒に揃える事が普通で…。
でも、キルアとはそんな関係じゃないからな。

キルアはシルバに似てるけど、全然違う。
二人が出会ったら、どうなるんだろうな。







―あとがき―
キルアがシルバの息子だと気づくのは、いつの事か。

カインは結構抜けてます。





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あきゅろす。
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